2021年05月30日 08:51 弁護士ドットコム
社会的弱者の支援や人権の重視などを掲げてきた団体で、加害行為が相次いでいる。
【関連記事:夫婦ゲンカ「仲直りご飯」を作ろうとしたら、夫がすでに「離婚届」を出していた…】
近年、フォトジャーナリズム誌「DAYS JAPAN」の元編集長による性暴力や、映画会社「アップリンク」代表によるハラスメントの問題が続いた。
今年3月にも、社会的マイノリティの情報メディア「soar」を運営するNPO法人が、元理事の男性による性加害を発表した(3月時点では「加害行為」としていた)。
被害者の女性ライターは、男性だけでなく、団体の対応にも不信を感じ、いまもなおネット上で発信を続けている。
団体は対応が後手になったのは「NPOの限界」と主張する。果たして団体の主張は妥当なものなのか。そして、今後どのような対応が求められているのか。
専門家は、団体としての責任を果たし、被害を受けた方々からの根本的な納得を得るためには、問題の背景の十分な検証と、それを踏まえた再発防止策を提示しなければならないと指摘する。(編集部:塚田賢慎、新志有裕)
事態が公になったのは、今年3月29日のことだ。NPO法人soar(渋谷区・工藤瑞穂代表理事)が、理事である鈴木悠平さんの解任を発表し、謝罪した。
発表によると、2020年、複数の個人から、鈴木さんとの飲食の席などで加害行為を受けたとの申告が団体に寄せられた。
同年末、「内部調査チーム」による確認をすすめたところ、「被害者の方々と鈴木との間で概ね争いのない認定事実の範囲内で、鈴木において、違法であると評価し得る、または役員として相当性を欠く行為があったことが確認できた」とする。
被害者らのサポートや、団体監事・小澤いぶきさん(児童精神科医)を担当に据えた被害相談窓口開設などの再発防止策を打ち出した。
この発表後も、4月16日、5月6日、5月14日と改善に向けた取り組みの進捗などについてリリースを出している(4月16日リリースで、外部相談窓口の開設を報告)。
同じく3月29日、鈴木さんも自身が代表を務める会社の公式サイトで「相手方に対する行為の過ちと責任」を認めた。しかしながら、団体のリリースが「事前の合意を大きく逸脱する内容・範囲(多数への情報発信)」だったとして、名誉毀損等の裁判を起こす考えをあきらかにした。
公式サイトだけでなく、SNSでも公表したことが、事前の合意と異なるというもののようだ。
元理事と団体とが反目しあう構図となったが、その日の夜、鈴木さんからの被害をツイッターで投稿したのが、ライター・卜沢彩子さんだ。
卜沢さんは今もなお、加害行為や、soarの対応について、情報発信を続けている。編集部は卜沢さんを取材した。
まずは、鈴木さんからの加害事案と、その後の経緯を聞いた。
2020年7月、あるシェアハウスのイベントで、泥酔した鈴木さんとテーブルで隣り合い、脚を絡めることを繰り返されたほか、体を触られたという。
soarは、障害や貧困などの困難を抱える社会的マイノリティをサポートするメディアを運営する。鈴木さんは、soarの理事だけでなく、「LITALICO発達ナビ」の創刊編集長を務めるなど(現在は退任)、いわゆる「ソーシャルグッド」界隈で大きな影響力を持っている。
卜沢さんは、性暴力のサバイバーとして、12年前から精力的に啓蒙活動を続ける。鈴木さんとは、同年1月から2度目の対面だった。彼の取り組みに敬意をもっていたからこそ、大きなショックを受けた。
共通の知人に相談するなかで、自分の体を触った相手が「いいこと」を言っているときの違和感についてのツイートを投稿したところ、鈴木さんから同年9月、謝罪を希望するメッセージが届いたそうだ。
同年12月にも、具体的な額の慰謝料の支払いや、自分の職能によって、活動の役に立てるという旨の連絡があったそうだ。
卜沢さんからは一度も、謝罪・慰謝料・仕事の要求はしていないという。
2021年4月14日、鈴木さんの代理人弁護士からの求めに応じ、面会した。
「鈴木さんは謝罪しましたが、卜沢さんの嫌がることをしたことがダメだとか、嫌な思いをさせてしまったことが良くなかったと述べたり、サバイバーだと知らなくて傷つけてしまったとも話したりしていました。
結局、同意なく触った行為について反省の言葉は聞かれません。私の経験の問題にすり替えないでほしいとも伝えました」
