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乗るなら今? 外車デビューに最適な5台を徹底比較 第6回 “外車デビュー”には新車のコンパクトハッチが最適! その理由とは

2021年05月20日 07:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
「そろそろ外車デビューを」と目論んでいる“アナタ”に向け、5台の欧州車をピックアップして試乗を続けた本企画。いきなり結論から申し上げよう。それは、どのメーカーでもいいけれども、とにかくコンパクトハッチバックの新車を買うのがイチバン! というものだ。

○小さなボディに詰め込まれた各社のノウハウ

サイズ的に最小となるAセグメントやBセグメントの小型ハッチバックモデルは、狭い街中でバンパーをぶつけながら(?)路上駐車することが多い欧州のユーザーには最も人気の高いジャンルだ。普段使いの“アシ”グルマとして活躍するだけでなく、長いバカンスには小さなボディに人と荷物を満載し(これがまた楽しい)、高速走行しながらロングドライブを敢行してもきちんと走り続けられるよう、エンジンや足回り、シートなどのいたるところに、各メーカーが蓄積してきた技術やノウハウがふんだんに詰め込まれている。

実際、1993年に筆者が外車デビューした新車のフォルクスワーゲン(VW)「ゴルフⅢ」について振り返ってみると、全長4,020mm、全幅1,695mm、全高1,420mmのコンパクトな4ドアハッチバックボディに、たった115PSの2.0リッター自然吸気エンジンという組み合わせながら、特にロングドライブでの活躍がすごかった。

筆者の故郷は岡山で、夏休みや正月などには家族を乗せて東京から帰省することが多かったのだが、国産車では片道約650km、8時間~10時間のドライブは結構、きついものがあった。それがゴルフⅢに乗り換えてからは、普通のファブリックのシートでありながら、クルマを降りても疲れを全く感じないようになったし、逆に、長い道中にあちこちの観光地を尋ねるのが楽しみになったものだ。

リアラゲッジは、1週間分の家族の荷物を積み込むだけの容量が十分にあったけれども、行程の途中にある琵琶湖で毎年キャンプをするようになってからは、ルーフボックスにキャンプ道具を積み込み、リアにはサイクルキャリアを取り付けて2台の自転車まで積載して移動することが常になった。膨大な荷物をコンパクトなボディにどうやったら積み込めるか、そのための道具をいろいろと探すのも楽しかった。

ゴルフⅢは4年ほど乗ったある日に4速ATが故障し、どうしようかと思っていたところ、担当のディーラー氏が走行距離の少ない同じゴルフⅢのハイパワー版「VR-6」(174PSの2.8リッターV6エンジン搭載モデル)を見つけてくれて(今考えると、広報車落ちだったのかも?)、あまりの走りのよさを味わってしまった結果、乗り換えることに。エクストラコストはそれなりにかかったが、新車で買っておくと担当ディーラーもアフターサービスをきちんとやってくれるので、安心して乗り続けることができるのだ。

というわけで、コンパクトハッチの新車をオススメしたいのだが、ここからは今回の特集で試乗した5台を振り返ってみたい。
○見ても走っても楽しいプジョー「208」

プジョー「208」は評判通りのいいクルマだ。試乗したのは量販モデルの「アリュール」(262.9万円)。ボディサイズは全長4,095mm、全幅1,745mm、全高1,445mm、ホイールベースは2,540mm、車重は1,160キロである。搭載するパワートレインは最高出力100PS、最大トルク205Nmの1.2リッター3気筒エンジンにアイシン・エィ・ダブリュ製の8速ATを組み合わせる。

エクステリアは「ライオン」をモチーフとする各部が特徴的で、一見してプジョー車であることがわかる。フロントグリルのサイドには、牙のようなデザインの縦型デイタイムランニングライトを装着。テールライトは3本のカギ爪をモチーフにしている。試乗車のボディカラーは明るい辛子色のような「ファロ・イエロー」で、208にぴったり。眺めているだけでウキウキしてくる。

一方のインテリアでは、上下が平らな超小径のステアリングホイールと、リムの上側にメータークラスターを設置した「3D i-コックピット」が目を引く。エントリーモデルらしからぬ未来感があって、アピール度が高い。リアシート周りは上下左右に不満が出ないぎりぎりのサイズ感で、ラゲッジ容量は265L。このあたりを重視するならSUVの「2008」をどうぞ、という割り切ったレイアウトをとる。

