2021年05月24日 16:11 弁護士ドットコム
横浜市のアパートで飼育中だったアミメニシキヘビが、逃げ出してから17日目の5月22日、飼い主の部屋の屋根裏で見つかって、捕獲された。
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幸いにも、ケガ人などは出なかったが、近隣住民を不安にさせた。猛獣が逃げ出した過去の騒動では、飼い主に軽犯罪法違反が適用されたケースもある。
今回の騒動に関連して、過去の「有名事件」として、メディアで紹介されたのが、1979年8月、千葉県君津市の寺で飼育されていたトラが逃げ出した事件だ。
毎日新聞(1992年9月19日)によると、寺の住職が飼っていたトラ3頭がオリから脱走、一頭はすぐに戻ったが残り2頭が逃げ続け、射殺まで27日間かかったという。
この事件をめぐっては、「オリのカギをかけ忘れた」として、管理責任を問われた寺の住職が、軽犯罪法違反(1条12号・危険動物解放等の罪)で起訴された。
その後、最高裁は1988年、拘留20日を言い渡した2審・東京高裁の判決を支持、寺の住職の上告を棄却する決定を下して、有罪が確定した。
はたして、今回のアミメニシキヘビもこの軽犯罪法違反にあたるのだろうか。上記の軽犯罪法1条12号では、次のように定められている。
「人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者」
この者は、拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑)または科料(1000円以上1万未満を徴収される刑)となる。
屋根裏にいたわけだから、「逃した」とまでは言えないのではないだろうか。
『実務のための軽犯罪法解説』(東京法令)によると、「『監守を怠ってこれを逃した』とは、監守義務者の過失によって、その支配下にあった動物がその支配を脱したということであり、檻(オリ)の扉を締め忘れたり、鎖をきちんとつけなかったりすることがこれに当たる」という。
また、「動物が支配を脱すれば十分であり、遠方まで逃走する必要はなく、人に危害を及ぼしたことも不要である」ということだ。
横浜市のケースでは、NHKなどによると、逃げ出す直前のアミメニシキヘビは、横浜市から許可を受けたものとは違う簡易的な鍵がついた木製のケージで飼育されていた。「ヘビが成長したため」という。
この事実がどのように評価されるかわからない。宮崎県延岡市でも1980年4月、移動動物園からコブラ3匹が逃げ出して、責任者が軽犯罪法違反に問われた事件が起きている。
今回のケースでも、もし「過失」が認められると、軽犯罪法違反となる可能性がある。ただ、ネット上では「誠実な飼い主」と評されており、少し気の毒な気もする。