2021年06月03日 10:21 弁護士ドットコム
JR東日本など関東エリアの鉄道事業者と、警察による「痴漢撲滅キャンペーン」が6月1日からスタートした。
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キャンペーンで使われるポスターが、痴漢の被害者に注意をうながすだけでなく、周囲の人たちにも協力を呼びかける内容だとして、「画期的」と好評を博している。
JR東日本は「痴漢を撲滅するためには周囲のお客さまのご協力も不可欠」とする。痴漢撲滅ポスターの歴史をさかのぼると、意外なことがわかった。
「痴漢撲滅キャンペーン」は、関東エリアの鉄道事業者(21社局)、警察庁、1都3県の警察が実施している。
駅構内の啓発ポスター掲示や、車内などで放送による呼びかけをするほか、警察と鉄道事業者によるイベントが実施される。6月1日からすでに始まっており、15日まで。
JR東日本の公式ツイッターが1日、キャンペーンをポスターとともに紹介するツイートをしたところ、「やっとまともな痴漢ポスターでたー!!」「画期的」など喜ぶ声が相次いだ。
ポスターは「知らない人だけど、知らないふりはしない」という縦書きのメッセージを中心に据えたものだ。「どうしました?」「大丈夫ですか?」「その一言で、その勇気で、救われる方がいます。」と周囲の助けを呼びかける内容となっている。
ネット上の賛同は、どのような理由によるものか。ツイートの一部を紹介する。
〈被害者側に気をつけるよう伝えるのではなく、周囲の人間へ犯罪防止の協力をここまで明確に呼びかけるポスターはなかった。〉
〈初めてじゃない? 女性に向けた「痴漢に注意しましょう」じゃないポスター!! やっとだよ!!見直したよJR東日本!!〉
〈令和になってからやっと改善された〉
従来のポスターは、痴漢への注意を被害者に呼びかける内容ばかりだった。しかし、今回のポスターは、痴漢への注意を周囲の人にも呼びかける内容であるーー。そうした理由によって、歓迎されているようだ。
であれば、「画期的」なポスターが生まれた背景を知りたい。事業者のひとつであるJR東日本本社に取材した。
ところが、同社広報部は「今回の2021年のポスターのデザインは2019年と同じ」とする。
なんと、2年前の痴漢撲滅キャンペーンでも、同じポスターが使われていたのだ。同社のリリース(2019)でも確認できる。
残念ながら、当時は目立たなかったのかもしれない。
「周囲に痴漢への注意や協力を呼びかけるポスター」は珍しくないという。同社は「2013年度の痴漢撲滅キャンペーンから同内容の呼びかけを行っており、珍しいものであるという認識はありません」と答える。
2013年のポスターでは「痴漢です!!」と叫ぶ女性を中心に、駅員や周囲の人々が「どうしました!!」「犯罪だ!」などとざわめく様子が描かれているほか、「みんなの勇気と声で痴漢撲滅」のメッセージが記載されている。
「みんなの勇気~」というメッセージは2019年・2021年のポスターでも使われている。しかし、「痴漢撲滅には、周囲の協力が不可欠です。」の文言は2013年版にはなかったものだ。ネット上で賛意を表明した人たちは、この言葉に共鳴したのかもしれない。
「2013年頃以降、ポスターデザインを『周囲のお客さまが異常に気づき声をかけることが、被害に遭われたお客さまを救うきっかけになる』というストーリーを表現し、周囲の方へ痴漢撲滅に向けたご協力の呼びかけをお願いしてきました」
被害者に注意を呼びかけるだけでは、根本的な問題解決にならないとの考えもあるのだろうか。
「痴漢被害に遭われたお客さまが自らが声を出すことは難しく、痴漢を撲滅するためには周囲のお客さまのご協力も不可欠であることから、このようなデザインとすることとしました。それに加え、被害に遭われた方にもお困りごとがあれば社員や警備員にご申告いただくように呼び掛けています」
注目されたポスターは、実は昔からあるものだった。しかしながら、駅の利用者から、痴漢問題解決の本質として何が求められているのかハッキリしたのではないだろうか。