2年ぶりの開催にこぎつけたF1アゼルバイジャンGP。舞台となるバクー市街地サーキットは、市街地コースながら2kmに及ぶストレートを有する。回生エネルギーのデプロイメントでメルセデス製パワーユニットの後塵を拝してきたホンダにとっては、長く苦手としてきたコースだ。新世代パワーユニットでその劣勢を跳ね返し、モナコGP優勝の勢いを持続できるのか、ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターに今週末の抱負を聞いた。
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──2年ぶりにアゼルバイジャンGPが開催されます。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):バクー市街地サーキットはモナコと同じ市街地コースですが、直角コーナーが多く、直線も長く、明らかな追い抜きポイントがあるなど、かなり特性の違うコースです。旧市街に入ると、極端にコース幅が狭くなったりします。
──モナコGP優勝の勢いは、今週末も持続できそうですか。
田辺TD:モナコGPの優勝で、両選手権でついに首位に立てました。2015年からF1に再挑戦してきて、いろいろなことを学んできたなかで、これは大きな成果です。ただ、メルセデスとのポイント差はないと同じです。まだ今季は5戦しか終わっていない。1戦1戦を大事に戦って、いい形で今季を締めくくっていければと思っています。
──今週末のバクー市街地コースは高速区間と曲がりくねった低速区間が特徴で、その両立が重要です。実際にそれが可能なのか、あるいはある程度どちらかを犠牲にしないといけないのでしょうか?
田辺TD:簡単に言えば、ベストバランスを取るということですね。いろいろな局面でのバランス、たとえば予選とレースのバランス、そのときの車体の空力バランス、あるいはパワーユニットでいえばエネルギーマネジメントです。どこでバランスを取るか、当然片方を取れば、他方は立たなくなる。そのベストを探して臨むということです。
──バクー市街地サーキットは直線が2km近くあり、回生エネルギーが足りなくなるサーキットのひとつです。MGU-Hの性能が昨年までの課題だったわけですが、今季の新世代パワーユニットはその部分が改善されています。その進化具合が、このコースで改めて確認できるということでしょうか。
田辺TD:はい。昨年からの進化度合いが表れやすいコースですので、データを比較してみようと思います。
──ここまでの5戦で、特にエネルギー回生性能の部分では、今年のパワーユニットはすでにメルセデスに追いついているという手応えを感じていますか? あるいはエネルギーマネジメントの厳しいこのバクー市街地サーキットで、改めて真価が問われると考えているのでしょうか?
田辺TD:メルセデスがどんなエネルギーマネジメントをしているのか、はっきりとはわかりません。ですので、我々としては想定した効果が得られているかどうかを各グランプリで確認しながらやっています。目的達成方向に向かっているか、想定した形で向上が得られているか。そういう形の作業を今週末も続けていきます。
──今回のバクー市街地コース、次戦以降のポールリカール(フランスGP)、スパ・フランコルシャン(ベルギーGP)、モンツァ(イタリアGP)などは、これまでメルセデス製パワーユニットが優位で、逆にホンダが苦手とするサーキットでした。その意味で今週末のアゼルバイジャンGPは、その苦手意識が払拭されるかどうか、タイトル獲得に向けて重要な週末と言えるのではないでしょうか?
田辺TD:確かに電気エネルギー的な観点では、比較的苦手にしているコースでした。ですので実際に走ってどうなのか、我々も期待しているところです。ただ自分たちが進化しても、あくまで相対的なものです。とはいえ特徴的なコースなので、自分たちの現時点での立ち位置、ライバルとの競争力が見えると思います。
──オーストリア政府がイギリスからの渡航を禁止していると聞いています。今月末のシュタイアーマルクGPに向けての物資やスタッフの移動で問題は出ていないのでしょうか?
田辺TD:正規のレースメンバーはフランスGP終了後、そこから直接入るので問題ありません。一部、イギリスから(オーストリアに)入る予定だったメンバーも同じやり方にしました。ですのでそこはクリアになっています。