2021年05月22日 09:11 弁護士ドットコム
10時間働いて、10分の休みが3回しかなく困っている——。職場の休憩時間に関する相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者は現在フリーターで、居酒屋でアルバイトをしています。週に6日ほど出勤し、14時から24時まで働いています。しかし、10時間の労働時間の中で、休憩時間は「10分休みが3回あるかないか程度」だと言います。
10分休みの中に賄いを食べる時間も含まれていますが、食事は仕事をしながらしゃがんで食べています。スタッフの休める場所もなく休憩している気にはなりませんが、店長からは「これが正しい」と説明されました。
果たしてこんな休憩ルールは本当に正しいのでしょうか。島田直行弁護士に聞きました。
——「10分休みが3回あるかないか程度」というのはひどい状況だと思いますが、法的にはどうなのでしょうか。
相談者の労働環境が事実であれば、労働基準監督署あるいは弁護士に相談に行くべきです。とくに問題になるのが休憩時間についてです。
休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間です。労働基準法は、労働時間が8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中で与えなければならないとしています。
今回のケースでは、休憩時間を分割して付与していることは問題ないものの、1時間を超える休憩時間を付与していないことが問題になります。
——相談者はその10分間についても「休憩している気にはならない」とこぼしています。
今回のケースでは、10分間の休みが労基法の定める休憩時間に該当しない可能性もあります。
裁判例では、飲食店において客の途切れた時間に適宜休憩しても良いとされていた事案について、来客に対応しなければならないのであれば待機時間であり労働時間に該当すると判断したものがあります。
今回のケースにおいても10分間の休みとされていても、来客対応や電話対応を指示されていたのであれば、労働から離れておらず労働時間に該当することになります。つまり使用者としては、仮に社員が食事をとっていたとしても待機時間として賃金を支払う必要があります。
店長は違法な状態を「正しい」と誤解しています。間違った自信は、ときに誰かを傷つけます。「あたりまえ」という自分の感覚を再考することが良好な職場環境を実現するために必要です。
【取材協力弁護士】
島田 直行(しまだ・なおゆき)弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)
事務所名:島田法律事務所
事務所URL:https://www.shimada-law.com/