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『マッシュル -MASHLE-』は和製ハリーポッター? アブノーマルファンタジーの魅力とは

2021年05月31日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2020年1月から「週刊少年ジャンプ」で連載中の『マッシュル -MASHLE-』。連載から1年ほどで累計発行部数140万部を超える人気漫画だ。魔法界が舞台にも関わらず、主人公は一切魔法を使えないというアブノーマル魔法ファンタジーである。


 舞台は魔法を使えないと処刑される厳しい世界。そんな世界の森の奥、一人黙々と筋トレに励む少年が主人公マッシュ・バーンデッドである。


 家族と平穏に暮らしていたマッシュだが、ある日魔法が使えないことが魔法警察にバレてしまい、話は急展開する。平穏な暮らしを続けるために提示された条件は、魔法学校へ通うこと。家族との平穏な暮らしを守るためマッシュは、筋肉一つで魔法使いたちとの学校生活に挑んでいく。


 そんな『マッシュル -MASHLE-』だが、かの有名な世界的ベストセラー『ハリーポッター』を想起させる設定が頻繁に登場する。箒に乗って行われるスポーツ・クディッチさながらの「ドゥエロ」、影で暗躍する闇の勢力など、『ハリーポッター』を読んだことのある読者なら抱くであろう既視感とワクワク感が「マッシュル」にはある。魔法界にある魔法学校でマッシュと仲間たちが成長していく様子を描いた『マッシュル -MASHLE-』は、「和製ハリーポッター」といっても過言ではないだろう。


 そして魔法を使えないと処刑される厳しい世界で、主人公が魔法を使えないという設定。不遇の主人公が、生まれ持った特異な能力を生かして活躍していく様は、『NARUTO』などのヒット作からわかるように、「週刊少年ジャンプ」における王道のパターン。そんな王道の展開により魅力を与えているのが”ギャップ”である。


 例えばマッシュは普段は喜怒哀楽を表に出さず、大抵のことには動じず冷静。しかし好物のシュークリームが絡むと話は別だ。敵の嫌がらせや挑発は受け流せるのに、懐に大事にしまっているシュークリームを狙われると、即座に戦闘モードへと切り替わる。


 描かれるバトルシーンは熱いのに、そのきっかけがシュークリームというギャップ。作品全体を通して、緊張と緩和のバランスが取れている点が「マッシュル」の魅力だ。


 さらに、作者の甲本一が、集英社の少年ジャンプ漫画賞ポータルサイト「ジャンプの漫画家になる!」のインタビューで、「やばい人が好きだから、漫画のキャラはやばい人になるように描いている」と発言していることからわかる通り、『マッシュル -MASHLE-』に登場するキャラクターは皆個性的だ。


 特にマッシュのイケメンライバルとして登場するランス・クラウンは一見正統派の美男子だがその性格は、妹を愛してやまない生粋のシスコンだ。そんな個性的な仲間がたくさん登場するものの、ツッコミは不在。思わず読みながら読者自身がツッコミを入れたくなるギャグ的な要素もある。


 だが作中では、魔法を使えないマッシュには数多くの差別や理不尽が降りかかる。魔法を使えないハンデを背負っているマッシュが、筋トレをして磨き続けた肉体から繰り出すシンプルなパンチやキックで、才能ある魔法使いを倒すシーンにはある種のカタルシスすら感じられる。


 公式Twitterのフォロワー数は5万人を突破し人気に火が点きつつある『マッシュル -MASHLE-』。己の筋肉のみで強敵に挑んでいくマッシュの成長に今後も注目だ。