2021年05月14日 10:51 弁護士ドットコム
覚醒剤の所持は確認できなかったのに、インターネットの掲示板に「シャブほしい人」などと書き込んだことが「広告」に当たるとして、男性が覚醒剤取締法違反(広告の制限)で書類送検されたと報じられた。
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所持や使用、販売などを理由とした覚醒剤事件はよくあるが、「広告の制限」は聞き慣れない。いったいどんな罪なのか?
報道(メ~テレ・5月12日配信)によれば、愛知県警は同日、覚醒剤を売るという内容の「広告」をネット掲示板に書き込んだとして、飲食店店員の男性(34)を、覚醒剤取締法違反(広告の制限)の疑いで書類送検した。
2020年10月、掲示板に「シャブほしい人」、「良いのありますよ、●グラム●円」などの書き込みをした疑いがあるという。
実際には覚醒剤を所持していなかったようで「うそにつられて反応した人をバカにして、ストレスを解消しよう」などと供述していることから、悪ふざけ目的の犯行だったとみられる。
同様の事件では、2012年、ネット掲示板に「アイス宅急便…お気軽に問い合わせください」などと覚醒剤の隠語を用いた広告を書き込んだとして、逮捕者が出ている。
どのような罪なのか。濵門俊也弁護士に聞いた。
ーー覚醒剤取締法違反における「広告の制限」とは、どのような罪でしょうか
覚醒剤取締法(20条の2)は、<覚醒剤に関する広告は、何人も、医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この条において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行つてはならない。>としています。
医薬関係者等を対象としない広告は規制され、違反すると、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金又は併科刑の罰則があります。大麻取締法や麻薬及び向精神薬取締法でも同様に広告を規制しています。
ーー今回のケースでは、広告をしても、実際に「売り物」の覚醒剤を所持していなかったようですが、それでも罪に問われてしまうのでしょうか
覚醒剤取締法20条の2が処罰している行為は『広告』ですから、実際に覚醒剤を所持しているかどうかは関係ありません。もちろん、罪に問われる可能性があります。
ーーどのようなものが広告とみなされるのでしょうか
覚醒剤取締法において、「広告」の定義はなされていません。
しかし、たとえば、日本インターネットプロバイダー協会などがつくる「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」では、次の2つの要件を満たす場合に、規制薬物の広告に該当する情報と判断できるとしています。
(1)規制薬物該当性 (2)広告該当性
このうち、(2)広告該当性については、規制薬物の販売等の営業活動に伴い顧客を引き寄せるために隠語含む薬物名、注射器等のサービス、値段及び取引方法等について、不特定多数に知らせるもので、医薬関係者等を対象としていないものとされています。
本件は2つの要件を満たしていると考えられるのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/