「初めてのモナコ。こういうサーキットはほかにないので、存分に楽しみたいと思います」と、レース前のドライバーズパレードで語っていた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)。
しかし、その約1時間半後に始まった決勝レースで、角田にモナコのレースを楽しむ時間はほとんど訪れなかった。
スタート前のレコノサンスラップでポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)がドライブシャフトに問題を抱えて、レースへの出走を取りやめたため、この時点で予選16番手の角田のポジションは15番手となっていた。
スタートで角田が選択したタイヤはハードタイヤ。トップ10内のドライバーは全員ソフトタイヤだ。そうなると、11番手以下のドライバーが選択するのはミディアムが主流となる。抜きどころがない1ストップのモナコで15番手からスタートする角田が周りと同じ戦略を採ったのでは勝ち目はない。
「そのストラテジー自体は自分でも承諾していました」という角田だったが、同時に「ハードだったので1周目はキツくなるだろうなと思っていた」とリスクも覚悟していた。果たして、「特にスタートをミスしたわけではないですが、スタートの蹴り出しがよくなかった」という角田は、1周目にいきなりふたつポジション落としてしまった。
そうなると、抜きどころがないモナコではレースが厳しくなる。さらにセーフティーカーが出るタイミングでピットインしようと、できるだけピットストップのタイミングを64周目まで延ばしていたものの、この日のモナコGPは珍しくアクシデントがなく、淡々とレースが進行。セーフティーカーが出ないまま、ピットインした角田は再びニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)の後方に回ってしまった。
ソフトタイヤに履き替えた角田はアウトラップの後の66周目に1分14秒037を叩き出して、その時点でのレース中の最速タイムを更新した。しかし、それもラップの後半でウイリアムズが前に現れてきたため、全力ではなかったという。
「まあ、普通でした。すぐにウイリアムズに捕まってしまったので……。オーバーテイクを試みましたがなかなか厳しかった。ずっと後ろだったので、そこまで楽しめなかったです」(角田)
しかし、収穫もあった。
「(レースで77周を)経験できたのは良かった。特にバルセロナでほとんど経験できなかったので、その分ここでマイレージを稼げたのは、ひとつポジティブに捉えたいなと思います」
ドライバーズ・サーキットのモナコで、16位完走に終わった角田。しかし、角田と上位のドライバーとの実力は、結果ほど大きな開きがあるわけではないのも事実。それは、予選Q1で角田より1000分の18秒速かったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が、その後Q3まで進み、レースでは5位でフィニッシュしたことでもわかる。
「やっぱり1番の問題は予選ですね」という角田。
ただし、「焦ることはない」とホンダの山本雅史マネージングディレクターは言い、こう続けた。
「思ったようにレースができてなくても、いまは経験を積み上げるしかない。F1ってそんな甘くないですから」