鈴木さん側が用意したレンタルルームの終了時間(1時間)になったため、話し合いは不十分なまま切り上げられたという。
「鈴木さんは、発達障害や適応障害であることを開示してきました。表面的な謝罪ではなく、性暴力にも向き合った上で再発防止に取り組んでもらいたい。
性暴力への認識がおかしいと感じたので、謝罪を受け入れることができず、私の言葉を聞いて考えたことをまとめて、文章を書いてほしいと話しました」
卜沢さんはまだまだ問題を感じているが、対話を続けようと考えている。だが、本件については、直接的な加害行為以上に、二次加害のひどさが際立つという。
被害を公表したことで、卜沢さんは、団体がリリースで発表した被害者らとつながって、一定の情報を共有している。
被害報告を受けたsoarが内部調査チームを立ち上げたのは2020年末のことだ。
後で知ったことだが、2020年11月段階で、一部の理事が卜沢さんへの加害行為を知り、調査の段階で鈴木さんにも事情聴取がおこなわれたそうだ。
それを事実とするなら、内部調査のスタート時期と重なるのに、卜沢さんに一切のコンタクトもないまま、3月の発表がなされてしまったわけだ。
soar(工藤さん)から初めてメッセージが届いたのは、2021年4月20日だった。
連絡が遅れたことの謝罪とともに、「説明と再発防止の話し合いの席を設けたい」「連絡が来たことを公開しないで」との内容も付記されていたそうだ。
「被害者に口外禁止をもとめることを不審に思いました。『卜沢さんを鈴木さんとの裁判に巻き込みたくない』ということや、『守秘義務』『NPO法人の法的限界』という理由を繰り返すばかりです。
弁護士に相談すると、soarが私に連絡したことで、soarが名誉毀損訴訟で不利になったり、他の被害者に調査がいったりすることはないだろう。相談窓口に相談した被害者との差はないのでは、と言われました」
リリースを今後出すときは、事前に連絡がほしいと伝え、承諾されたが、送られてきたリリースの内容を読んでまた目を疑った。
「憶測や事実誤認が飛びかっているが、soarの公式リリースを信じてほしいという文章でした。これでは、soarが認めた被害者でなければ、発信しても嘘つきと言われる可能性もあり、二次加害となる文章で、読むと動悸が止まらなくなりました。
『まだ把握していない被害者がいるかもしれない。被害を訴え出にくくする文章はやめてほしい』と何度か修正を依頼しましたが、『早くリリースを出して心配している周囲の方に説明をしたい』とする工藤さんとの間で、話がまとまりませんでした」
体調を崩し、工藤さんからの連絡に、吐いてしまうようになった。団体とのやりとりに5月から弁護士を立てている。
「調査チームが立ち上げられて、私の名前が出たなら、連絡するのが普通の感覚ではないでしょうか。連絡ひとつでおさまった話だったかもしれません」
卜沢さんは、工藤さんとの話し合いに、支援者である編集者田村真菜さんの同席も提案したが、「守秘義務」を理由に「遠慮してほしい」と言われたという(その後、同席を承諾)。
団体への不信感がふくらむなか、意外な形でこの問題は再び炎上することになる。
問題が大きくなってから、団体理事の櫻本真理さん(cotree代表)が自身のツイッターで、「『許せない』の連鎖でさらなる不幸を生むよりも、許した上でより良い未来をつくることに向き合えるといいと思う。」と発言したうえで、人を許す方法について書かれた記事を紹介した。
加害者を擁護し、性被害者の口をふさぐように捉えられる発言は批判され、櫻本さんはツイートを削除し、謝罪した。さらに、5月21日付での理事辞任を発表した。
卜沢さんは、団体を「仲の良い友達同士」とする。
鈴木さんが加害事実を認めているにもかかわらず、卜沢さんは、ツイートするか真剣に悩んだ。
「役員らはソーシャルグッド界隈の人気者です。私が被害を告発しても、声がかき消されたり、何を言われたりするか不安でした」
予想はあたった。性暴力を矮小化され、声を上げたことを非難されるなどSNS上での二次加害が続いている。
鈴木さんや団体を批判する声も多い。「性暴力が温存される環境だったのでは?」と団体の姿勢に疑問があつまったことで、soarは1度目に続き、それからもリリースを出すことになった。特に、最新の5月14日のリリース(「一連の対応経緯の共有と代表理事からのご説明について」)では、約1万3500字にわたって、対応が遅れたことについて説明をおこなっている。
