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『カードキャプターさくら』20年を経ても色褪せない魅力とは 革新的な設定を振り返る

2021年05月17日 09:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『CCさくら』20年を経ても色褪せない魅力

 1996年から2000年にかけて「なかよし」で連載された『カードキャプターさくら』。2020年10月時点でシリーズ累計発行部数は1700万部を突破しており、その人気は広く知られている。メディアミックスもさかんで、アニメ化のほかゲーム化もされた。また、2016年には連載開始20周年記念プロジェクトのひとつとして新作が公開、「クリアカード編」もスタートしている。


 時が経っても色褪せず、今もなお高い人気を集めている『カードキャプターさくら』。その魅力について改めて迫る。


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■小学生のさくらが奮闘!


 主人公の木之本桜は友枝小学校に通う小学4年生。父・藤隆と兄の桃矢と3人暮らしだが、あるとき藤隆の書庫で「本」を見つける。それは魔術師クロウ・リードが作った魔法のカード「クロウ・カード」が入っていたものだった。


 さくらが暮らす街にばらまかれたクロウ・カードは、封印が解かれるとこの世に災いが訪れる。その災いを防ぐために、さくらはクロウ・カードを集め始める。封印の獣ケルベロス、そして親友の大道寺知世、クロウの血縁である李小狼と共にさくらの奮闘が始まる。


 カードを集めなければ災いが起きると聞くと、世界滅亡だとか、多くの人に危害が加わるというのを想像するが、実はその災いは「クロウ・カードとクロウ・カードに関わった者すべてから一番大切な者の記憶が消える」というものだった。ケルベロスは人によっては大したことがない災いだというが、さくらにとっては由々しきことだ。土壇場でそのことを明かされたさくらは、力の限り戦う。


 「一番大切な人」の「記憶」が消えることが何よりに災いというのは、さくらの環境がそれだけ幸せだということだ。物語の中でも絶対的な悪者が登場しないのが特徴的。安心して観られる物語としての暖かさは作品の魅力のひとつではないだろうか。


■変身願望がたっぷりと満たされる


 さくらたちが通う小学校の制服もかわいいのだが、『カードキャプターさくら』の見どころのひとつと言えば、さくらがバトルの際に着ているコスチューム。これを作っているのが知世だ。毎回違うコスチュームだが、さくらに一番似合っているものだから、かわいくないわけがない。ヒロインが変身する漫画は多くあるが、手作りのコスチュームを着て出かけるという描写がリアルだ。自分もさくらになれてしまいそうな気持ちになる。


 大人になってから改めて見てみても、かわいくて仕方がないし、できることなら実際に手にとってみたい、という願望が沸き上がる。


 そして、どんなコスチュームを着こなしてしまうさくらもすごい。亡くなった母親がバイトでモデルをしていたという描写があるが、その才能が遺伝しているのかもしれない。


■ナチュラルに描かれる様々な「愛」の形


 作内では恋愛の矢印が向く方向が異性だとは限らない。知世はさくらのことを愛しているし、さくらと小狼は最初、同じ男性に片想いをする。そして、それを誰も咎めない。さすがに、小学生と担任の先生の恋は秘密にしているが、それもプラトニックな恋として描かれている。


 メインのキャラクターたちが小学生だから、先生に憧れ、好きになるのは少なくないことだし、年上に恋をすることも大いにあり得る。自分が異性を好きか同性を好きか、まだ曖昧な場合も多いだろう。


 『カードキャプターさくら』はその点すごく間口が広い作品で、キャラクターはもちろん、読んだ子どもたちの気持ちも否定せずフラットだ。当時としてはとても革新的な設定だったからこそ、現代でも違和感がない。これは何よりも長く読み続けられる大きな理由のひとつと言えるのではないだろうか。


(文=ふくだりょうこ)