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YMOが好きですね。細野晴臣さんのラジオ(「Daisy Holiday!」)も熱心に聴いてます。いつも新鮮なことをやり続けているのはすごいと思いますね。 “イラスト道”を極めたい——今後やってみたいクライアントワークは? 服やスニーカーが好きなので、ファッションブランドとのコラボレーションをやってみたいですね。今回はatmosと組んだのですが、その流れで将来的にはNIKEと一緒にやれないかと思って、画策してます。スニーカーを描くのも好きで、そのために買ってますからね(笑)。ファッションでは、comme des garcons。川久保玲紗さんの反骨精神はすごいなと思います。comme des garconsは時期によって「●●期」と分類されることもあるんですが、それは後からファンが名前を付けただけで、ご本人は常にやりたいことをやっている。その姿勢もカッコいいですね。 ——4月28日から5月9日かけて個展「Cotoh Tsumi solo Exibition “q”」が開催されました。SNSでイラストを発信してきた古塔さんにとって、リアルな個展はどういう位置づけなんですか? 以前は「SNSで発表してるんだから、ここ(とスマートフォンを指す)がギャラリーでしょ」なんて言ってたんですが、最近は「それだけではないな」と感じています。今回の個展は原宿でしたが、どこで絵を見てもらうかはとても大事だし、ブランディングにも関わってくるのかなと。 ——リアルな絵としてアウトプットする手法は、今回で一区切りだとか。 デジタルで作成した作品をアウトプットする手法は限られているんですよ。基本的にインクジェットかシルクスクリーンしかなくて、そのなかでいろいろとアレンジしてきて。一通り試した感じもあるし、少し露出し過ぎているところもあるので、このタイミングで1回止めようとかな。作品を描きためる期間も必要ですし……まあ、半年くらいで戻ってくるかもしれませんが(笑)。次はどうなるかわかりませんけどね。NFT(非代替性トークンと呼ばれるブロックチェーン技術を使ったデジタル資産の一種)も注目されていますが、すべて手描きのアナログ作品を作るかもしれませんし。 ©︎古塔つみ——では、イラストレーターとしての現在の目標は? 純粋に上手な絵を描きたいですね。“イラスト道”ではないですけどーー私、じつは書道を本気でやっていた時期もあるのですがーー道を極めたいと思っています。 イラストは何かに使われることが本来ですが、それとは別に自身へ向けた作品を作っていきたいです。イラスト、マンガのなかにも、アートとそうでないものの線引きがあると思うんですよ。江口寿史先生の作品はポップアートだし、「Dr.スランプ アラレちゃん」もアートだと感じています。それは80年代、90年代初頭ブームのど真ん中のものであるからなんですが、その線引は徐々に後ろにずれていっていると思います。10年後には2000年ブーム、2010年ブームといった具合に。その線引の感覚は敏感にしていたいと思っています。 ■書籍情報著者:古塔つみ出版社:芸術新聞社定価:2,750円発売: 3月25日 つぶやきを見る " />
2021年05月12日 09:01 リアルサウンド
「あっ、女子しか描けません。すてきな人しか描けません。」をテーマに掲げる古塔つみ。2017年頃からInstagram、Twitterなどで作品を公開し、10~20代の女性を中心に支持を得ている気鋭のイラストレーターだ。江口寿史、大友克洋、鳥山明などの影響を感じさせながら、驚くほど幅広い絵柄によって、“女の子”の多彩な魅力を表現。ここ数年はCDのアートワークやMV制作、アパレル・ブランドとのコラボレーションも増加し、YOASOBIのキービジュアルを手がけたことも大きな話題を集めた。
初の作品集『赤盤』を発表し、個展「Cotoh Tsumi solo Exhibition “q”」(原宿・Anicoremix Gallery/4月28日~5月9日)を開催するなど、活動の幅を着実に広げている古塔に、これまでのキャリアとクリエイティブの源泉について聞いた。(森朋之)
——古塔さんは年齢、性別、顔を公表しておらず、どんな人なのかほとんどわからない状態になっています。情報を開示しないのはなぜですか?
アートを巡る日本の環境も理由の一つですね。最近、アート界にも学歴があることに気付いて。「芸大卒、女性、モデル」がいちばん強くて、フランスで活動したことがあれば最強スペック。そんなことに左右されるのはイヤだし、情報をオープンにすることで、恣意的に見られるのも良くないなと。純粋に絵を見てもらうためには、余計な情報はないほうがいいと思うんです。
——古塔さんは「女の子しか描かない」と公言していますが、その絵柄は驚くほど幅広い。一人のイラストレーターが描いたとは思えないほど多様ですが、いろいろなタッチの絵を描くことも、当初から目指してたんでしょうか?
