isutaでは今週も、SUGARさんが贈る週間占いを配信。
2021年上半期の運勢も配信しているので、こちらもぜひチェックしてくださいね♡
2021年上半期の運勢 今週のおひつじ座の運勢illustration by ニシイズミユカ
山、川、わたし
今週のおひつじ座は、社会性のまといをそっと脱ぎ去っていくような星回り。
五月の富士山は七、八合目まで残雪を残しつつも、そのふもとには新緑の緑が広がっていきます。その対照的な景は絶妙ですが、「どこか隙ある人のごとくや五月富士」の作者・植松とし夫はそれを冬富士の厳しさに比べて、どこか放心したような安穏な印象を受けたのでしょう。
さながら、常日頃は一部の隙も見せない完璧な鉄仮面の如きひとが、温泉に入ったあと浴衣に着替えてくつろいでいるような、その横顔を垣間見たような心持ちになったのかも知れません。それで、つい気を惹かれて足を留めたり、目線がいったりしてしまう。案外、そういうところからご縁というのは始まったり、繋がったり、結ばれたりしていくもの。
なぜなら、そういう「ふと」や「なんとなく」とってしまう行為というのは誰からも強制された訳ではなく、純粋な出来心や浮気心によっているのですから。あなたもまた、ひょんなことからそうした“内発的”な行動に突き動かされていくことがあるかも知れません。
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些細な善行を可能にしてくれるもの
今週のおうし座は、ほんの些細な善行によって誰かを救ったり、また救われたりしていくような星回り。
ドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(原卓也訳)に登場する、聖なる好青年アリョーシャ。彼にとってひとりの神に等しかったゾシマ長老が亡くなり、しかもその身体から腐臭がし始めた(ただの人間に過ぎなかった)ことに打ちのめされ、やけっぱちになって堕落せんと、「ソドムの悪女」たるグルーシェニカのもとへ訪れるシーンで「一本の葱」という言葉が使われています。
彼女ははじめアリョーシャの膝にのって誘惑しようとするのですが、長老の死を知って、とっさにアリョーシャに同情して憐れんだのです。そのことに天地がひっくり返るくらいの衝撃を受け、「あなたは今、僕の魂をよみがえらせてくれたんです」と感激するアリョーシャに、彼女はこう返しました。
「あたしは一生を通じて、あとにも先にもその辺の葱を与えただけなの、あたしの善行はたったそれだけなのよ。だから、これからはあたしを褒めたりしないで」と。あなたも「その辺の葱」や差し出された葱を見逃さずに過ごしていきたいところです。
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蜥蜴か、人間か
今週のふたご座は、一度はすっかり死滅したと思っていた何かが蠢きはじめていくような星回り。
日本語では動物をまずカタカナで表記する慣習がありますが、「青蜥蜴岩盤すべるひゝきあり」(飯田蛇笏)がもし「青トカゲ」だったら、ここで取りあげることはなかったでしょう。「トカゲ」は身近でありふれた爬虫類ですが、これが「蜥蜴」となったとたん、一挙に面妖な雰囲気をまとってこちらを別の世界に紛れ込んだかのように錯覚させるのです。
「青蜥蜴」は尾が青緑色をしている蜥蜴の子で、ここでは愛すべき動物たちのお仲間としてではなく、ぱっくりと口を開けた不気味な深淵ととともに、今でも依然として地下深いところに生き続け、のたうっている怪物として登場しています。
そして、地の底から岩盤をつたって、いつの間にかすべり上がってきては、ヒタヒタヒタヒタと人間世界に暗い否定の影を投げかけてくるのです。あなたもまた、すっかり地表(日常)から姿を消したと思っていた影(一切の矛盾と一切の醜悪)を再び見出していくことでしょう。
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ささやかながら
今週のかに座は、おいしいものを食べるのだ。
美食や食通というと、つい糖尿病や短命のイメージがついてまわりますが、18世紀に生まれフランス料理を食べ尽くし、『美味礼賛』という食味文学の白眉を残したブリア=サヴァランは、70歳を超えて生きた当時にしては長寿の人。これは食味文学の傑作が書かれるには、料理そのものにも長い歴史が必要なのと同様、長生きをしなければならないということを暗に示しています。
そして、『味覚の生理学』という原題をもち、当時の科学知識を縦横に活用しつつも、どんな読者にもわかりやすい簡潔な名文で書かれた『美味礼賛』には、そうした真の食通となるための食味の心得が書かれています。
「グルマンディーズ(美食愛)とは、特に味覚を喜ばすものを情熱的に理知的にまた常習的に愛する心である。グルマンディーズは暴飲暴食の敵である。(中略)どういう角度から見ても、グルマンディーズというものは賞賛と奨励とに値する。」あなたもまた、そんなグルマンディーズを宿して肉体的、そして精神的な健康に邁進していくべし。
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わたしがわたしであるために
今週のしし座は、「さくらんぼ目をぱっちりと開けて食む」(小野あらた)という句のごとし。すなわち、かわいいは正義。
