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【漫画】漫画編集者が脱サラして農業を開始、人生はどう変わった? 「半農半X」の暮らし方

2021年06月02日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 元漫画編集者のクマガエさん(@kumagaeagamuk)が実体験をベースに描く『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』。ヒット作を生み出せず、人生に悩む漫画編集者が、脱サラして田舎に移住し、農業と向き合う様子を描いた作品だ。


 千葉県匝瑳市への移住を経て、クマガエさんは現在、同県某所の「都会と田舎のはざま」に移住。 フリー編集者&漫画原作者として働きながらも農ライフを満喫している。今回、「リアルサウンド ブック」では漫画原作を手がけるようになったきっかけ、実際の農ライフについて、創作において心がけていることなど、話を聞いた。


『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』を読む
画像クリックで1話丸々試し読み(C)クマガエ/宮澤ひしを 講談社


ーー移住して農業を始めるようになったきっかけを教えてください。


クマガエ:講談社の漫画編集部で7年間働いていたんですが、担当していた「月刊少年ライバル」という雑誌が休刊になってしまい心がポッキリ折れてしまったんです。単純に仕事が忙しいということもありましたが、ヒット作が出せないことで「この仕事に向いてないんじゃないか」と思う気持ちが強くなってしまって。そのタイミングで退職を考えるようになりました。


 そんなとき偶然、『SOSA Project』というNPO法人を主宰している高坂勝さんという人と出会い地方移住と農業に興味を持ちました。高坂さんは、会社を辞めて地方に移住して、自分で食べる分の米や野菜を作りながら、自分のやりたいことを仕事にして暮らす「半農半X」という生き方を提唱している人なんですが、これなら会社辞めても生きていけると思ったんですね。


ーー実際にコロナ禍の影響もあって、地方に移住する人が増えたとも聞きます。クマガエさんが移住されたのはいつですか?


クマガエ:5年前の2016年です。当初から米を作っていました。少しずつ借りる田んぼを広げていき、去年くらいからは1年分の米を収穫できるようになりました。自分で主食の米を作れて飢え死にしないという安心感。生きる自信がつきましたね。


ーー最初は千葉県の匝瑳市に移住されたんですよね。移住に対する不安はありませんでしたか?


クマガエ:都内と比べて家賃も安いですし、いざとなれば編集者としてフリーランスで働けると思っていたのでそこまで不安はありませんでした。ただ実際に移住して古民家暮らしを始めてみたんですが、これが思ったよりも大変で……。家の周りに娯楽施設はもちろんなく、気分転換に行けるようなカフェもない。お風呂にはシャワーが付いてなくて、居間にクーラーもありませんでした。そのうえゴキブリが土間に住み着いて、完全に恐怖でした(笑)。あと田んぼの真ん中にあるような家だったので湿気がすごくて、鞄や靴が全部カビてしまったり。そんなことが続いて、妻も体調を崩してしまったので、いったん普通のマンションに引っ越すことに決めました。田舎暮らし自体は楽しかったので東京には戻らず「都会と田舎のはざま」のような場所を探して、今の住まいに引っ越しました。都会と田舎のハイブリッド感がちょうどよかったんですね。


ーー田舎暮らしも楽しいことばかりではないようですね(笑)。漫画原作を書くことになったきっかけを教えていただけますか?


クマガエ:コスプレイヤーをしていた妻の引退がきっかけです。それまで生活費は妻と折半していたんですけど、妻が引退して収入が減るので、そのぶん僕が仕事を増やすことになりました。それで以前の仕事仲間に声かけていたら、講談社時代の先輩から「『イブニング』の編集長が田舎暮らしに興味あるみたいだから一回会ってみたら?」と誘われたのがきっかけです。その時は編集者かライターとしての仕事を紹介してもらうつもりだったんですが、編集長が僕の田舎暮らしの話に興味を持ってくれて、「原作書いてみませんか?」という話になりました。


ーー実際に原作を書くことになって苦労したことはありますか?


クマガエ:漫画編集者時代、原作付きの作品を担当することはほとんどなかったので、シナリオ原作自体見たことなかったんですよね。もちろん書いたこともないけど、やるしかない。漫画作りの現場からは離れていたので、改めてストーリー構成について勉強したりとか、ちょっとずつ思い出しながらやりました。


ーー絵を担当している宮澤ひしを先生とはどういう流れで組むことに?


クマガエ:僕が書いた企画書を編集部内で検討してくださり、今の担当編集さんが宮澤さんを推薦してくれました。それで、僕も宮澤さんの絵を見て一発で惚れてしまい、ぜひお願いしますと。


ーー水のキラキラした感じや植物の生き生きとした描写が綺麗ですよね。


クマガエ:僕もそういう綺麗な絵を見たいので、自然や生き物が映えるシーンを意識して原作に入れるようにしています。ファン目線に近いのかもしれません。


ーーそういう作り方ができるのが面白いですね。編集者の視点が生かされていることはありますか?


クマガエ:漫画家さんが欲しているであろう情報を、原作で入れ込むことだったり。あとはやっぱりスケジュールをかなり気にしています。スケジュールの遅れが一番、編集さんの胃が痛くなるところだとわかっているので(笑)。


ーーそれでは、最後に今後挑戦してみたいことを教えてください!


クマガエ:今後は農薬や化学肥料を使わない農業をやりたいです。まずはいい畑を見つけて、土づくりから。あと食べ物を自分で賄うということはチャレンジしていきたいので、釣りをしたり。もし一軒家に住めたら鶏も飼ってみたいですね! そうやっていろいろ挑戦したことを。どんどん漫画に盛り込んでいけたらと思っています!