デートではどんな店に連れていけばいいのか。度々議論になる問題だ。先日、人気ツイッターユーザーの「25歳すぎてそろそろデートのお店選びでカッコつけたい男子にオススメのお店。(表参道編)」という投稿が物議を醸した。
ツイートでは、環地中海料理で知られる「CICADA」など、表参道のおしゃれなレストランとカフェ3店が紹介された。しかし、ネット上では「全部大学2年生までには行ってる」など女性ユーザーと見られる人たちから冷めた声が挙がった。
これに対し、一部から「人様のお金で飲み食いするくせに文句言う人間は男女問わず救いようがない」など批判の声が寄せられちょっとしたバトルに。この"デートにCICADA"論争について、恋愛コンサルタントの鈴木リュウさんに話を聞いた。
「僕もCICADAによく行っていたのは2015~2018年ごろ」
CICADAについて鈴木さんは、「2010年代半ば、"インスタ映え"という言葉が生まれる前、SNSに美味しそうで綺麗なごはんを投稿する"SNS映え"が流行った時期に話題になったお店です。おしゃれなお店として、今でいう港区女子っぽい子が連れていかれて喜んでいました」と説明する。
「今が2015年なら、炎上することはなかったと思います。2018年ごろに恋愛工学が流行り、ナンパ師が増えました。その中でデートスポットの一つとして紹介されたのがCICADAやT.Y.HARBOR など"寺田倉庫系"といわれるタイソンズアンドカンパニー運営の飲食店です」
またほかに紹介されたのはフラワーアーティストのニコライ・バーグマン監修のカフェ「Nicolai Bergmann NOMU」と、隠れ家的フレンチレストランの「L'AS」だ。いずれも食べログのブックマークが3万9000件超え、7万3000件超と非常に多い(5月11日現在)。
かつては"知る人ぞ知るおしゃれなお店"だったが、3店とも今はかなりの知名度になっていることがうかがえる。当初は港区女子や流行感度の高い女子大学生・社会人などが多く来店していたが、人気になれば客層も変わっていくものだ。
「僕もCICADAによく行っていたのは2015~2018年ごろです。いま"おしゃれなお店"としてこの3店を紹介するのは、今更『タピオカ屋が儲かるらしいよ』というのと同じくらい古い話なんです」
あれから数年経ち、当時は唯一といっても過言ではなかったCICADAのようなヨーロピアン・コロニアルな雰囲気の店も、L'ASのようなこだわった盛り付けやペアリングをする店も、現在では増えている。
「『CICADAじゃなきゃ!』といった希少価値は減りました。その上で、かつてそれらの店に訪れたことがある"大人女子"から『10年前に行った』『今は逆にダサい』といった声が寄せられています」
「お店自体に悪いところはありませんし、美味しくて価格帯も高すぎず丁度いいお店」
女性たちがこうした声を挙げる心理を「今はもう人気店になってしまいましたが、こういったお店を知らない人も一定数いるので、『あなたは行ったことのない店だろうけど、自分は◯年前に行っている』とマウントを取りやすいんですよね」と解説する。
また、客単価は「CICADAとL'ASは夜で客単価8000円、ワインボトルを頼んで1万円ほど。Nicolai Bergmannはカフェなのでランチで2000円程度」になる。25~29歳男性の平均年収は約400万円なので、実際、25歳すぎの男性としては十分がんばっている価格帯といえる。
「いずれも女性の大多数である年収300万円ほどの事務職・派遣社員を口説く時に使う店です。何よりお店自体に悪いところはありませんし、美味しくて価格帯も高すぎず丁度いいお店です。しかし今回、本来ターゲット外の層に届いてしまったのが物議の種ですね」
恋愛・婚活市場は大きく分けて「奢る男性」「奢りたくない男性」「奢られたい女性」「割り勘でもいい女性」がいるという。本来「奢る男性」と「奢られたい女性」、「奢りたくない男性」と「割り勘でもいい女性」がマッチングするが、
「CICADA論争は『奢ってもらいたい女性』vs『奢りたくない男性』というねじれ構造になってしまったのが大きいですね。本来マッチングしないはずが、ネット上だとフィルタリングがないために交わってしまいました。電車社会の東京都23区民と車社会の田舎民で『車は必要か否か』という議論をしているようなもの。前提が違うので分かりあえないです」
という。その上で鈴木さんは「CICADAは海外リゾート風レストランですし今からの季節、テラス席が気持ちいいです。L'ASも品数が多く、ペアリングも楽しめます。ソースも凝っているので面白いですよ。どのお店も素敵ですが、数年前に行った人からすると何かを言わずにはいられないんでしょうね」と語っていた。