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横浜「ヘビ脱走」の余波、賃貸住宅で「飼育が不可」 突然の規約変更…諦めるしかない?

2021年05月15日 08:21  弁護士ドットコム

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横浜市戸塚区のアパートでペットとして飼われていた巨大ヘビが逃げ出した問題で、影響を受けているのは近隣住民だけではないようだ。


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ツイッターで、今回の騒動を受けて規約が変更され、住んでいるアパートで飼育可能なペットの種類が減らされ、現在飼っている生き物が禁止対象に含まれてしまったという投稿が話題になった。







不動産屋からの連絡内容には、「横浜市戸塚区で大蛇の脱走がありました。その事を踏まえて」とあり、騒動の影響を感じさせるものとなっている。入居者は、次回更新時までに生体を手放すか退去しなくてはならないようだ。



●ボールニシキヘビを飼育する女性「戦々恐々としている」

「この流れには戦々恐々としている」と話すのは、会社員の女性(20代、千葉県在住)だ。現時点では規約変更などの連絡はないが、賃貸マンションで体長1メートルほどのボールニシキヘビを飼っており、他人事ではない。



女性の済むマンション規約では、「観賞用の小鳥、魚類等であって、明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物を飼育・持込み及び一時預かり」は禁止・制限される。



「飼育時に明確に許可を取ったりはしていなかったのですが、基本的にずっとケージに入れた状態で飼育すること、また毒などを持つものではないことから、『明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物』にあたる認識で飼育していました」(女性)



今回の騒動の影響で、危険度の高い動物でもしっかりとした管理体制で飼育している人や、そもそも危険度が高くない動物を飼育している人が飼育をあきらめざるを得ない状況になってしまうのは「とても残念」だという。



●規約変更と通知されても「応じる必要ない」

アパートを貸している側としては、同じような騒動が起こらないようにルールを変更したいのだろうが、飼育できる部屋として借りていた住人にとっては由々しき事態だ。



このような住環境を大きく変えるような規約変更は有効なのか。



清水俊弁護士は「基本的には従前の契約内容のまま変更できず、賃借人には一方的な不利益変更に応じる義務はありません。ペットを手放す必要も、住居を明け渡す必要もないと考えます」と話す。



「賃貸アパートでペットを飼えることが契約内容になっている場合には、賃貸借契約の不利益な変更が問題となります。各賃借人との間で契約変更についての合意が成立しない限り、基本的には従前の契約内容のまま変更できないと考えられます。



ペット規約等の変更に応じなければ契約更新しないと迫ってきた場合でも、必ずしも条件変更に応じなければならないわけでありません。条件変更の必要性や合理性、これまでの経過、立退料などを考慮し、正当事由が認められない限り、明け渡し(更新拒絶)ができないからです(借地借家法28条)。



条件変更に応じないことで正式な更新契約書を締結できなかったとしても、従前の契約内容(ただし賃貸借期間の定めのない契約となります)で更新されたものとみなされます(借地借家法26条1項)」(同)



話題になったツイッターのように、「次回更新時までに生体を手放すか退去する」ことを通知されるケースについては、「規約変更に同意していない場合、一方的な変更は無効だと考えます。ただ、黙認・追認したと受け取られないように、規約変更には同意できない旨の意思表示を明示しておくべきでしょう」(同)



なお、ツイッター投稿者のケースでは、当初のお知らせでは飼育禁止の対象が「人の生命に危害を加える恐れのある動物、猛禽類、鳩などの有害鳥獣」から、「爬虫類、両生類、有毒動物、猛禽類、特定動物、鳩などの有害鳥獣」に変更する内容だったという。



このようなケースでは「相談者のペットが従前の飼育禁止対象に該当したり、鳴き声などが近隣への迷惑行為にあたる場合などは別問題。ボールニシキヘビを飼っている女性については、そもそもボールニシキヘビが『観賞用の小鳥、魚類等であって、明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物』にあたるのかどうかが議論になり得る」と清水弁護士は指摘する。



●賃貸と分譲では事情が異なる

また、清水弁護士によれば、賃貸と分譲とでは事情が異なり、分譲の場合、「特定のペットの飼育を禁止するような規約変更に同意していなくても、従わなければならないことがある」という。



「分譲マンション(区分所有建物)の場合、1棟の建物や敷地を複数の区分所有者で共同管理するために『建物の区分所有等に関する法律』(区分所有法)が存在します。その中で共同管理するための共通のルールとして、『管理規約』が位置づけられています。



区分所有者およびその賃借人は、正式な手続で規定・変更された管理規約に従わなければならないため(区分所有法46条)、その点で賃貸物件とは異なるものと考えます。



区分所有法では、原則として、区分所有者および議決権のそれぞれ4分の3以上の多数による集会決議で規約変更できるとされている一方、『一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない』とされています(31条1項)。



ペットの飼育を禁止する規定を新たに設けた事例について、『犬の飼育があくまでペットとしてのものであって、自閉症の家族の治療上必要であるとか、犬が家族の生活にとって客観的に必要不可欠の存在であるなどの特段の事情がない』場合には『特別の影響を及ぼす』ものとはいえないとした裁判例があり、規約変更を否定するためのハードルは高いと言えます」(清水弁護士)




【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:http://www.yokogo.com/