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アニメ話題沸騰『灼熱のカバディ』の魅力 スポーツを離れた少年が再び闘志を燃やすまで

2021年05月21日 17:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『灼熱のカバディ』スポーツ少年が再び闘志を燃やすまで

 マンガアプリ「マンガワン」で2015年から連載がスタートした『灼熱カバディ』。現在、アニメもオンエア中の注目作品だ。


 主人公は能京高校に通う1年生、宵越竜哉。かつてはサッカー選手として「不倒の宵越」と呼ばれ、スター選手のひとりだった。しかし、高校に上がってからはサッカー部からの勧誘もはねのけ、スポーツとは無縁の生活を送っていた。楽しみと言えば、動画配信サイトで生放送主として活動すること。


関連:【画像】日本代表レベルの強さの部長と宵越竜哉


 そんなある日、宵越を訪ねてきたのは同じ1年生の畦道相馬。彼の目的は、「宵越をカバディ部」に入部させることだった。「カバディ」というマイナースポーツを扱ったこの作品が支持を集めるのは一体なぜなのか。


■そもそもカバディとは


 カバディの特徴のひとつは、競技中、攻撃者が「カバディ、カバディ……」と言い続けなければならないこと。これは知っている人も多いはずだ。ただ、ルールはどれだけの人が知っているだろうか。


 試合時間は前後半それぞれ20分。チーム人数は7名。守備と攻撃を繰り返しながら、点数が多いほうが勝利、というゲームだ。攻撃側はチームからひとりレイダー(攻撃者)を選び、守備側のコートに入る。守備側の7人にタッチし、自分のコートに戻ってこられればタッチした人数の分だけ点数になる。


 鬼ごっこみたいなものかと一瞬想像するが、点数が入るのを阻止するために、守備側はレイダーの手足や胴体を掴み、自分のコートに戻るのを防ぐことができれば守備側に点数が入る。瞬発力、体力、広い視野、筋力など、多くのメジャースポーツと同じようにトップ選手になると様々な能力が必要となる。最初はカバディを馬鹿にしていた宵越もその奥深さに魅了されていくようになる。


■強者が負けた時、勝たなければならなくなる


 サッカーをしていたときはトップレベルの選手として活躍していた宵越。しかし、カバディでは初心者であり、素人である。とは言え、身体能力に優れているので、飲み込みは早いし強くなるために何が必要なのかということを貪欲に突き詰めていく。


 おまけにプライドも高くて負けるのも嫌い。カバディ部の同級生はもちろんのこと、先輩にだって負けたくない。勝ちたいと思えば強くなるしかなく、強くなるためには競技にのめり込んでいかなければならない。


 宵越が所属する能京高校のカバディ部は強くはないが、部長は日本代表レベルの強さを持っている選手だ。そのため、次第にチームの力も底上げされていくことになる。


■チームで戦う楽しさを知ったとき


 宵越がサッカーを辞めた理由。それはチームメイトとの不仲だった。それでもまたチームプレーが必要となるスポーツをやることになる。最初はワンマンプレーが目立っていたが、カバディを通して、コミュニケーションをとり“チームメイトが必要だ”ということも学んでいく。それはきっと、自分が弱いと認めることができたからだろう。強くなるためにはチームとして力を発揮しなければならない。


 サッカーをしているときから、それに気づけていればよかったと思うが、一度弱さを知らなければ、大切なものに気づけなかったはずだ。しかも、今まで自分が「得意」としていたサッカーでは弱さを認めることも簡単ではなかったのではないか。ひとりのスポーツマンの挫折から始まった物語。そしてそんな選手がマイナースポーツを始めたことで挫折を乗り越え、しかも競技にも注目が集まるようになる。そんなスポーツのきらめきも描いているのかもしれない。


(文=ふくだりょうこ)