走りについては、小径ステアリングの切れ味と鼻先が向きを変えるタイミングがマッチしていて、ちょっとした交差点を曲がるだけでも楽しくなる。コーナリングスピードはそれほど速くないけれども、エントリーモデルとしては十分。8速ATは高速で真価を発揮しそうだ。見た目も走りも楽しいプジョー208は、今回紹介した5台の中では1番の出来栄えかもしれない。

○ルパンファンに捧げる1台? フィアット「500」

フィアット「500」(チンクエチェント)は、『ルパン三世』でお馴染みのイタリア産コンパクトモデルだ。彼の愛車が全長3m以内という超コンパクトボディのリアに空冷500cc2気筒エンジンを搭載する後輪駆動モデルであったのに対し、新型は全長3,570mm、全幅1,625mm、全高1,515mmと少し大きくなり、フロントにエンジンを搭載して前輪を駆動するFFモデルになっている。

ラインアップは「1.2Pop」(200万円)、「ツインエアPop」(241万円)、「ツインエアLounge」(276万円)の3つで、電動ソフトトップが付いた「500C」というシリーズもある。試乗したのは最高出力85PS/5,500rpm、最大トルク145Nm/1,900rpmを発生する875ccの直列2気筒インタークーラー付ターボ搭載の「500Cツインエアーラウンジ」(295万円)という豪華版だった。

エクステリアは丸い2ドアボディに丸目のヘッドライトとポジションライト、ベージュのソフトトップが絶妙の組み合わせで、ボディ同色のダッシュパネルやチェック柄のシート、丸いヘッドレストなどを備えたインテリアも相まって、文句なしにカワイイ。

低回転では「ポロロロ」という軽快な音と振動が伝わる0.9リッター2気筒の走りは、意外と楽しい。トランスミッションは「デュアルロジック」と呼ばれるシングルクラッチ式の2ペダル5速MTで、1速から2速に変速する際には「どっこらしょ」という感じで空走を伴うような変速のタイムラグが感じられる。そこが欠点といえばそうなのだが、クルマのキャラクターがそれを許してしまう。

石畳の道路が多いイタリアで鍛えられた足回りは、しっかりと路面を捉えて優秀だ。そして何より、周りにどんなクルマが走っていようと、これに乗っていれば見劣りすることはない。ルパンファンならずとも、今のうちに乗っておきたいクルマの筆頭に挙げられる1台だ。
○パリ仕立てのルノー最小モデル「トゥインゴ」

ルノーで最も小さなクルマ「トゥインゴ」は、リアゲートを備えた4ドアハッチバックモデルだ。車名の「Twingo」は「Twist」(ツイスト)、「Swing」(スイング)、「Tango」(タンゴ)という3つのダンススタイルを組み合わせた造語。ボディサイズは全長3,645mm、全幅1,650mm、全高1,545mmで、チンクエチェントに比べるとほんの少しだけ大きい。ユニークなのは、エンジンをボディ後部に搭載して後輪を駆動するRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用しているところだ。

グレードは73PS/6,250rpm、95Nm/4,000rpmを発生する1.0リッター直列3気筒エンジンに5速MTを組み合わせた「S」(181.5万円)、92PS/5,500rpm、135Nm/2,500rpmを発生する0.9L直列3気筒ターボエンジンに「EDC」と呼ばれる電子制御のデュアルクラッチ式6速ATを組み合わせた「EDC」(204.5万円)、それにキャンバストップのルーフを取り付けた「EDCキャンバストップ」(213.5万円)の3つがある。

試乗したのは、フランス伝統のお菓子をイメージした淡い水色「ブルードラジェ」のEDCキャンバストップ。「Cシェイプ」のフロントLEDデイタイムランニングライトとリアのLEDランプを備えた小さくて愛らしい姿や、黒いサイドプロテクターに描かれたトゥインゴのロゴやイラストなどが、パリの街並みに似合いそうだ。