近年、フォトジャーナリズム誌「DaysJapan」の元編集長による女性スタッフへの性暴力や、映画配給会社「アップリンク」代表によるスタッフへのハラスメントが大きな問題となった。最近も、障害者支援の福祉法人「グロー」理事長による性被害をめぐり、裁判が起きている。
卜沢さんも、社会福祉系の団体や、NPO法人で活動してきた。社会課題に取り組む団体の性加害は「構造的な問題」を原因とするものではないかと指摘する。
「ある団体で、代表からパワハラを受けて、辞めたという経験もあります。
幹部が、強烈なリーダーシップと行動力によって、問題を抱えた多くの人を救うことも事実です。
だから、被害が起きても、救われた人、これから救われるかもしれない人のことを考えたら、申し訳なくて訴えだせないんです。
同じように考えている関係者が多いから、周りに相談しても、取り扱おうとしないか、排除するか、無理やり仲直りさせたりすることもあります」
soarにも同じ空気を感じている。元理事による「許す」発言がそれを象徴しているだろう。
「ソーシャルグッド界隈の人たちは、対立を避けて、人に優しく、見守っている。ふんわりしたことばかり発信しますが、いざ問題が起きたときに、揉めごとを避けて、仲良くしようと言うのは、被害者を追い詰めることになります。
性暴力の問題は、当事者同士では絶対に解決せず、たとえば警察など第三者の介入が必須です」
団体を通じて仕事を得て、生計を立てている人は健常者にも障害者にも少なくないという。
鈴木さんから一方的に届いた「自分の職能で役に立てる」とのメッセージにも、立場の強さに無自覚な者の、悪気ない上から目線を感じさせた。
表立って、団体を批判すれば、仕事を失うリスクになりかねない。
様々な事情で声を上げるのが難しい立場の人たちから、卜沢さんのもとに、情報提供や応援が届いている。
「公で言うのは難しいけれど、応援している」という内容だそうだ。
soarに求めていくのは、第三者による外部調査だ。
「組織を守るのではなく、まずは被害者に誠実な対応をして、被害者を追い込まないでほしい。今度出すリリースでは、『被害者からの指摘があって二次加害となる文章を取り除いた』と書き加えてほしい」
まだいるかもしれない被害者が、被害申告をする場として、soarはふさわしくないと考えている。
「内部の問題に向き合わない限り、信用はできません。soarは現状、NPOとしての社会的責任を果たす団体運営がなされていると思えません」
鈴木さんによる加害行為を知り、被害者支援に動いたのが、前出の田村真菜さんだ。
soarが発表している被害者と知り合いだったことから、弁護費用などを支援するため、ネット上でカンパを募ると、約317万円が集まった。お金だけでなく、被害を申告する複数の女性からの相談も寄せられている。
サポートを希望する被害者には、すでにお金を届けているが、まだ申告できていない被害者のために、一部をプールしている。
「一般企業などで働いて精神的に落ち込み、NPO業界にくる人もいます。すでに居場所をなくしたため、この業界から次の場所に移れないこともあります」
soarは、自浄作用がきいていないと指摘する。
「ただ、難しいのは、友人同士でNPOの理事や監事が構成されている場合、外からガバナンスを改善する方法、いさめる方法がありません。是正処置が難しい。本来であれば、いさめてくれるかたを理事会におくべきですが、それができていないのです」
5月14日、soarは4度目のリリースを出した。これまでの公表内容に批判を浴びたことについて、約13500字にわたって経緯を説明したものだ。
加害行為に関する調査・処分の遅れ、公表できなかった事情などについても改めて説明している。「NPO法人としての事業範囲や関係各法令(NPO法や弁護士法等)への抵触可能性」などの言葉で、NPOができることには、法的・制度上の限界があることを繰り返し主張している。
NPO法人のガバナンスに詳しい鬼澤秀昌弁護士(NPO法人新公益連盟監事・BLP-Network代表)に、一連の動きを踏まえて、soarのリリースを読み解いてもらった。
ーーNPO法人の法的限界など、リリースの内容をどのように解釈すればよいのか
鬼澤弁護士:soarはリリースで、法的な制約や限界の存在を説明している。
