2021年05月14日 10:11 弁護士ドットコム
「会食しません」「旅行は控えます」「カラオケはしません」。緊急事態宣言が発令されている地域から通う学生に対して、三重大学がこんなチェック項目のある「誓約書」の提出を求めていたことに批判があがった。三重大学はすでに見直しを決めたが、どんな問題があったのだろうか。
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三重大学によると、誓約書は、大阪や兵庫県など、緊急事態宣言が発令されている地域から通う学生を対象としたもの。基本的には、オンライン授業となっているが、どうしても通学が必要な場合、確認したうえで提出することになっていたという。
誓約書には、(1)十分な感染予防対策を講じます、(2)会食しません、(3)学内では1人で食事します、(4)三重県内では、人数や時間を問わず会食しません(5)旅行は控えます、(6)カラオケはしません――などのチェック項目が設けられていた。
罰則はないが、これまで三重大学では、いわゆるクラスターが4度も発生していることから、本人だけでなく、ほかの学生や地域の方々に感染させるのはよくないという考えのもと、あらためて感染対策防止の徹底をはかるために提出をもとめていた。
朝日新聞によると、学内外から「学生の人権をどう考えているのか」といった批判の声があがった。こうした状況を受けて、三重大学は5月11日、この制度について見直すことにした。今後は、学生・教職員に「確認書」というかたちで周知徹底していくという。
三重大学の担当者は、弁護士ドットコムの取材に「賛否両論あったと思う。『誓約書』という言葉がよくなかったのかもしれない。(一方で)これまでの実情もあるので、感染防止にしっかりと取り組んでいかなければいけないという思いがあった」と話した。
はたして、今回のような誓約書はどんな問題があるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
「国立大学法人が運営する国立大学にせよ、学校法人が運営する私立大学にせよ、在校生(学生)に対して、一般的に管理する権限はあります。その中には、学生の行動に指示を出したり、行動規制したりする内容の権限も含まれるでしょう。
しかし、本来、大学とは学問の府であり、学生が学問をおさめる施設です。したがって学生に対する行動規制といっても、校内における学業従事活動に関する行動に対して規制するのが原則のはずです。
また、学外における私生活上の活動規制としても、学外で犯罪行為その他反社会的行為などに及べば学生の本分にもとるという趣旨から、相応の懲罰を与え得るといったような規制になるかと思われます」
「以上を前提として、今回の大学側の措置を考えてみましょう。
会食やカラオケなどのレジャーは、学外での私生活上の行動領域に関する事柄です。
たしかに、現在のコロナ禍は、未曾有のパンデミックです。特に変異株と認識されているウイルスは、若者であっても重症化するリスクが、従来型よりも高いという報道もあります。
たとえ、学外における私生活上の行動であってもその過程において感染すれば、それが発端となり、大学内でクラスターが発生したり、重症化する学生や教職員が出るおそれもあります。
ただし、緊急事態宣言が出されている都市部からの学生のみに誓約書を提出させていることについては、やはり問題提起されていいかもしれません。大学側がそれらの都市部からの学生だけに限定する趣旨はわかりますが、それでは宣言されている都市の学生ひいてはその都市部の住民に負のレッテルを貼ることにもなります。
また、それら都市部から以外の学生ならば、カラオケや会食を多人数、長時間しても問題はない、とは世間では捉えられてはいないでしょう。
やはりこのコロナ禍の状況下では、たとえ宣言が出ていない地域からの学生であっても、感染防止、まん延防止は要請されるべきことであり、そのために会食やカラオケ等は自粛されるべき、という考えも世間ではあります。
今回の大学側の措置は、できるだけ会食などを自粛させる学生の範囲を限定しようという思惑だったのかもしれませんが、それが逆に反感や批判をかったのかもしれませんね」