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一気に乗ったら個性はっきり! フォルクスワーゲンのSUV3兄弟

2021年05月28日 08:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
コロナ禍でも好調をキープする自動車業界。人気の車種といえば、やっぱりSUVだ。各社がラインアップを充実させていて競争も熾烈だが、世界を代表するメーカーのひとつであるフォルクスワーゲン(VW)にはどんなSUVがあり、日本で買えるクルマは何台あって、それぞれどんな特徴なのか。一気に乗ってみた。

現在、フォルクスワーゲンは計5種類のSUVを販売している。大きい方から「アトラス」「トゥアレグ」「ティグアン」「Tロック」「Tクロス」という構成だ。このうち、日本国内で手に入るのは小さい方の3モデル。サイズ的にそれほど大きな違いがないので“ダンゴ3兄弟”(古い……)ならぬ“SUV3兄弟”ともいえるような存在である。今回は、ティグアンのマイナーチェンジを機に3台全てを乗り比べて、それぞれが持つ特徴や乗り味を確かめてみた。
○正統派の長男「ティグアン」

まずは長男にあたるティグアンだが、日本で買えるVW製SUVで最大とはいいながら、ボディサイズは全長4,515mm、全幅1,840mm、全高1,675mm、ホイールベース2,675mmと扱いやすい。ラゲッジ容量は615L、最小回転半径は5.4m。エンジンは1.5L直4ガソリンターボと2.0L直4ガソリンターボから選べる。価格レンジは407.9万円~684.9万円だ。

試乗したのは今年5月にマイナーチェンジしたばかりの新型で、グレードは量販モデルの「TSIエレガンス」(483.9万円)。デザインを変更したグリルや新採用のLEDマトリックスライト「IQ.LIGHT」、前後センターに配した新VWロゴなどが新鮮だ。

走りの進化は明白。6速乾式単板から7速湿式多板へと機構を変えたツインクラッチのトランスミッション「DSG」が画期的によくなっていて、これまでギクシャクしていた走り出し時のクセが全くなくなった。変速のショックはほぼ皆無で、150PSの1.5Lでも十分な走りっぷりを見せてくれる。

音対策がしっかりと効いているようで、車内は静か。ただし、サスペンションが少し硬目で、路面の凹凸は結構伝わってくる。上級モデルにはショックの減衰力を瞬時に調整するアダプティブシャシーコントロール(DCC)搭載モデルがあるので、そちらであれば、より滑らかな乗り味が得られるだろう。

新型ティグアンの見どころのひとつが、ボタンひとつでレベル2の運転支援システムを起動できる最新のADAS機能「トラベルアシスト」だ。実際に高速道路で使ってみたが、制御の部分で熟成不足を感じた。車線内とはいえ、左右にふらついてしまうのだ。このあたりがクリアできれば、完璧なSUVに仕上がると思う。ユーザーのターゲットとしては、MPVやSUVからの乗り換え組が対象となり、特にクルマ自体の総合性能を重視する男性が中心になるようだ。

○見た目にこだわる次男「Tロック」

次男「Tロック」(T-Roc)のボディサイズは全長4,240mm、全幅1,825mm、全高1,590mm、ホイールベース2,590mm。ラゲッジ容量は445Lで、最小回転半径は5.0mだ。エンジンは2.0L直4ディーゼルターボのみだったが、この5月に1.5L直4ガソリンターボが新たに加わった。価格レンジは355万円~459.9万円。位置づけとしてはスポーティーなクロスオーバーSUVで、傾斜したリア部がクーペのようなイメージだ。

試乗したのは「TDIスタイル デザインパッケージ」(396万円)というグレードで、ボディカラーはラヴェンナブルーメタリックとホワイトルーフの2トーン。パワートレインは最高出力150PS(110kW)/3,500~4,000rpm、最大トルク340Nm/1,750~3,000rpmを発生する排気量2.0リッターのクリーンディーゼルターボと7速DSGの組み合わせだ。

走り出すと、低回転域から大きなトルクを発生するディーゼルエンジンのおかげでズドーンといくのかと思っていたら、意外や意外、スピードが乗らない領域では反応が鈍い。足回りも硬さが目立ち、ディーゼルエンジンの音も少し大きめだ。逆に、高速道路ではサスペンションが落ち着いてフラットになり、加減速が思い通りに行えるようになる。Tロックのセッティングピークは、かなり高い速度域にあるような印象だ。

ターゲットとなるのはハッチバックやSUVからの乗り換え組で、高速性能やスポーティーなデザインを重視するならコレだ。

○結局、みんなの人気者? 末っ子「Tクロス」

最後は末っ子のTクロス(T-Cross)。ボディサイズは全長4,115mm、全幅1,760mm、全高1,580mm、ホイールベース2,550mm、ラゲッジ容量は455Lで、最小回転半径は5.1mとなっている。エンジンは1.0L直3ガソリンターボのみで、価格レンジは278万円~345万円。位置づけはスペースユーティリティーに優れたコンパクトSUVで、VWでは「Tさい」SUVと呼んでいる。

2020年2月にデビューしたTクロスは、同年中に国内で8,930台が売れ、輸入SUVの登録台数で1位になっている。今年5月には最上級グレードの「Rライン」(345万円)が新たに加わり、「TSIスタイル」(303万円)、「TSIアクティブ」(278万円)と合わせて3グレード展開になった。

Rラインでは、レーンキープアシストシステム「Lane Assist」や駐車支援システム「Park Assist」など、他グレードではオプション設定の運転支援システムが標準装備となる。専用のエクステリア(バンパー、サイドスカート)やインテリア(シート、ステアリング)、新デザインの18インチアルミホイールなども装着していることを考えると、結構お買い得なのではないだろうか。

四角いボディのおかげで、室内は思ったより広い。6:4の分割可倒リアシートは前後に140mmのスライドが可能で、フロア高が2段階で調整できるラゲッジルームの奥行きを630mmから770mmまで広げることができる。容量が兄貴分のTロックより10L大きいのも自慢のひとつだ。

最高出力116PS/5,000~5,500rpm、最大トルク200Nm/2,000~3,500rpmを発生する1.0リッター3気筒の走りは必要十分。アイドリングストップからの復帰で「ブルンッ」と震えるのはイマイチだけど、剛性感があって遮音性が高く、引き締まった走行感覚からは「ドイツ車らしさ」がしっかりと伝わってくる。小型ハッチバックからの乗り換えで、使い勝手を重視するユーザーがターゲットとのことだが、男性でも女性でも似合うクルマに仕上がっている。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)