そうですね。単純に飽き性ですし、いろいろな女性の表情を描きたいんですよね。女の子のイラストが上手い人に対する憧れもあるんですが、多くの場合、その作家が理想の顔を描いている印象があって。絵そのものよりも、スタイルを売っているというのかな。私はそういうタイプではないし、とにかく絵が上手くなりたいという欲求が強いんですよね。
——「好きな顔を描く」のは作家のエゴだと?
そうですね。エゴがあるとすれば様々な人の雰囲気を描き分けたいと思うことかなと思います。私自体が大きめの出力装置でありたい。なので「どの絵も古塔さんっぽいですね」という感想をもらうと悔しいし、「やばい! 劣化してる!」と思ってしまいます。あと、「わかりづらくしたい」という気持ちもありますね。似たような絵だけを描いたほうが、ステレオタイプでわかりやすいと思うんですが、私はそうではなく『新世紀エヴァンゲリオン』ではないですけど、簡単にわかってもらっては困るという気持ちがあるので。
——今回の個展「Cotoh Tsumi solo Exhibition “q”」のキャッチフレーズも、「表層のかわいいは理解できるが、私のことをわかってるというやつは嘘つきだ」ですからね。
他人のことなんて、同じ部屋で3年くらい暮らさないとわからないですから。勝手に人柄を決められるのは本当に嫌です(笑)。
——『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督の「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」という発言も波紋を広げましたが、「わかりやすさ」を求められる風潮に抗いたいという思いもありますか?
そうですね。新しい文化、若い世代の文化は本来、大人には理解できないものだし、それが正常な状態だと思うんです。最近は若い子たちの文化を大人が容易に理解してしまう傾向があるし、ちょっと寂しいですよね。ネット社会になり、すぐに答え合わせや確認作業ができてしまうのも一つの要因でしょう。新しい表現が出てきたとしても、すぐに「これは●●のモノマネ」ということになるので。
——なるほど。古塔さんのイラストレーターとしてのルーツというと?
いろいろありますが、江口寿史先生の影響はまちがいなくありますね。女の子の絵を描くこと自体、江口先生の影響だと思うので。その他にも鳥山明先生や大友克洋先生だったり。いちばん好きなのは、あだち充先生なんですけどね。作品でいうと『ラフ』。野球ではなくて、競泳のマンガなんですけど、線の柔らかさが素晴らしいので。
——あだち先生は意外でした。古塔さんは最初からイラストレーター志望だったんですか?
イラストレーターになろうと思っていたわけではないんですが、子どもの頃からとにかく絵を描くのが好きで。人に習ったこともあるんですけど、「自分の方が上手い」と思ってしまうような人間だったんですよ(笑)。まあ、調子に乗ってたんでしょうね。
——漫画家になりたいと思ったことは?
憧れはありましたけど、ストーリーを考えているうちに、どんどん破滅的になっていくんですよ。すぐに『風の谷のナウシカ」や『AKIRA』の世界観にいってしまうので、だったら1枚の絵で表現したほうがいいかなと。マンガの単行本の表紙を見て、「おもしろそう」と思うことがあるじゃないですか。表紙や扉絵になるクオリティに仕上げたいというか。
——作品集『赤盤』の判型や紙質も、マンガみたいな雰囲気ですよね。
それは出版社の策略ですね(笑)。一般的なイラスト集はもっと大きいんですけど、それだと書店で平積みしてもらえないので。私のフォロワーは若い世代が多いので、普通のマンガや本みたいに持ち歩いてほしいという狙いもあったみたいです。
——作風について、もう少し聞かせてください。古塔さんの描く女の子は笑顔よりも、強い視線、怒っているような表情が多い印象があります。
当然、表情は大事にしています。モデルは主にTwitterやInstagramで探しているんですが、強い意思を感じる子にお願いすることが多いですね。
——今は「古塔さんに自分のイラストを描いてほしい」という方も多いのでは?
そうですね、ありがたいことに。以前は自分で探して、DMを送るとか、twitterで募集したりしてました。
——男性からの依頼はないんですか?
「アイコンを描いてほしい」といった依頼はありますが、そういう場合も女の子を描いてます。(女性しか描かなないという)ルールのなかで遊んでいる感じと言いますか。どうしても描けない場合もありますけどね。建設機械の大手企業から「歴代のユニフォームを描いてほしい」という依頼があったのですが、それはお断りしました。
——その場合は男性を描かざるを得ないですからね……。クライアントからの仕事とご自分の作品では、やはりスタンスが違いますか?
