2021年05月13日 14:01 弁護士ドットコム
兵庫県神河町の山名宗悟町長(62)が、新型コロナウイルスワクチンの優先接種の対象となる「65歳以上の高齢者」でないにもかかわらず、ワクチン接種を受けていたことが明らかとなり、波紋を呼んでいる。
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神戸新聞などの報道によると、山名町長は、町内の公立病院の開設者で、病院内で開かれる会議に週1、2回程度参加している。「病院運営や町政運営に支障がでないようにする危機管理のためと、廃棄されるキャンセル分の有効活用のために受けた」と説明。初日に接種を受けたという。
新型コロナワクチン接種の対象や受ける際の接種順位については、厚生労働省がホームページで公表しているものによれば、(1)医療従事者等、(2) 高齢者(2021年度中に65歳に達する方)、(3)高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方、(4)それ以外の方、とされている。
神河町は5月6日から、65歳以上の高齢者を対象に、町内の公立病院などで集団接種を始めた段階だ。
現在62歳の山名町長が(2)に該当しないことは明らかだ。町内の公立病院の開設者であることや、病院内で開かれる会議に参加していることから、(1)医療従事者等に含まれるとして優先対象となったのだろうか。
厚生労働省健康局健康課予防接種室は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「公表している接種順位は全国的な原則として取り扱っている。恣意的な判断でこれを飛び越えることは基本的に認めていない。一般に、ありとあらゆる政治家の方を含め、役職などによって、決められた接種順位の特例に置かれることはない」と前置きした上で、次のように話した。
「医療従事者か否かについても、『医師』『看護師』という役職があるから該当すると判断されるわけではない。医療機関でコロナ患者に頻繁に接するか否かで判断されているので、病院開設者だからといって、ただちに医療従事者に該当するわけではない。接種対象なのかどうかは、実情を鑑みて、各自治体が判断している」
病院内で開かれる会議に週1、2回程度参加するような場合についても、「一般的には『医療従事者』に当たらない」という。
「病院の事務などバックヤードで勤務されている方や病院に出入りしている業者の方は、『医療従事者』に当たらないと各自治体に知らせている。
その整理からすると、コロナ患者と接する可能性が高いなどの事情でもない限り、単に病院内での会議に出席するというだけでは『医療従事者』に当たらないと考えられる」(厚労省予防接種室)
なお、「廃棄されるキャンセル分の有効活用」についても、「余剰分についても、すでに接種クーポンを受け取っている人の範囲内で接種してもらうのが原則」だという。
「流通の問題もあるので、余剰が出そうな場合には、ある程度柔軟な取り扱いをしてもかまわないことは各自治体に伝えている。もっとも、接種クーポンとともに接種費用を請求するという支払処理上の関係もあるので、接種クーポンを受け取っていない方が接種を受けるとなると、調整が大変だったりするので、受け取っている人の範囲内での接種をお願いしている」(厚労省予防接種室)
山名町長については、「個別のケースについて、自治体でどのように判断されたのかはわからない」としたうえで、「あらゆる事情に鑑みて、絶対にダメなケースかというとそうではないが、(報道内容などの限りでは)原則的なルールからは外れているのではないか」と話した。