2021年06月02日 10:41 リアルサウンド
デスマッチのカリスマ・葛西純のドキュメンタリー映画『狂猿(きょうえん)』が、5月28日に公開された。リアルサウンド ブックでは今回、公開初日の舞台挨拶イベントに参加。主役の葛西純、監督の川口潤、そして葛西純が所属するプロレスリングFREEDOMSの代表であり、自身もデスマッチファイターである佐々木貴へのインタビュー取材を行った。2ページ目には舞台挨拶のレポートも掲載している。(編集部)
■葛西純「映画がどう成長して、大きくなっていくか楽しみ」
――ようやく初日を迎えました。心境はいかがでしょうか?
葛西純(以下、葛西):1年半の制作期間を経て6回くらい見てるので、正直、「ようやく終わった」という気持ちもあったんですよ。でもこうして、コロナの影響がある中、お客さんが入っているのを見ると、ようやく始まったんだなと再確認しました。この映画がどう成長して、大きくなっていくか楽しみです。
佐々木貴(以下、佐々木):僕は制作側で携わった人間なので、やっとたどり着けたという感覚が大きいですね。今日、劇場に来た時に昼の回を見終わったお客さんの顔と、夕方の回を待ってるお客さんの顔を両方見れたんですよ。終わった人は満足した顔で、これからの人は期待でザワザワしてて、それを見たらもう喜びの感情しかないです。
川口潤(以下、川口):どんな映画でも賛否両論あるので、コアな人からしたら「物足りない!」「続編作って!」とか言われたりするんですけど(笑)、僕はそれがすごく楽しみなんですよ。そういうところから、皆さんそれぞれ自分の人生に活かしてくれると思っているので。
――映画の内容もそうですが、コロナウイルスの影響で本日もひとつずつ席を空けての上映です。
葛西:これは本当に不本意ですが、この映画の主演は葛西純なんですよ。でもね、助演は?と聞かれたら、それはコロナになってしまうんですよ。それだけでもムカついてるのに、ここに来て「映画は公開できるのか?」ということにもなって……。映画のエンディング含め考えていたものとは変りましたけど、無理やりポジティブに考えて、こういうことが無ければ撮れなかった作品と考えるようにしてますね。もう、そんな風に思うしかないです。
佐々木:実際に興行も無くなって、アメリカ遠征も無くなって、そこから小規模でしたが興行再開(プロレスの興行再開はプロレスリングFREEDOMSが最初だった)という流れを、葛西純の密着とは別に追ってもらっていました。もちろん、コロナがなければどんなエンディングだったのか?と思うこともありますが、これからコロナの影響がおさまった時に、10年後、20年後、30年後に見返した時に「こんなことあったな」と振り返ることができるという点においては、何かを残せたんじゃないかなと思っています。
――確かに興行の現場がどうだったか?という記録はあまりないかもしれません。
川口:確かにそうですよね。僕は全員が共有する壁みたいなものだと考えていて、もしかしたら何もなかったら葛西さんが「スーパーマン」であることで映画は終わっていたかもしれない。こんな言い方は本当に嫌ですけど、ドキュメンタリー映画として、ここまでのものを撮れたという面もありますよね。
――佐々木代表から見た、川口監督の魅力はなんでしょうか?
佐々木:レスラーって、見られてると「レスラーの自分」になるんですよ。試合じゃなくても、周りから見られているとONになるんですけど、川口監督のキャラクター・人間性の効果で自然体でいれちゃう。川口監督だからこそ、葛西純が弱音を吐く部分を撮れたり、素の部分が出たんじゃないんですかね。違う人だと本当に「スーパーマン」で終わってたかもしれない(笑)。正直、同じ団体にいても、ほとんど見せたことのない姿もありました。これを引き出した監督はすごいです!
川口:いやいや……。葛西さんは最初からオープンだったので、ずっとそのまま接してくれたという印象です。
――川口監督の中で、プロレス観は変化しましたか?
川口:プロレスに対する印象は変わらないのですが、デスマッチというものを撮影のときに初めて見て。これは究極のプロレスだと思いました。自分は生まれ変わっても絶対にやらないですが(笑)。
――葛西さんから映画をまだ見てない方に伝えたいことはございますか?
葛西:エンドロールが始まっても席を立たないでください!
佐々木:あと、世のお父さんには全員見て欲しい!
■舞台挨拶レポート
葛西純のドキュメンタリー映画『狂猿』の公開記念舞台挨拶が5月28日、新宿シネマートで行われた。プロレスリングFREEDOMS代表・佐々木貴が司会を担当し、主演の葛西純と監督の川口潤が撮影のエピソードなどを語った。
当初はドキュメンタリー映画の出演に難色を示していたという葛西。「昔にもそういう話があってポシャったっていうのと、あと家の中にカメラが入って来て“はい、夫婦ゲンカ初めてください”とか“奥さん家出してください”っていうのはできないから」という理由から断っていたそう。それでも一回会ってくれと佐々木に説得された結果、プロデューサーの佐藤優子氏の「情熱に押されてOKしちゃったんですよ」と、当時を振り返った。
川口は、初めて葛西と顔を合わせた時の印象を「自分が小学生のときに見ていたレスラーとはまた違った、等身大の方だなと思いました」と語り、一方の葛西は「井筒監督みたいの来たらどうしうよう……って思ってたんですよ(笑)。多分ケンカしちゃうなって思っていたら、本当に腰の低い人で。この人だったら、いい映画撮ってもらえるなって思いました。実際にそうなった。存在感を消して背後霊のようについてくるので(笑)、カッコつける余裕もなかったかな」と振り返る。葛西の意見に佐々木も賛同し、「隠し撮りうまいよね(笑)」と、ドキュメンタリーを主戦場にしている川口の才能を称えた。
写真撮影の後は、葛西と佐々木がサプライズで、本作のプロデューサーである佐藤氏を胴上げ。和気藹々とした雰囲気の中、舞台挨拶は幕を閉じた。
映画『狂猿』は順次、全国でも公開される。