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木村拓哉はやっぱり強い!? 「月9ドラマ」低視聴率ランキング&高視聴率TOP5

2021年05月17日 17:10  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

(左から)西内まりや、木村拓哉、長澤まさみ、篠原涼子

 一時期は、「この時間帯は街に人がいなくなる」とさえ言われたことも。そう、月曜日の午後9時。1987年4月に創設された、フジテレビの看板ドラマ放送枠です。とはいえ近年は、なんだかパワーダウンしているとの声も……。低視聴率の作品を改めて検証。ヒットの法則が見えてくる! かも!?

 刑事裁判官を主人公にする今クールのフジテレビ月9『イチケイのカラス』が、世帯視聴率初回13.9%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と好発進した。第2話こそ10.5%と落ち込んだものの、『流れ星』以来、11年ぶりに月9の主演を務める竹野内豊の話題性、原作が人気マンガという基盤を活かした安定感などもあり、同ドラマへの期待の声は大きい。

 しかし、'10年以降ドラマ視聴率が全体的に低迷する傾向は顕著で、月9ブランドも例に漏れない。かつては、「月曜9時になると街から人がいなくなる」とまでいわれた月9も遠くなりにけり。昨今は平均視聴率が10%を下回る作品も多く、'15年以降で平均視聴率15%を超える月9はなんとゼロ! それどころか、月9ワースト平均視聴率を調べると、そのほとんどが'15年以降の作品に集中しているだけに、好スタートを切った『イチケイのカラス』が、いつ“尻切れトンボ”ならぬ“尻切れカラス”になってもおかしくない……。

 だが、冬の時代はいつか終わりがくると思いたいもの。華やかなりし月9時代が再訪する可能性だってある。そこで本誌では、反面教師にすべき低迷した“反面月9”を振り返りつつ、「月9ドラマはほぼ見ている」と豪語する『OLヴィジュアル系』などのヒット作で知られる漫画家・かなつ久美さん、そしてドラマに一家言を持つドラァグクイーンのパッツィ・ウッチャリーノさんの分析&ツッコミを交えながら、月9復活には何が必要なのか──、勝手に考えます!

視聴率と内容は関係ないのでは?

 栄えある(!?)ワースト1位は、クラゲオタクの倉下月海(芳根京子)と女装男子の鯉淵蔵之介(瀬戸康史)のラブコメディーを描いた『海月姫』。原作マンガの累計発行部数は440万部を超え、'10年にはアニメ化、'14年には映画化も果たす人気作だったが、3匹目のドジョウはいなかった……。

 しかし、識者2人はそろって「ワーストになるような作品とは思えない」と振り返る。特に、女装にこだわりを持つウッチャリーノさんは、「瀬戸さんのメイク姿はとても美しいし、原作のファンも多い作品なのに、それでも月9という土俵では大苦戦するなんて。“原作の発行部数〇〇万部の大ヒット作”とか、そんなワードだけではドラマとして視聴率が稼げない時代なのね」と驚きを隠さない。たしかに、視聴率こそワーストだったが、SNSでは好評で、瀬戸康史ファンからの評価も高い。たまたまワーストになってしまっただけ──という不運なドラマといえるかも。

 続く、第2位にランクインした『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』は、一般主婦の佐藤智子(篠原涼子)が、市議会議員に立候補し、政治の世界を変えていくドラマ。月9ながら「政治」を扱う異色作として話題を集めたが、終わってみれば全話にわたり1ケタ台に止まり最低視聴率にいたっては4.6%という“民衆の敵”ではなく、“民衆が敵”になった超低迷月9だったが、ギャラクシー賞12月度月間賞を受賞するなど、野心にあふれた作品として評価も低くない。

視聴率=評価ではないことを証明した好例。先の『海月姫』もそうですが、視聴率はひとつの指標であることは間違いないけど、ドラマのよしあしを測るものさしにはならない

 と、かなつさんが断言するように、月9ワースト平均視聴率を見ると、「この作品がワーストに?」というドラマがチラホラある。その最たる例が、第7位の『コンフィデンスマンJP』だろう。視聴率こそ振るわなかったが、ダー子(長澤まさみ)・ボクちゃん(東出昌大)・リチャード(小日向文世)が、欲望にまみれた金の亡者や悪党たちから、あらゆる手段で金を騙し取る姿は人気を集め、映画にまで発展。国外からも注目を集め、韓国版『コンフィデンスマンKR』、中国版『コンフィデンスマンCN』の制作も決定しているほどだ。

“ザ・エンターテイメント”という感じでスッキリする。問答無用で面白いドラマだと思う」とかなつさんが太鼓判を押せば、ウッチャリーノさんも「見やすくて大好き。まさか低視聴率のほうにランクインしているなんて思わなかったわ」と、視聴率とドラマの中身が伴っていないことを指摘する。

大抜擢は失敗しやすい?