もちろん。当たり前ですが、クライアントワークには目的や主題がありますし、自分の過去の作品のなかから、「こんな感じでお願いします」と言われることが多いので。そういう場合は自分の絵をマネして描いている感じなんですが、幸いなことに絵柄が広いので、そのぶんいろいろな仕事の依頼があって。そこは自分の強みなのかなと。
——「Bentham『DO NOT DISTURB』」「藤川千愛『愛はヘッドフォンから』」のアルバムのアートワークなど、音楽系の仕事も。YOASOBI「夜に駆ける」のキービジュアルも話題を集めました。
YOASOBIさんは最初、YouTuber系のアーティストだと思い込んでたんですよ(笑)。そういう依頼もよくあるし、わりとラフな打ち合わせだけで任せてもらえたので。後々、「そんなに大きなプロジェクトだったんだ?」と驚きました(笑)。YOASOBIさんとの仕事はわかりやすい名刺になったというか、キービジュアルで知ってくれた方も多いですね。音楽の仕事は以前からやりたかったので、嬉しいです。
——古塔さん自身はどんな音楽が好きなんですか?
最初はビートルズですね。作品集のタイトルが『赤盤』ですから。
——『赤盤』は、ビートルズのベストアルバム(The Beatles / 1962-1966))の愛称ですからね。
ええ。私がCDプレーヤを初めて買った時、これを聞けとばかりに母親がビートルズのCDを買ってきたんです。ドアーズやローリングストーンズのCDもあって、私もそういう音楽ばっかり聴いていたので。いちばん仕事したいアーティストは、ポール・マッカートニーですね! でも本当はレノン派です。
——日本の音楽は?
YMOが好きですね。細野晴臣さんのラジオ(「Daisy Holiday!」)も熱心に聴いてます。いつも新鮮なことをやり続けているのはすごいと思いますね。
——今後やってみたいクライアントワークは?
服やスニーカーが好きなので、ファッションブランドとのコラボレーションをやってみたいですね。今回はatmosと組んだのですが、その流れで将来的にはNIKEと一緒にやれないかと思って、画策してます。スニーカーを描くのも好きで、そのために買ってますからね(笑)。ファッションでは、comme des garcons。川久保玲紗さんの反骨精神はすごいなと思います。comme des garconsは時期によって「●●期」と分類されることもあるんですが、それは後からファンが名前を付けただけで、ご本人は常にやりたいことをやっている。その姿勢もカッコいいですね。
——4月28日から5月9日かけて個展「Cotoh Tsumi solo Exibition “q”」が開催されました。SNSでイラストを発信してきた古塔さんにとって、リアルな個展はどういう位置づけなんですか?
以前は「SNSで発表してるんだから、ここ(とスマートフォンを指す)がギャラリーでしょ」なんて言ってたんですが、最近は「それだけではないな」と感じています。今回の個展は原宿でしたが、どこで絵を見てもらうかはとても大事だし、ブランディングにも関わってくるのかなと。
——リアルな絵としてアウトプットする手法は、今回で一区切りだとか。
デジタルで作成した作品をアウトプットする手法は限られているんですよ。基本的にインクジェットかシルクスクリーンしかなくて、そのなかでいろいろとアレンジしてきて。一通り試した感じもあるし、少し露出し過ぎているところもあるので、このタイミングで1回止めようとかな。作品を描きためる期間も必要ですし……まあ、半年くらいで戻ってくるかもしれませんが(笑)。次はどうなるかわかりませんけどね。NFT(非代替性トークンと呼ばれるブロックチェーン技術を使ったデジタル資産の一種)も注目されていますが、すべて手描きのアナログ作品を作るかもしれませんし。
——では、イラストレーターとしての現在の目標は?
純粋に上手な絵を描きたいですね。“イラスト道”ではないですけどーー私、じつは書道を本気でやっていた時期もあるのですがーー道を極めたいと思っています。
イラストは何かに使われることが本来ですが、それとは別に自身へ向けた作品を作っていきたいです。イラスト、マンガのなかにも、アートとそうでないものの線引きがあると思うんですよ。江口寿史先生の作品はポップアートだし、「Dr.スランプ アラレちゃん」もアートだと感じています。それは80年代、90年代初頭ブームのど真ん中のものであるからなんですが、その線引は徐々に後ろにずれていっていると思います。10年後には2000年ブーム、2010年ブームといった具合に。その線引の感覚は敏感にしていたいと思っています。
■書籍情報
著者:古塔つみ
出版社:芸術新聞社
定価:2,750円
発売: 3月25日