女性活躍推進が叫ばれて久しいが、日本は諸外国と比較してリーダー層の女性割合が低い。先進的な事業を展開する企業であっても経営陣は男性ばかり、というケースも珍しくない。
そうした中、リクルートホールディングスが2030年度までに監査役を含む取締役の女性比率を約50%にすると発表した。5月17日の取締役会で決議したもので、リリースでは、
「経営の透明性と健全性を向上し、経営の意思決定の質を上げるために、監査役を含む取締役会構成員の多様性を高めます。スキルや経験、バックグラウンドの多様性を高めることに加えて、特にジェンダーについては目標を定めて取組みます」
と背景を説明している。
「むしろリクルートでも目標にしなければならないほど、女性に社会的制約」
女性比率をめぐっては、グループ全体についても上級管理職・管理職・従業員の比率を30年度までに約50%にしていく。4月1日時点の女性比率は上級管理職で10.0%、管理職で41.5%、従業員で51.5%。同HDの取締役および監査役については、女性は20%しかいない。
女性もバリバリ働いている印象があるリクルートであっても、経営陣は男性が中心。一応、少しは女性がいるので他の伝統的な日本の大企業と比べればまし、といったところだろうか。
リクルートOBの人材コンサルタント、曽和利光氏(人材研究所)は今回の同社の目標設定について「率直には普通だと思いました」と印象を語る。
「(同HDの)採用時には女性比率は女性の方がやや多いくらいですし、採用された女性社員がその後の成果も出しているので」
と理由を説明する。一方、
「むしろリクルートでも目標にしなければならないほど、女性がビジネスに頑張れない社会的な制約条件があるんだなと思いました」
と女性が活躍しづらい社会的欠陥に驚いたようだ。
また、女性比率を上げる企業方針については「半数というのが珍しいだけで、15%とか20%とかなら、もういろいろな企業で取り組んでいると思います」と話し、
「今後は(女性比率を上げる企業が)もっと増えると思います」
と推測した。
同HDはこのほか、環境面で30年度までにグループの事業活動を含むバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルを目指すなどと発表している。
同HDの広報担当者は、キャリコネニュースの取材に次のように語った。
「多様性を何より大事にする企業として更に取組みを加速するため、特に世界共通の課題であるジェンダー平等については目標を設定し、従業員と社会に対して約束をさせていただきました。また、人材関連事業を行う企業としてジェンダー・パリティを目指すことにより、世界のジェンダー不平等の解消に少しでも貢献していきたいと考えています」
これらの目標については「いずれもとても高い目標だと考えていますが、年齢や性別、国籍等に拘らない大胆な任用を行うなどして、達成に向けて取り組んでまいります」と語り、具体的な目標数字と時間軸を設定したことは「健全なプレッシャー」と表現していた。