インテリアは、椅子にこだわるフランス車らしくフロントに大型のハイバックシートを備えているのが嬉しい。ラゲッジ容量はミニマムな174L。床下に熱源であるエンジンを搭載しているので、冷たいものを乗せて長く走るのはやめておいた方がいいかもしれない。

走りについては、92PSの0.9Lエンジンでありながら、RRレイアウトのおかげで押し出されるような加速感が味わえるので悪くない。高速道路上でも、どっしりと落ち着いていて問題なしだ。200万円前後でこれが手に入るというのは、ちょっと嬉しいかも。
○速いぞ! ルノー「ルーテシア」

本国フランスでは「クリオ」の名前で販売されていて、欧州Bセグメントのベストセラーモデルになっているのがルノー「ルーテシア」だ。現行モデルはプラットフォームやエンジン、運転支援システムなどがルノー/日産自動車/三菱自動車工業のアライアンスによる共同開発。ボディサイズは全長4,075mm、全幅1,725mm、全高1,470mm、ホイールベースは2,585mmで、先代に比べ長さで20mm、幅で25mm小さくなり、ホイールベースも15mm短くなっている。プジョーの208と2008の関係と同様、もう少し大きなクルマが欲しければSUVのルノー「キャプチャー」をどうぞ、というわけだ。

グレードは「インテンス・テックパック」(276.9万円)、「インテンス」(256.9万円)、「ゼン」(236.9万円)の3つ。搭載する1.3L直列4気筒直噴ターボエンジンは強力で、最高出力131PS/5,000rpm、最大トルク240Nm/1,600rpmを発生する。3気筒の1.0Lや1.2Lを搭載するライバルに比べて、アドバンテージは大きい。トランスミッションは電子制御のデュアルクラッチ式7速で、パドルシフトを使用すればちょっとしたスポーツカー並みの走りが楽しめる。高速道路での静粛性も優れていて、全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付)も使いやすい。

エクステリアは、まつげのようなストライプを施したCシェイプのデイタイムランニングライトとLEDヘッドライト、ブラックのフロントグリル中央に輝くエンブレム「ロザンジュ」がルノー車であることを主張。インテリアも、ソフトパッドを多用していて高級感がある。ラゲッジルームは391Lと十分。欠点が少ない上に、特に走りにこだわる向きにはルーテシアを推したい。

○ドイツ車らしさ満載のVW「ポロ」

VWのエントリーモデルとしてのポジションを担うのが「ポロ」だ。現行型の発売は2018年。初代が世に出たのは1975年というから、現行の6代目までですでに46年の歴史がある。世界で累計1,400万台が売れているという人気車種だ。

5ナンバーサイズを踏襲してきたポロだが、現行モデルではついにボディが3ナンバー化した。VWのモジュラープラットフォーム「MQB」を採用したボディは全長4,060mm、全幅1,750mm、全高1,450mm。冒頭に紹介した筆者の外車デビューモデルであるゴルフⅢをも超えるサイズに成長している。

ラインアップは1.0リッター直列3気筒ターボを搭載する「TSIトレンドライン」(229.9万円)、「TSIコンフォートライン」(259.9万円)、「TSIハイライン」(284.9万円)の3つと、1.5リッター直列4気筒ターボの「TSI Rライン」(310.9万円)、2.0リッター直列4気筒ターボの最強モデル「ポロGTI」(369.9万円)がある。

試乗したのはTSIハイラインだった。エクステリアは低く長くて幅広く、兄貴分のゴルフに似た立派なボディだ。インテリアは横基調のデジタルコックピット、長時間乗っても疲れない硬い前後シート、351Lの大きなラゲッジルームが特徴になる。

極限までダウンサイジングした1.0リッター3気筒ターボは、最高出力95PS/5,000rpm、最大トルク175Nm/2,000~3,500rpmを発生。バランサーシャフトなしという設計にもかかわらずプルプルとよく回るので、1,160キロのボディを過不足なく加速させることができる。足回りがちょっと硬いのは、ポロだけでなくVW車、いや、ドイツ車全般が持つ特徴であり、高速道路に乗り入れてみれば、小型車らしからぬどっしりと落ち着いた走りによってその恩恵が十分に味わえる。紹介した5台の中では販売価格のレンジが少し上になるけれども、「外車=ドイツ車」的な考えを持つ御仁には間違いない選択になるだろう。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)