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“センター不在”でも人気獲得 NiziUに学ぶ「全員主人公」なグループの強み

2021年05月23日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

NiziU『Take a picture / Poppin' Shakin'』

 かつてのモーニング娘。における安倍なつみや後藤真希、アイドル戦国時代を拓いたももいろクローバーZにおける百田夏菜子、また元欅坂46メンバーの平手友梨奈など、アイドルグループにおける“絶対的センター”は、多くの人々の記憶に深く刻まれるかけがえのない存在だ。


(関連:TWICE「Kura Kura」で表現された、J.Y. Parkが考える“愛” NiziU「Take a picture」にも通ずるテーマ


 文字通りグループの中心に立って全体のイメージを確立する“センター”は、特に日本のアイドルシーンにおける共通概念としてファンやメディアによって他称されたり、時にはアイドル本人たちによって自称されたりもする。


 また、以前まではアイドルグループを取り巻き「センターは誰なの?」「このグループの次期センターは〇〇」といった会話が当たり前のように交わされていたように、日本のアイドルシーンにおいて主流とされていたこの“センター”制度だが、近年では特定のメンバーを明確な“センター”と見なさずに活躍をみせるグループも多い。


 なかでも昨年誕生し、現在では国民的グループとも称されるほどの人気ぶりを誇るNiziUは、各メンバーがそれぞれに持つ多様な魅力を最大限に発揮させるパフォーマンスにより、まさに「全員主人公」なグループである点が目を引く。NiziUが「全員主人公」なグループたるゆえんには、彼女たち自身の輝きはもちろんのこと、日本だけでなくK-POPシーンの特性が取り入れられたグローバルグループであることが大きく関わっているように考えられる。


 K-POPシーンでは、日本のように“センター”制度が一般的ではないのに対し、“リードボーカル”や“メインボーカル”、“メインダンサー”、そして“リードラッパー”“メインラッパー”といったポジションが設けられている。NiziUにおいては、(リーダーのMAKO以外)メンバーのポジションが公式的に発表こそされていないものの、各自のパフォーマンスにおける長所にフォーカスを当てることでポジションを定義するK-POPならではの視点により、楽曲やその振付そのものが各メンバーにスポットライトを当てるような構成となっているのだ。


 例えばデビュー曲「Step and a step」サビでは、MAKOが同楽曲のポイントとなるステップの振り付けをパワフルに印象付けながら“一歩ずつ踏み出すこと”の大切さをポジティブに伝えているが、ここではオーディション番組『Nizi Project』において、エネルギッシュさと誠実さが同時に表れる「I’ll be back」(2PM)のパフォーマンスで見る者を圧倒した彼女ならではの魅力が表れているように思う。


 また最新曲「Take a picture」の落ちサビにおいて、たおやかな身のこなしとしっとりとした歌声が視聴者の心に深く染み入るようなMIIHIのパートは、同じく『Nizi Project』における「Nobody(Rainstone remix)」(Wonder Girls)のパフォーマンスを想起させる。


 またNiziU楽曲では必要不可欠となっているラップパートでは、“NiziUのラップライン”と呼ばれるRIMAとMAYUKAがそれぞれフィーチャーされ、二人の異なる輝きを放つ個性が楽曲に強烈なインパクトを与えている(※1)。


 さらに、NiziU楽曲の振付におけるフォーメーション移動も、NiziUが「全員主人公」なグループであることを裏付ける要素となっている。


 “縄跳びダンス”(「Make you happy」)や“うさぎダンス”(「Step and a step」)など、バイラル化した振り付けも多いことから、NiziUのダンス=真似しやすくキャッチーというイメージがついつい先行してしまうのだが、それだけでなく、容易には真似しがたい複雑なフォーメーション変化も彼女たちのパフォーマンスにおける魅力となっている。


 例えば最新曲「Take a picture」のDance Performance Videoでは、目まぐるしく変化していくフォーメーションの中で各メンバーが次々とセンターに立ち、それを周りのメンバーが華やかに囲む。このダイナミックな構成により、全員の“見せ場”が全体像として設けられることで、彼女たちが「全員主人公」として見る者の心に強く印象付けられるのだろう。


 また『Nizi Project』中から各自の得意分野のみならず、自らのさらなる才能の開花に対して果敢に取り組んできた9人だけに、「全員主人公」たる彼女たちそれぞれの強みは多彩なものとなり、グループをよりいっそう輝かせていくことと思う。今後のNiziUが遂げる進化は、これからも私たちの胸を大いに高鳴らせてくれると同時に、アイドルシーン全体にも影響を与えていくだろう。


※1:https://realsound.jp/2021/02/post-713529.html(菅原史稀)