狙ってやっているにしろ、無意識でたまたまそうなっているにしろ、確かに「さくらんぼ」ってやつは、こんな風にして食べたくなるものだ。パフェか何かの上にのっている、世界にたったひとつのさくらんぼ。
その特別さっていうのは、自分が今いちばん好きな人であったり、宝物のようにたまに思い出しては反芻する思い出であったりのそれに似ている。
でも、そういう特別な何かをただ食べるだけではかわいくない。「目をぱっちりと開けて」という態度と、「食む」という俳句らしい表現がそろうことによって、一個の特別な作品になるのであって、そうやって特別な何かを大切にしていく感覚が愛おしくてたまらないんだろうな、この作者は。まあでも確かに。いいよね、そういうのって。
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早乙女と渦巻き
今週のおとめ座は、健全なおおらかさを取り戻そうとしていくような星回り。
1950年代に連載された「年よりたち」を一冊の本にまとめた民俗学者・宮本常一の『忘れられた日本人』には、共同体の大きな紐帯をなしていた女性の役割、特に彼女たちの世間話から笑い話が生まれてくる過程について述べられています。作物の生産と、人間の生殖を連想する風は昔からあったとのことですが、田植えの時の女たちの話にはそういうものが特に多かったそう。
宮本も「早乙女の中に若い女のいるときは話が初夜の事になる場合が多い」と書いており、重要なのは次の箇所。「そしてこうした話を通して男たちへの批判力を獲得したのである。エロ話の上手な女の多くが愛夫家であるのがおもしろい。女たちのエロばなしの明るい世界は女たちが幸福である事を意味している。(中略)女たちのはなしをきいていてエロ話がいけないのではなく、エロ話をゆがめている何ものかがいけないのだとしみじみ思うのである。」
あなたもまた、自分や周囲の人間が幸福でいられるために解除していくべき「ゆがみ」とは何だろうかということを、よく考えてみるといいでしょう。
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トランクから猫
今週のてんびん座は、“たましいの風通し”ということを気遣っていくような星回り。
「緑陰やトランク開けば市となる」(望月とし江)は、緑陰とトランクの取り合わせの妙が光る一句。「緑陰(りょくいん)」は夏の季語で、夏の日差しのもとよく繁った樹の陰のこと。そこで読書をしたり、昼寝をしたり、敷物を広げてちょっとした食事を誰かと共にするのも楽しい。
掲句の「緑陰」も、森や林の奥まったところにある静かな木陰というより、街角や公園で喧噪の隣りにあるような、ちょっとした木陰なのでしょう。「涼しさ」という感覚は、そういう場所でこそかえって際立つものです。そこでひとつのトランクが開かれることによって、緑陰はプライベートな領域として閉じられるのではなく、逆に市(マーケット)として道行く人へと開かれ、そこに南風が吹き抜けていく。
これはある種の逆説表現なのではないでしょうか。高温多湿や強烈な日差しなど夏の自然がもたらす脅威に対し、おのれを閉じて頑なに守とうとするのではなく、柔軟に開いて他者から観察ないし意見されやすい状況を作っていくことで、むしろ救われていく。あなたも、心の奥深くでほこりをかぶったトランクを思いがけず開いていくことになるかも知れません。
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理想像をめぐって
今週のさそり座は、過去に存在した誰かと同じ役割を果たしていこうとすること。
カール・マルクスは、1799年にナポレオン・ボナパルト(ナポレオン一世)が政府を倒した「ブリュメール18日のクーデター」と、甥のルイ・ボナパルトが1851年に議会に対するクーデターを起こして独裁体制を樹立し、翌年には「ナポレオン三世」と名乗るようになったことを対比しながら『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を書き上げ、そこで「革命」のもつ謎について次のように説明しました。
「人間は自分自身の歴史を作るが、自分が選んだ条件の下でそれを作るわけではない。彼(※ルイ・ボナパルトのこと)はそれを手近にある、所与の、過去から与えられた条件の下で作るのである。すべての死者たちの伝統は生者の頭上の悪夢のようにのしかかる。そして、ちょうど彼が自分自身と物事を改革し、それまで存在しなかったものを創造することに没頭している、まさしく革命的な危機の時代に、彼は不安げに過去の亡霊を呼び出しては、その名前や戦闘のスローガンをそこから借り受け、昔ながらの服装をまとい昔の言葉を使いながら、その新たな世界史の場面を演じているのである。」
注意深く読めば、読者はここでマルクスがルイ・ボナパルトを単なるバカと冷笑的に論じている訳ではなく、ある種の愛情さえ込めて取り扱っていることに気づくのではないでしょうか。あなたもまた、自分が何を演じているのかということ改めて思い知っていくことになるかも知れません。
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闇に投げ込まれる
今週のいて座は、「闇の深さ」を取り戻していこうとするような星回り。
