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世界第3位の経済大国・日本 2050年にはどうなってる?

2021年06月04日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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アメリカと中国が二大大国として主導権と握ろうと、さまざまな分野でしのぎを削っている世界経済。まるで1990年代の日本とアメリカを見ているかのようだ。世界第2位の地位を中国に譲りはや10年以上。今後、世界経済における日本の存在感はどうなっていくのだろうか? 経済アナリスト、森永康平氏が見通しを語る。

日本は世界第3位の経済大国?


ニュースなどで、「日本は世界第3位の経済大国」という表現を聞いたことはないでしょうか? また、こう聞いてみなさんはどのように感じますか? 

私は未だにこの表現には慣れません。私が学生だったころは「日本は世界で2番目の経済大国なんだ」と教わり、「小さな島国なのに、米国に次いで世界2位なんてスゴいなぁ」と驚くとともに、少し誇らしげな気持ちになった記憶があります。社会人になった2007年の時点でも日本は世界第2位でしたから、もう刷り込まれてしまったのでしょう。いまでも第2位というイメージが消えないのです。

私が金融機関で働いていた時の上司たちは、私以上に「スゴい日本」の印象を未だに抱いているようです。1979年には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という戦後の日本経済の高度成長を分析する書籍が発刊され大ヒットとなり、80年代後半のバブル期には山手線内側の土地の価格だけで米国全土が買えるとまでいわれていたわけですから、感覚的には日本が世界第1位とすら思っていたかもしれません。それではいつ第3位に転落したのでしょうか?

それは2010年です。追い抜かれてから、もう10年以上が経っているのですが、どの国に追い抜かれたのかはすぐにわかりますよね? そう、中国です。中国は日本の10倍以上の人口を抱えるわけですから、その国が高い経済成長を続ければ日本を追い抜くのは当然です。

日本は何が3位なの?

では何をもって1位だの、2位だの、3位だのと言っているのでしょうか?人口?有名企業の時価総額?軍事力?答えは国内総生産(GDP)の額で、経済大国のランキングが作成されています。

では、GDPって何?と聞かれてみなさんはさっとこたえられるでしょうか?簡単に説明をしましょう。

GDPとは一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。このGDPは日本語で〝国内GDP総生産といいます。ですから、日本企業が国外で生産した付加価値は含まれません。

ここでさらに「付加価値って何?」という新たな疑問が出てきてしまった人もいるかもしれませんね。そんな人はこう考えてみるとわかりやすいかもしれません。私たちがお店でお金を払って商品を買う場合、実はその商品が店頭に並ぶまでにはいくつもの段階を経ています。

まず加工業者が原材料メーカーから原材料を買いつけて加工し、それを小売業者に売ります。そして、小売業者が店頭に並べて、私たち消費者がお金を払って買います。この各段階において、それぞれの業者が原価に付加価値を乗せて販売するわけです。つまり、付加価値は各業者の「利益」となるわけです。この付加価値を合計したものがGDPになると考えてください。

一般的にはこのGDPが増えることを経済成長としますので、たとえばニュースで「20XX年、日本の(名目)GDPは前年比+2.0%増となりました」と書いてあれば、それは日本の経済が前年から2%成長したということになります。

ちなみにGDPには〝名目GDPと〝実質GDPの2種類があり、名目は額面の金額そのものの数字で、実質は物価の変動の影響を取り除いたものとなります。

2050年も日本は経済大国のままですか?

さて、ここで気になるのは日本がいつまで経済大国でいられるのか、ということです。

ここでクイズといきましょう。

問題)2050年には日本のGDPは世界でどの位置にいるのでしょうか?
1)上位3か国のどこかにいる
2)上位3か国には入れないが、トップ10の中に入る
3)トップ10から外れてしまう

ちなみに、米国・中国・日本という世界トップ3のそれぞれが世界に占めるGDPのシェアについて、バブルが始まる前の1980年から2020年までの期間で推移を見てみると、日本が1994年、1995年あたりからジワジワとシェアを落としていっているのに対して、中国が2000年に入ってから急激に追い上げていることがわかります。

では、クイズの答えはどうでしょうか? 企業や経済について分析や助言などを行う、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるPwCが発表したレポートによれば、2050年のランキングは次の表のようになっています。

このランキングでは日本は第7位まで転落しています。つまり、正解は(2)ということになります。人によってはこれを転落とは思わず、まだトップ10内にいられるのか、という捉え方をするかもしれません。

ただ、この上位の顔ぶれを見てみなさんはどう思いますか? 日本以外でトップ10に入っている国として中国とインド、米国、ドイツは想像できたかもしれませんが、インドネシア、メキシコ、ナイジェリアあたりは意外に感じるのではないでしょうか?

近年の中国ではありませんが、私たちが考えている以上に新興国の成長速度は速く、今後世界の経済勢力図はめまぐるしく変わっていくことでしょう。

※本記事は『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(森永康平/あさ出版)の内容を一部再編集したものです。

■プロフィール 森永康平(もりながこうへい)
金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。
その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEO および取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOO やCFO も兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』『いちばんカンタン つみたて投資の教科書』(ともにあさ出版)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(新書/ KADOKAWA)、『MMT が日本を救う』(新書/宝島社)などがある。

Twitter:@ KoheiMorinaga