アルファタウリ・ホンダの角田裕毅が、活動の拠点をイギリスのミルトンキーンズからイタリアのファエンツァヘと移した。それは、チーム代表のフランツ・トストの下で、プロとしての自覚をさらに高めるためだという。ホンダF1の山本雅史マネージングディレクターは角田について、前戦モナコGPでは様々なことを学び、今後は柔軟に戦っていけるようになると考えていると語った。
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──角田裕毅選手がイギリスのミルトンキーンズからイタリアのファエンツァへ引越しました。その経緯を教えてください。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):私はどのレースでも(ヘルムート・)マルコさんとミーティングをしていて、そんななか(モナコGPの)木曜日にマルコさんから「裕毅はミルトンキーンズで普段、何をやっているんだっけ?」という話になり、私が「シミュレーター中心でミルトンキーンズに住ませているんですけど」と。F1にステップアップする際、アルファタウリのファクトリーがあるファエンツァに住むか、レッドブルのファクトリーがあるミルトンキーンズに住んでシミュレーターをするかについてマルコさんとも話をしたうえで、ミルトンキーンズになったわけです。
しかし、シーズンが始まるといろいろなことが起き、マルコさんから「ファクトリーでの仕事も含め、いまの彼には学ばなければいけないことがもう少しあるように思うがどうだろう?」という話になり、「じゃあ、フランツ(・トスト代表)から、いろいろとプロとしての基礎の教育を受けてみたらどうだろうか?」ということになりました。もちろん、すでに彼はプロとしての自覚を持っていますが、さらにそれを高くする意味でイタリアに引っ越したほうがいいという結論に達したわけです。それで土曜日に私からフランツに言って、裕毅にも話しました。
もともと、裕毅はFIA-F3の時に所属していたイェンツァーがスイスのチームだったので、スイスに住んでいたし、その後イギリスに引っ越したのはFIA-F2で所属することになったカーリンがイギリスのチームだったから。そういう意味では今回のイタリアへの引越しは特別なことではありません。
──イギリスでの住居はF2から同じだったのですか?
山本MD:同じです。F2の時から引っ越してはいません。それで、実はこの間まで(同じミルトンキーンズ内で)引っ越すために新しい家を探していました。契約する直前まで話が進みましたが、今回新たにファエンツァに行くことになって、予定が変更となりました。
ただ、私は非常にハッピーに思ってるし、元々F3時代からファクトリーの近くにベースを置いていたので、そういった意味ではよかったかなと。彼はモナコでいろいろ学びました。F1の難しさも含めて、木曜日のセッションからどう戦っていくか、どうペースをつかんでいくかなど、たくさん学んだと思っています。もちろんバーレーンではうまくいって、イモラでも途中まではよかったけど、モナコでは(ピエール・)ガスリーのすごさをあらためて認識したと思う。1ラップの走らせ方だけでなく、エンジニアとのコミュニケーションも含めて、本当にいろいろ勉強になったと思います。そう言った意味で、ここからが彼の速さが光っていく、彼が柔軟に戦っていけるグランプリになると思っています。
──モナコでいろいろ学び、今回が第2の開幕という感じですね?
山本MD:もちろん開幕はバーレーンだったけど、いろんな波があって、そのなかでたくさんのことを学びました。F1は10チームすべてが違うマシン。そのF1の難しさ、学ぶことの大切さは、F3やF2とは違う。おっしゃるようにここからが第2の開幕と言ってもいい。気持ちも新たに頑張ってほしいし、これからの裕毅に期待したいです。
■「最終戦でトップにいないと意味がないので、今まで通りメリハリをつけて戦い続けたい」
──イタリアへ引っ越したのではなく、まだホテルだと聞いています。引っ越しはいつですか?
山本MD:いまホテル住まいで、時間があれば物件を物色中です。
──ということは、この後ファエンツァへ帰るのですか?
山本MD:それは僕の想像ですけど、ファエンツァからフランツと同じように行動すると思います。イギリスGPも、オーストリアGPが終わったら、すぐにイギリスに行くとかではなく、一旦イタリアに帰ると思います」
──では、トストさんと一緒の時間が増えてるわけですね?
山本MD:そうです。ファエンツァがベース。イギリスのアパートにまだ荷物が置いてあるわけですが、それはイギリスGP前後に整理をすると言っていました。
──さて今回のアゼルバイジャンGPは、ホンダとして1991年以来、チャンピオンシップリーダーとして初めて臨むグランプリとなります。いかがですか? 緊張していますか。
山本MD:そこは申し訳ないけど、みなさんが思っているほど(気持ちの面で)変わりはありません。まだ23分の5しか終わっていないので、いまリーダーに立っているからといって……。先ほどマックス(・フェルスタッペン)もFIAの記者会見で言っていましたけど、最終戦でトップにいないと意味がないので、それまでは1戦1戦いままで通りメリハリをつけて戦い続けたいと思っています。まだまだ通過点なので、そこは意識していません。