2021年05月20日 10:01 弁護士ドットコム
誰にでも起こりうる介護問題。中には、義父母の介護を引き受けなければならない立場の人もいるようです。
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弁護士ドットコムには「義父の介護について夫側の親族を訴えたい」と考えている昌美さん(仮名・42)から相談が寄せられました。なんと義父の介護を一人でしているというのです。
義父は現在、末期ガンを患っていて、脳に転移もしてしており、余命わずかと医師から告げられています。ただ、義父も含めて夫側の一族は全員ワガママで、一度も「ありがとう」と言われないまま介護が終わろうとしています。
振り返れば、人を見下し頑固な義父は、医師の指示にも従いませんでした。
「がんが治る」とうたう薬事法違反の健康食品を買ったり、親戚が売りつけてきた「がんが治る」器具を購入したりして、大金を使っていたのです。そのくせ、病院での治療は拒否することもあり、医師や看護師にも散々、迷惑をかけてきました。
トラブルを起こすたびに病院側から説明を求められ、私が謝る日々…。
当の本人はとても見栄っ張りなので、なぜかすべて「嫁が進めたから」と嘘をついて全て私のせいにしてきました。介護をしているのが私だけだからです。
夫についても訴えたいと思っています。
夫はとにかく無関心、口だけは立派で一切協力しません。義父の介護も「(私が)やりたがりの性格だから勝手にやっている」と言いますし、私がつらくて怒ったり泣いたりしても「PMS(月経前症候群)の症状だから」という暴言を平気で吐きます。
私は最初は困っている人を助ける気持ちと、嫁として当然のことと思い、何を言われても我慢して介護をしてきました。
しかし、義父の死が近づき相続の話が出れば出るほど、何もしなかった夫やその兄弟姉妹が大口を叩いてくるようになってきたのです。そしたら、自分のしてきたことの虚しさが一気に爆発してしまいました。
何もやらず口だけ出し、挙句の果てには嘘までついて人のせいにしてきた人たちに、自分たちのしてきたことを分かってほしいと思っています。
私は夫や親族に対して、慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。そして、これまでの献身的な介護をしてきた私は、相続を受けられないのでしょうか。弁護士さんに尋ねてみることにしました。
「夫や夫の親族の女性に対する言動が不法行為と認められる場合、慰謝料が認められる可能性はあります。
ただし、夫婦関係が離婚に至っていない点や精神的苦痛についての慰謝料がそもそも認められにくい点を考慮すると、実際上のハードルはかなり高いと言えるでしょう」
渡邉優弁護士はそう解説します。慰謝料が難しいのであれば、せめて相続は?
渡邉弁護士によると、かつてはお世話をした方が相続人でない場合、その人には直接金銭は支払われませんでしたが、民法の改正によって遺産分割に当たって考慮される可能性があるとのことです。
この特別寄与料が認められる条件として、以下の4点が必要です。
では、特別寄与料は、どのくらいの金額になるのでしょうか?
ただし、特別寄与料は、協議が整わない場合、請求する親族が相続開始を知った6カ月以内、または相続開始のときから1年以内に、家庭裁判所に調停・審判の申立てをする必要があるため、注意が必要です。
弁護士さんと相談し、私が介護を担ってきたことを証明できるように、これまでつけていた介護日誌や領収書の整理を始めました。また、病院の付き添いや買い出しに行くときに夫に報告していたメッセージも保存しておきました。来たるべき時にきちんと請求できるよう、準備をしておきたいと思います。
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【取材協力弁護士】
渡邉 優(わたなべ・ゆう)弁護士
交通事故・債務整理・相続・企業の法律問題、不動産に関わる問題に特化した法律事務所
事務所名:弁護士法人よつば総合法律事務所
事務所URL:https://yotsubalegal.com/