 一方、同率2位の『突然ですが、明日結婚します』は、「納得の低視聴率月9」と異口同音に言う。結婚し専業主婦になることを夢見る高梨あすか(西内まりや)と、恋愛のトラウマを抱えるイケメンアナウンサー・名波竜(山村隆太)とのラブストーリーを描く、マンガ原作のドラマ─なのだが、「山村隆太」の名を聞いて、「誰?」と思った人も多いはず。実は彼、人気ロックバンド「flumpool」のボーカルを担当するミュージシャン。俳優活動は現在まで片手で数えるほどしか経験していないため、ピンとこないのも当たり前だ。

 同ドラマは、事前に計画されていたドラマが暗礁に乗り上げ、急きょ制作されたことが制作発表で明かされた“いわくつき月9”。西内、山村のキャスティングもドタバタで決まるなど、見切り発車がそのまま低視聴に結びついた正真正銘の反面作品と言っていい。

西内まりやさんは被害者(笑)。当時の彼女は、10代からカリスマ的な人気があって、着実にステップアップしていた。もっとよい作品に巡り合えたら、彼女の現在は違っていたのでは」(かなつさん)

 このドラマの影響なのか、西内は事務所から独立し、しばらく表舞台からも遠ざかることに。月9は、タレント生命すら左右するのかも……。

 山村同様、大抜擢&低迷したのが、吃音症のヒロインの少女(新人の藤原さくら)と、元ミュージシャンで臨床心理士の主人公(福山雅治)のラブストーリー『ラヴソング』だ。

大抜擢なんだろうけど、ドラマをあまり見ない時代に主演クラスの大胆なキャスティングはデメリットのほうが大きいと思う」とかなつさんが気遣うように、“愛想のない子”に映ってしまった藤原には、視聴者から厳しい声も届いた。

ドラマファンとしては、主要キャストにある程度“ザ・俳優”みたいな柱があったほうが見てみようかなと思うんじゃないかしら。山村さんのようなミュージシャンを起用することで、楽しい化学反応も起きるとは思うんだけど、やはり主要キャストの存在は不可欠なんじゃないかな」(ウッチャリーノさん)

 '16年1月の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を皮切りに、続く『ラヴソング』、『好きな人がいること』、『カインとアベル』、『突然ですが、明日結婚します』、『貴族探偵』──6クール連続でワーストランキングに名を連ねるように、主演クラスを見ると、どこか物足りない感があるのもたしか。『好きな人がいること』は、夏の海でイケメンたちがヒロイン(桐谷美玲)を奪い合う月9の王道路線だったが惨憺たる結果に。2大スターが共演した反町×竹野内の『ビーチボーイズ』と比べるのは酷だけど、やっぱり小粒感は否めない……。

『貴族探偵』の後に始まった山下智久主演の『コード・ブルー』が、平均視聴率14.8%という高視聴率をたたき出したことを考えると、月9の勝利の方程式は物語×スターということも見えてくる。山Pは、患者のみならず暗黒期の月9をも救っていたことに!

月9の主役って、木村拓哉さんを筆頭にスターが務めていたイメージが強い。スターがいるから脇役にどんな人を配置するのか楽しみになる。その脇役が頭角を現して、違うドラマでさらにポジションを上げていく。そういうシステムが月9にはあったと思うけど、今はそれが機能していない」(かなつさん)

「月9」らしさが求められている

 そして、月9にはやはり華やかさが必要と付け加える。

「『極悪がんぼ』は意欲作だったと思うけど、世間の月9に対するイメージとかけ離れすぎ。“あえて”はわかるけど、ドラマを見ている人の多くが昔からのドラマファン。月9らしさは大事だと思う。かといって、スターを使い回すと福山さんの『ラヴソング』のように、年齢差が25歳以上あるけど大丈夫?ってなる(笑)」(かなつさん)

「この人だったら見たい」と思わせるような新しいスターが登場しないことも月9低迷の一因になっているとも。さらに、ウッチャリーノさんは、

そもそもテレビを見る人が減ったことも大きいと思う。テレビの前にじっとしていなくてもスマホから気軽にアクセスできる時代に、ドラマ1話分を集中して見るって、今の時代は難しい。でも、コロナでイエナカ時間が増えているから、家で楽しめる月9を新たに作るチャンスでもあると思うわ

 かつての月9といえば、ラブストーリーが定石。しかし、『好きな人がいること』が惨敗したように恋愛ドラマ自体が求められていないところもある。だからなのか、ここ近年は、医者、刑事、弁護士など職業ドラマが中心になった。

「かつての月9は、視聴者層がはっきりしていたからか、刺さるセリフが多かった。私もマンガを描く際に、セリフにはこだわるのですが、言葉に力があるドラマは面白い。『半沢直樹』も『鬼滅の刃』もセリフがいいから面白い。

 月9からは、たくさん名言が生まれたじゃないですか。言葉に力がある月9に戻れば、また視聴者も戻ってくる……と思いたい!」(かなつさん)

答えてくれたのは……



●かなつ久美さん●1990年、角川書店から漫画家デビュー。趣味は美容と保護犬ボランティア。LINE漫画で『OLヴィジュアル系』、kindleで『緋色』ほか、好評配信中♪ 最新刊は『もしボクにしっぽがなかったら』(みなみ出版刊 1500円+税)。



●パッツィ・ウッチャリーノさん●ドラマだけでなく、大相撲、深夜ラジオ、音楽、塩顔男子をこよなく愛する女装ウエイトレス。