確かに、加害行為(ハラスメント)の事案は、慰謝料請求など法的紛争が顕在化しているので、NPO法人が積極的に関与することには、弁護士以外は紛争解決等の「法律事務」を業として行ってはならないとする弁護士法上の定めに抵触するリスクがあり、その介入根拠や対応範囲について慎重に検討する必要があると思う。
また、NPO法上の限界としては、NPO法人は基本的に、定款に定めた事業しかすることはできない。もちろん今回の調査はsoarの定款の定めた事業の範囲内と解釈することも十分ありうる。他方で、元理事のプライベートにおける行為であるからsoarの事業の範囲外と判断されてしまえば、所轄庁からの指導や外部からの批判を受ける可能性がある。
これらの制約は必ずしもNPO法人特有の話ではないが、理事の解任前であれば、NPO法人は理事を懲戒処分や解任等の対象とするかどうか判断するために調査することはできても、それを超えた被害者対応をするとなると、先に述べた弁護士法等との関係で慎重に対応せざるを得ない。
特に解任後は、NPO法人は元理事に対する処分の権限もなくなる以上、「民間業者であるNPO法人に対応の限界がある」というsoarの見解はその意味では理にかなっている。
このような観点から、soarは佐藤暁子弁護士による外部相談窓口を設置・紹介していると考えられる。
いずれにせよ、リリースに書かれている「法的な限界」の意味は理解できるし、被害を申告した方々の負担を増やさないために訴訟にならないよう対応する必要があるということにも違和感はない。
しかしながら、soarの対応(リリース)に批判の声も少なからずあったのは、「これらの問題はなぜ起きたの?」という疑問に十分答えられていないからではないか。
リリースのなかに、以下のようなコメントがある。
〈なぜなら、仮に当該解任や公表が訴訟などの法的手続きにおいて争われることとなった場合、今後NPOが役員不祥事事案に対応するに際して積極的な措置を躊躇させる参照事例になりかねず〉
〈今後のNPOに求められるガバナンスの参照事例の一つとなり得るため、他のNPOにおける不祥事事案との事実関係や処分・公表内容、公表範囲との比較については慎重に検討しました〉
団体として本件を重大な事案と受け止めているということなのだとは思うが、「参照」されるべき事案であるか否かは、適切な対応の要否とは関係がなく、むしろ「被害者と向き合っていない」という批判を受けかねない表現だと思う。
被害を申告した方々は自らSNSで告発せざるを得ない状況がおかしいという問題提起をしている。
その問いに、リリースは答えていない。その点の説明が不十分なままに、団体としての対応の適法性や外部窓口の設置に関する説明に力を入れてしまっていることが、妙に保身に走ったような印象を与えてしまっている原因ではないかと思う。
また、ライターの小川たまかさんの記事(「NPO法人soarからの記事修正依頼について」、5月25日付)にあるように、soarは小川さんの記事(「『尊敬していたからこそショックだった』LITALICO発達ナビ元編集長が複数女性に性加害」、5月6日付)への修正の申し入れをしている。
小川さんによれば、この申し入れの代理人を小野田峻弁護士が務めている。soarのリリースによれば、小野田弁護士は内部調査を主導した外部の弁護士でもあり、同調査は日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠したとされる。同ガイドラインでは、委員の調査終了後の調査対象企業との関係については直接的に規律していないことから、調査時点で「利害関係を有する者」(顧問弁護士や、過去に事件を受任したことのある者等)でなければ、小野田弁護士が調査後にsoarの代理人を務めたとしても、同ガイドライン違反にはならないかもしれない。
とはいえ、「第三者」としてsoarの調査に関与した弁護士がその後の申し入れにおいて代理人を務めると、調査自体の中立性・公立性・客観性に疑念をもたらすリスクが生じる点は、配慮してもよかったのではないかと思う。
ーーsoarには道義的責任はないのか
鬼澤弁護士:事業運営をする立場として様々な限界があるであろうことは理解しているが、現状の対応で十分かというと課題はあると思う。
私の事務所では学校法務の問題もよく取り扱っているが、今回のケースは学校現場で紛争が拡大するケースと共通点がある。
