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【漫画】真面目な父が突然「忍者になる」と言い出したら……? 予想外のラストシーンに思わずほっこり

2021年05月29日 11:11  リアルサウンド

リアルサウンド

【漫画】真面目だった父が突然「忍者」に?

「父さん 忍者になる事にしたんだ」


 そんな突飛なセリフから始まる創作マンガ『父が忍者になった話』。ギャグテイストな出だしだが、Twitter上では「予想外な展開」「じわじわくる」と騙される人が続出。就活生の奈津子と、二人暮らしの「お父さん」のありきたりな日々に訪れたあまりに唐突な展開と、そのなんとも優しい結末は必見だ。


 作者の吉田丸悠氏(@ysdmr_y)は、webアクションにて「じょしまん。」を連載するプロのマンガ家。本作は商業では難しそうな地味な話だからという理由でTwitterやpixivにアップしたそう。「リアルサウンド ブック」ではそんな“ちょっと地味”な『父が忍者になった話』創作の背景や、吉田丸氏のマンガへの思いなど話を聞いた。(編集部)


関連:【漫画】気になる作品はコチラ(16ページ)


ーーぶっとんだ人かと思いきや真剣で、社会人としても尊敬できるお父さんの姿に感激しました。そして、ラストも心温まるお話でした。描こうと思われたきっかけはありますか?


 以前連載していた『大上さん、だだ漏れです。』の作風もあって、編集さんから可愛い女の子が主人公の“ちょっとHな話”をお願いされることが多いんですよ。もちろん嫌じゃないんですけど、別のもの描きたいなっていう思いがふつふつ湧いてきたんです。


ーー確かに『父が忍者になった話』にはHな展開はなく、設定こそぶっとんではいますが、落ち着いた話ですよね。


 はい。ほぼほぼ女の子ばっかり書いているので、中年のおじさんをこんなに書いたのも初めてでした(笑)。


ーープロのマンガ家である吉田丸さんが、今回の作品はなぜSNSにアップしたのでしょうか?


 ありがたい話なんですが出版社さんに声をかけていただける時は連載の話が多くて、短編ってなかなか描く機会がないんです。でも、連載デビューまでは短編を書いている期間が長かったですし、もともと短編作品を読むのも好きで、描きたい短編のネタが溜まっていました。本作は特に一発ネタ的な出オチ作品なので、商業誌には向かないだろうなと。たまたま時間ができたタイミングで描いて、SNSにアップしてみました。


ーー連載作品以外では初めてSNSにアップされた?


 そうですね、ある程度の長さのやつでは初めてでした。2~3ページくらいの短いものは書いてアップしたりもしたんですけど、それでもそんなに反響はなかったので。


ーー本作の反響はいかがでしたか?


 Twitterのほかに、pixivにもアップしたんですが、そこでもたくさんの方に読んでもらえています。pixivには既存のマンガの試し読みとかも載せてるんですが、今まで上げた中で本作が一番読まれてますね。コメントもいろいろいただきましたけど、初めて私の作品を見てくれた方が多い感じです。「自分のことだと思った」というガチ忍者の方からもコメントもらいました!


ーーガチ忍者!


 もちろん実際にかはわからないんですが、プロフィールに忍者やっているって書かれていたんです。なかなかリアルに忍者っていう職業やってる人っていないのでびっくりしました。


ーーそれは驚きますよね。世に忍者になりたい子供は多いと思いますが、本作ではまさかお父さんが忍者になるとは。どんなきっかけで設定を思いついたんですか?


 もともとヒーローものが好きなんですが、『世界忍者戦ジライヤ』という作品があって、主人公のお父さん兼師匠役を本物の忍者の方が演じていたんです。テレビ番組の『Youは何しに日本へ?』とかにも出演されていた、武神館っていう忍術道場の初見良昭さんっていう先生です。『ジライヤ』は30年くらい前の作品なんですけど、その初見先生のあとを継いだのが、『ジライヤ』の主演の俳優さんだったんですよ。


ーー実際にですか?


 そうなんです。マンガみたいな話だなって思って(笑)。そこからいろいろ妄想が膨らんでいきました。


ーー昔からヒーローものがお好きだったんですか?


 『ジライヤ』自体はリアルタイムではないんですけど、かれこれ10年くらいは特撮沼にいます。


ーーでは、本作に『ジライヤ』を見て得た知識も生かされていますか? その他に頑張って描いたシーンや、こだわりのポイントもあれば教えてください。


 忍者自体の知識はそこまでなかったので、調べながら描きました。手裏剣投げるポーズが、どうやって投げるのか正しいのかわかんなかったり、忍び装束の構造も全然わかんなくて、画像検索にもお世話になりました。


ーー練習するお父さんの姿を電車から目撃する奈津子の気持ちもリアルでした。吉田丸さんに就活のエピソードや“お祈りメール”の経験はありますか?


 それが就活したことないんですよ……。私が通ってたのは芸大だったんですけど、芸大って誰も就職活動しないんです(笑)。3~4年生になってもみんな何もしてなくて。私も大学3年生の時にマンガ家デビューして、周囲のお陰でなんやかんややってこれました。


ーーそうだったんですね。商業誌に応募してデビューですか?


 今はもうないんですけど、『ドロヘドロ』とかを連載していた小学館の「IKKI」っていう雑誌に応募してデビューしました。でもそれから2~3年くらいは、読み切りのネームとか出してたんですけど一度も載らなくて……鳴かず飛ばず。じゃあいろんなところに持ち込んでみようと思って、「アフタヌーン」とか「ひらり、」に持ち込んだりして、連載できるようになったという流れですね。


ーー影響を受けたマンガ家さんや、作品はありますか?


 小さい頃から、少年マンガも少女マンガも読んでいたんですけど、好きになるのはキラキラの恋愛ものよりはコメディとか日常系の方が多くて、『赤ずきんチャチャ』とか、『あさりちゃん』とか好きでした。少年マンガでもバトルものよりも日常ギャグマンガが好きで、『世紀末リーダー伝たけし!』が好きでしたね(笑)。昔からザ・少女マンガでも、ザ・少年マンガでもない中間のあたりくらいを好きになることが多くて、だから自分の作風もそういうふんわりした感じですね。


ーー小さい頃から身の回りにマンガがあったんですね。


 姉がマンガが好きで、親も月に1冊は月刊誌を買ってくれていました。姉と妹もいたので、姉が「なかよし」、妹が「りぼん」、私が小学館の学年誌を買ってもらってました。そして姉が徐々に「ジャンプ」にシフトしていって……という。


ーーマンガ家として活躍されていること、ご家族は喜んでくださっているのでは。


 姉は応援してくれていて、Twitterでもたまに宣伝してくれています。ただ『大上さん~』や今描いてる『じょしまん。』(webアクションにて連載中)もですけど、ちょっとHな作品を書いた時に「今回のはちょっとHすぎるからやめなさい」みたいなことを母に言われたことはありました(笑)。


ーーたしかにちょっとHな話を親に読ませるのは気まずいですね(笑)。では最後に今後の目標を教えてください。


 すごく欲を言えば、やっぱりアニメ化とかドラマ化とか賞レースとかに憧れるんですけど、お仕事を絶えず続けて、隙間産業というか……雑誌の1番手2番手じゃなくても3番手くらいで安定してるところを目指したいですね。読者さんに楽しんで読んでもらえるもので、自分も描いてて楽しいものを描いていきたいです。