2021年05月19日 10:01 弁護士ドットコム
「自転車は車道が原則」ですが、車道ならどこを走ってよいわけではありません。
自転車が広い国道の中央分離帯付近を逆走している映像が5月11日、ツイッターで投稿されました。
映像では、ドライバーの自動車が片側3車線の真ん中の車線を走行中、女性の乗っている「ママチャリ」が前方から走ってきます。平然とした様子で逆走していますが、一番右側の車線を走行している自動車とぶつかるのではないかと危なっかしく思える場面です。
今回の逆走が交通ルールをはずれたものだということは、その危険度からして直感的に理解できそうですが、実際にはどのような違反となるのでしょうか。
自転車で車道を走る際は、自動車と同じように、対向車線を含めた道路の中央(中央分離帯が目印になる)から左側部分を通行しなければなりません(法17条4項)。
逆走しているということは道路中央の右側部分を通行していることになるので、「通行区分違反」となります。罰則は「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」です(法119条1項2号の2)。
なお、いわゆる「あおり運転」が社会問題となったことを受け、他の車両等の通行を妨害する目的で逆送した場合についても、2020年6月に罰則が新設されました。
妨害目的で逆走した場合には「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(法117条の2の2第11号イ)。さらに、その結果として高速道路で他の自動車を停止させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合には、「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります(法第117条の2第6号)。
誰かがケガすることなどは「あおり逆走」の要件とはなっていません。逆走して著しい交通の危険を生じさせた時点で成立します。
では、今回のケースのように片側に複数の車線があるような大通り(車両通行帯が設けられた道路)で、自転車専用通行帯がない場合、自転車はどこを走ればよいのでしょうか。ルールを確認してみましょう。
(1)一番左側の車線を走る
自転車は、片側二車線以上の道路では、一番左側の車線を走らなければなりません(車両通行帯、道交法20条1項)。なお、一車線しかない道路を走る場合とは異なり、左側端に寄って走る義務(法18条1項)はありません。
「車両通行帯違反」をした場合の罰則は、「5万円以下の罰金」です(法120条1項3号、2項)。うっかり違反した場合でも罰則の対象となります。
(2)一番左側の車線が「左折レーン」でも直進してOK
交差点の手前で一番左側の車線が左折レーンとなっている場合、自動車は左折しかできませんが、自転車にはそのルールが適用されません(指定通行区分、法35条1項)。左折レーンがある交差点を直進するときは、左折レーンを走ることになります。
(3)「バス専用レーン」も走ってOK
一番左側の車線がバス専用レーンとなっている場合でも、その規制から自転車は除外されています(道路標識、区画及び道路標示に関する命令別表第1(327の4)、別表第6(109の6))。したがって、バス専用レーンを走ることになります。
(4)自転車が自転車を追い越すときも右側の車線を通る
片側二車線以上の道路で、自転車で他の車両を追い越す場合は、一つ右側の車線を通る必要があります(法20条3項後段)。このルールは、自転車が自転車を追い越すときでも同様です。
片側二車線の大通りで、自転車で左側の車線を走る自転車を追い越すために、右側の車線にふくらんで通ろうとするのは危ないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、ルール上は正しい追い越し方法です。
なお、路上に停まっている自動車を避けるためや、道路工事をしている場合などやむを得ないときは、必要に応じて右側の車線を通ることはできます(法20条3項前段)。
「自転車は車道が原則」を示すものとして、車道の左側端に「自転車マーク」がついているのを見たことがあると思います。車道にあるものを「自転車ナビマーク」、交差点にあるものを「自転車ナビライン」といいます。
どちらも自転車が通行すべき部分や進行すべき方向を示すものですが、実は法令の定めのない表示(法定外表示)です。この表示自体は、車道を走る自転車は必ずこのマークの上を走らなければならないなどの新たな交通規制を課すものではありません。
片側二車線以上の道路で「自転車ナビマーク」があっても、一番左側の車線の真ん中を走っていても違反行為にはならないですし(前述(1))、前方の自転車を追い越す場合には、一つ右側の車線を通る必要があります(前述(4))。