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家賃を滞納する迷惑な妹、姉は「連帯保証人をやめたい」と悲鳴…認められる?

2021年05月22日 09:11  弁護士ドットコム

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賃貸契約の連帯保証人をやめたい——。弁護士ドットコムにはこんな相談が複数寄せられています。


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ある女性(35)は、シングルマザーの妹(30)の賃貸契約の連帯保証人をしています。すでに2カ月の滞納があり、女性が支払いました。



連絡をしても繋がらないため、保証会社や大家からは「どうにかできないか」と頼まれています。しかし、妹は女性の連絡も無視している始末で、今後も改善する見込みはないようです。



現在婚約中の相談者は、結婚後仕事を辞める予定のため、今後収入がなくなります。「これまでのように家賃滞納を支払うことが出来ません」とどうにかして連帯保証人を辞められないか相談しています。



果たしてこうした場合、連帯保証人を辞めることはできるのでしょうか。田中伸顕弁護士に聞きました。



●解説のポイント

・保証人は原則として、延滞賃料などを支払う義務を負う ・事情変更により、連帯保証人を辞めることができる場合がある ・保証契約の解約を速やかに申し出るのが得策



●原則、保証人である以上責任を負う

結論から言うと、今回のケースでは、事情変更を理由として連帯保証人を辞めることができる余地があると考えられます。



賃貸契約における保証契約とは、借主の賃料などを支払う義務を担保する契約です。保証契約を締結した者を保証人と呼びます。



保証人である以上、原則として貸主が滞納した賃料などについて、支払う義務を負います。



●保証契約を解約できる場合も

ですが、保証人を辞めることが全くできない訳ではありません。次のようなケースでは、事情変更を理由に、保証契約を解約する権利が発生することがあります。




保証契約締結後に相当の期間が経過し、かつ、借主が継続して賃料の支払いを遅らせ、将来においても誠実に賃料を支払う見込みがないにもかかわらず、貸主が契約解除等をしなかった場合(大審院昭和8年4月6日判決)。







保証契約締結後、7年4カ月も経過し、40カ月分の賃料の支払いがないまま、貸主と借主の間で紛争が続き、もはや早期解決の見込みもなく、延滞賃料がますます膨大となり借主だけでなく保証人の財産にも仮差押えがされるようになったところ、このような事態は保証人が当初予見できなかった事情であった場合(大阪地裁昭和39年6月29日判決)




したがって、今回のケースでは、
・相談者の方は既に2カ月分の滞納賃料を支払っていること、
・借主と連絡を取ることができず、今後、賃料が支払われる見込みがないこと、
・数カ月以上賃料が支払われていないこと、
・それにもかかわらず大家が賃貸契約の解除などをしていないこと
を指摘し、保証契約の解約をすることができるのではないかと考えられます。



●貸主の請求が認められない場合も

貸主が明渡しなどをできるにもかかわらず、このような手続をせずに多額の損害金を発生させたケースについて、保証人に対する請求は認められないとした裁判例もあります(東京地裁昭和51年7月16日、東京高裁平成25年4月24日)。



そのため、今回のケースで、大家が妹さんとの賃貸契約を解除せずにそのまま放置し、滞納した賃料が多額になってから、連帯保証人である相談者にその滞納賃料を請求してきたとします。



その場合、相談者は、信義則を理由に請求が認められないと主張して対処する方法が考えられます。



今回のケースのように、保証人が過去に滞納賃料を支払い、また借主において誠実な態度が見られないような場合は、保証人は身を守るために、保証契約の解約を速やかに申し出るのが得策と言えるでしょう。




【取材協力弁護士】
田中 伸顕(たなか・のぶあき)弁護士
秋田弁護士会所属。交通事故、離婚、債務整理から、インターネット上の誹謗中傷まで扱う。「住む地域にかかわらず、悩みを解決できるようにしたいです。事件には、大きいも小さいもないと考えています。そのため、どのようなご相談・事件についても一所懸命、全力で取り組みたいと思いますので、お気軽にご相談ください」
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