例えば、いじめが起きたとして、学校は「調査しました。●●という事実は認められ、●●という事実は認められませんでした。再発防止策をしっかりやります」と調査をした内容を説明しようとすることが通常だ。しかし、そこからさらに、いじめの起きた背景の分析まで十分行わなければ、再発防止策が必ずしも事案に沿っていないものになる。そうすると、当該いじめの行為そのものについて十分な調査がされたとしても、被害者側には、なお「うやむやにされた」という思いが残ることになりかねない。
今回のsoarのリリースにおいて、再発防止策は(1)相談窓口の開設、(2)コードオブコンダクト(行動規範)の作成と周知、(3)組織内での役員、スタッフの研修、とあるが、この文面だけ見ると、一般的なハラスメント対策に見え、本件事案に沿った対策になっているのかがわからない。
道義的責任という意味では、さらに問題の背景をより詳細に分析して可能な範囲で公表し、その事案に沿った再発防止策を講じることが必要ではないかと思う。
特に多くの方々が知りたいことは、問題が起きた背景だろう。soarの説明によれば、「元理事に権威性が生じていた」ということであるが、なぜ権威性が生じて、なぜ止めることができなかったのという分析は十分になされたのだろうか。当初団体としての処分に踏み込むことができなかった事情もあるはずだが、説明は数行に過ぎない。
少なくともsoarの指摘する「権威性」が生じた構造について検証を尽くしたうえで、それを踏まえた再発防止策を提示しなければ、被害を受けた方々からの根本的な納得は得られないままではないかと思う。
もちろん、今回の件があったからといって、soarの今までの活動の全てが否定されるわけでは決してない。soarの記事が励みになった人も多くいるはずだ。
soarにとって、団体の責任を果たしたうえで、今後の発展を目指すためにも、団体の内部体制の改善を図り、より踏み込んだ問題の背景事情の調査・公表は不可欠だと思う。団体の事業をけん引してきた者に「権威性」が生じることはNPOやソーシャルグッド界隈では珍しいことではない。団体として、そのような者が問題を起こしたとき、どのように対応するかという問題は、soarのみならず他の団体でも十分起こり得ることと考えられる。
こうしたときに、問題の背景に迫ることこそ、被害を受けた方と向き合うときに大切な姿勢であり、soarがリリースで重視していた「今後のNPO」に役立つことだと思っている。
鬼澤弁護士はこのように、soarの次の動きに期待し、注視している。
卜沢さんは、この5月14日公表の4度目のリリースをめぐり、公表前にsoarとやりとりしていた。「私の確認を待たずに公開することになり、公表に至りました。その際、窓口につながった被害者だけを取り扱う姿勢を示すような文が加えられており、二次加害にあたると私が指摘した文章を削除して公開すると伝えられました。せめて被害者からの指摘があって、削除したと書き加えてほしかった」と話す。
編集部はsoar(工藤さん)へのインタビューをメールで依頼した。また、同じメールで「ライターの卜沢彩子さんが鈴木悠平さんから受けた加害行為をSNSで明かしております。貴団体としては、この加害行為を認めているでしょうか」と質問を投げた。
soarからの回答が5月28日にあった。
(1)取材のご依頼について 〈当団体としては現在、活動体制等の改善に向けた各種の取り組みに注力しており、また、既報のリリースを超えた情報の発信は、本件加害行為の調査にご協力くださった被害者の方々に、更なる精神的なご負担を課すことに繋がること(さらに言えば、既報のリリースのとおり、同被害者の方々の確認を経ない情報の対外的な発信は、当団体としてこれまで一切行っていないこと)から、取材に応じさせていただくことはできかねます。〉
(2)ご質問の件について 〈頂戴したご質問については、「貴団体としては、この加害行為を認めているでしょうか」との内容では、ご質問の意図を汲み取ることが困難ですので、お答えすることはできかねます。なお、卜沢彩子様が当団体が実施した処分・調査対象となった事案の被害者ではないことを念のため付言させていただくとともに、鈴木氏の加害行為に係る当団体の認識の時期や範囲については、以下のリリース(編注・5月14日付)をご確認ください。〉
また、編集部では鈴木さんにも同じく取材依頼と質問を送ったが、代理人弁護士を通じて、取材を一律断っているとの返答があった。