「金亀子」と書いて「こがねむし(黄金虫)」と読む。「金亀子擲(なげう)つ闇の深さかな」(高浜虚子)は明治の終わりに詠まれた句ですが、その頃の日本家屋にはまだ網戸がなく、夕方になると灯りを慕ってさまざまな虫が飛び込んできたのだそうです。中でも黄金虫は手ごろな大きさで、捕まえるとどこかへ投げたくもなるもの。作者もふと手に取って、戸外に放り投げたのでしょう。すると、キラッと光ってすぐに闇のなかに吞み込まれていった。
黄金虫の光から、闇の深さへ一気に転換していくことで、闇がいっそう濃く深いものに感じられてくるはず。「光を飲みこむ闇」とは、はるか昔より人間世界を取り囲む未知の自然に投影されてきた伝統的なイメージですが、近代化していたるところに電気の灯りが届くようになって以降の社会では次第にその本来の威厳が失われつつあるものと言えます。
そして、自然への畏敬の念を抱く機会をすっかり失ったことで、気候変動などより深刻な危機をみずから招いてしまっている現代人は、いつしか黄金虫を戸外に投げる側から、闇に投げ込まれている黄金虫の側へと立場を移してしまったのではないでしょうか。あなたもまた、そうした畏敬の念を感じさせてくれるものとしかと向きあっていくべし。
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些細な記憶をめぐって
今週のやぎ座は、もはや失われてしまった過去を経由してはじめて現在と遭遇していくような星回り。
新しくてどこか懐かしい――。「発見」というのはいつだって、私たちにそんな感触を伴って与えられる。例えば、岸本佐知子は父の郷里「丹波篠山」の名を冠したエッセイの中で、「いがぐり頭の十歳くらいの男の子が外から走って帰ってきて、井戸端に直行」し、たらいの中で冷やしてあるキュウリを「一本つかんでポリポリうまそうにかじ」っており、外では蝉が鳴いているという記憶を、このところ頻繁に思い出すのだと書いている。
だが、その子どもとはおそらく自分の父であり、だからどう考えても理屈に合わない。そして、ときどき自分と妹をまちがえ、自分の名前さえ忘れてしまう現在の父に丹波の写真を見せても、ただ不思議そうに眺めるだけだという。父が子供の頃、井戸水で冷やしたキュウリが好きだったのか、確かめる機会を著者は永遠に失ってしまったのだ。それを受けて、彼女は次のように書いている。
「この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方がない。どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも、ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい」。あなたも、記憶の中にある光景が今まさに失われつつあることを遠く想像してみるといいでしょう。
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変わりつつあるわたしかな
今週のみずがめ座は、「するかされるか」ではなく「内か外か」を大切にしていくような星回り。
「酒煮(さかに)」とは、暑い時期になると貯蔵がきかなくなる酒に「火入れ」と称して初夏に熱を加える作業のこと。その日は「酒煮の祝い」といって、誰にでも酒が振る舞われたのだそうです。「酒を煮る家の女房ちよとほれた」(与謝蕪村)の主役は、そんな宴席に出ていった先の女将(おかみ)さんでしょう。もてなしに出てくれた彼女の立ち居振る舞いに、他人様の女房ながら「ちょと惚れた」。
この「ちよとほれた」というのはてまり唄の文句から借りてきたものらしく、おそらくこちらが先にあって、他の部分は後からついてきた句。というのも「ちょと惚れる」という行為は、自発的にしようと思ってできるものではなく、かといって強制されて同意することで可能になるものでもないからです。
つまり、それは“するかされるか”という問題ではなく、“その過程のさなかにあるか外にいるか”こそが問題で、掲句ができあがるのと前後して、作者はみずからの欲望によって突き動かされる自然ないきおいの過程にみずからがあることを悟ったのでは。あなたもまた、そんなふうにその中にあることで自分自身も変わっていく過程としての何らかの動詞に巻き込まれていくことになるかも知れません。
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現実を書き換える
今週のうお座は、時間のヒダを可視化していくこと。
地図はその図の広がりの上に、われわれを取り巻く空間の特性を克明に映し出してくれます。ただ、そうして地図を眺める私たちは、空間の広がりだけでなく、無意識のうちにそこに時間の広がりも読み取っているはず。例えば、直線距離ではそう遠くないのに、電車に乗っていこうとすると、乗り継ぎして行かなければならず遠く感じる場所がある一方、そんなに近くないはずなのに、アクセスのよさも相まって気付くとよく通っている場所もあったりする。
空間を移動し、時間を切り開く人の動きが、空間地図とは別の表情を見せる「時間線」ないし「心の距離線」をつむぎ、「時間地図」を誕生させていく。そして私たちは、異様に引き寄せられ接近してしまっている“お気に入り”の領域がある一方、意外なところに遠く取り残された孤島のごとき“不可視”の領域があることに気付かされる。
あなたにとっても、そうして普段の自分の行動や取捨選択がいかに多くのものを切り捨てながら成り立っているかを自省していくことがテーマとなっていくでしょう。
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