生理の辛さは個人差があるものの、中にはまともに働けなくなってしまう女性もいる。生理休暇も制度としてはあるが、職場の理解がなければ使いにくい。女性が働きやすい社会にしていくためには、今後企業は環境を整備していく必要がありそうだ。
カイロファミリーカイロプラクティック三鷹院(東京都)では、女性従業員の働きやすさに配慮した「月経時働き方改革」を行っている。運営会社Health Educationの佃隆代表は、「従業員に生活全般での問題をヒアリングしたところ、『生理時がつらい』という声があがりました」と説明する。
生理あるある「トロイ人になる」「ナプキンが蒸れたりこすれたりして不快」
2017年ごろから職場環境改善のためにヒアリングを実施。また、クライアントの健康状態を細かく分析すると、こちらでも女性の生理痛の問題が浮き出たという。
ヒアリングをした副院長自身は女性だが、生理自体は軽く、生理痛に悩む人の本当の気持ちはわからなかったという。しかし、ヒアリングを通して「身体を改善するためには気持ちに寄り添うことも重要」と社員がよりスムーズに働けるように「月経時働き方改革」をスタートした。
その一つが、生理時のケアや煩わしさを社内全体で共有する「生理あるあるシェア」だ。生理期間や生理痛は人それぞれだが、自身の症状を"普通"と捉える人は多い。そこで従業員一人ひとりに、症状の差や症例をまとめた資料を提示しながら症状を聞いていった。
集まった"あるある"の中には、「眠気がすごい」「頭が火照ってボーっとする」「集中力が散漫、もしくは過度に1点集中になってしまう」といったものほか、
「頭で思っていることが素早く行動に移しづらい。要するに、トロイ人になる」
「トイレに時間がかかるため、受付から離れづらい」
「立ち座りで、ナプキンが蒸れたりこすれたりして不快」
「トイレに行く回数が多い」
など、就業時に大きく影響のあるものまであった。
「最初は全員抵抗があった」 今では「辛くて当然と全員で受け止められ」
現在では、生理期間を社内で共有する「生理カレンダー」を導入。もちろん希望者のみだが、女性6人中5人が活用している。さらに体調に応じて同じ業務時間のメンバーと仕事内容を調整する「業務スイッチ」や、受付業務で離席しづらい状況を解消するため「生理時トイレフリー」制度も導入した。
佃代表は「生理時はできるだけ座ったままで仕事できるよう、周りのメンバーが積極的に動くほうの業務の担当を心がけています。またトイレフリーについても、制度として設けたことで"業務中でも行ってもいい"という不安解消となっているようです」という。生理情報を共有することが、周囲の積極的なサポートや、本人のストレス軽減に繋がっているようだ。
生理時働き改革は、今でこそ受け入れられてはいるが、最初は社内でも抵抗があったという。しかし今では"生理時はつらくて当然"という意識を共有できるまでになった。女性従業員からは
「女性スタッフと一緒にシェアすると1人1人の違いがさらに明確になり、自分の物差しで人の痛みを計ってはいけないと理解できました」
という声が挙がった。男性従業員は当初、生理の話をするとセクハラに取られるのではないかと感じていたという。それでも職場全体でお互いの体調が共有されることで、男性側もサポートしやすくなった。
佃代表は「生理時は辛くて当然、それでいいんだと全員で受け止め、可能な範囲で一生懸命仕事をします。このスタンスが社内の空気、流れがよくなり、結果クライアントに最高のサービス笑顔をお届けできます」と話す。
生理時の苦痛を伝えられる職場は、ひいては男女問わず自身の体調を伝えられる職場にもなり得る。そうなればお互いカバーもしやすくなり、業務も今より円滑に進められるだろう。
佃代表は今後の目標について「生理を我慢しながら仕事を頑張っている世の中の女性を減らしたい。男性も女性も、生理の実態をもっと知ってもらえるようにしたいと思います」と語った。
同店ではこれらの経験を活かし5月31日から、女性患者に向けて「生理痛ナチュラルケア」サービスを提供している。有料カウンセリングのほか、生理痛を軽減させる施術や栄養指導、生理ケア用品などの紹介動画を無料で公開する。