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『チェンソーマン』作者も絶賛! 宇宙人と幽霊が共存するバトル漫画『ダンダダン』がスゴい

2021年05月07日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ダンダダン』/画像は担当編集の林士平さんTwitterより

 2021年4月6日、集英社が運営する漫画アプリ「少年ジャンプ+」で、世間を騒がせる驚異の新連載が開始した。その名も“巨弾オカルティック怪奇バトル”『ダンダダン』。本作は1話から3話連続で配信1週間以内に100万PV突破という、「ジャンプ+」初の快挙を成し遂げた。1話配信時点でTwitterのトレンド入りも果たし、注目作となった『ダンダダン』。本稿ではその魅力を考察してみたい。


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 「少年ジャンプ+」にて連載を開始し、次々と記録を塗り替えていく『ダンダダン』。物語の中心は、「幽霊の存在を信じない宇宙人マニアの少年」高倉健と「幽霊の存在は信じるも宇宙人の存在を否定する少女」綾瀬桃だ。お互いの意見がぶつかり合い、引くに引けなくなった2人は、(幽霊は)いないと証明するため少年は心霊スポットへ、少女は(宇宙人が)出ると噂の場所へそれぞれ赴く。


 幽霊なんているわけないと強がる少年の前に突如異様な雰囲気を醸しだす老婆が現れる。全速力で駆け出した少年は、逃げる最中にその老婆の正体が“ぬかれたら呪われるターボババア”であることを知る。しかし時すでに遅し。猛スピードで背後から追い抜く老婆に、少年はじっと見つめられていた……。


 一方その頃、綾瀬は、指定された廃屋で3人の宇宙人と相対している。まさかの事態に逃亡を図るも、捕まり拘束されてしまう綾瀬。宇宙人は綾瀬の体に危害を加えようとし、絶対絶命かに思われた綾瀬だったが、突如UFO内に化け物が現れ、宇宙人を倒していった。


 その化け物こそターボババアに呪われた、高倉である。霊媒師の祖母の教えで超能力に目覚めた綾瀬の活躍もあり、何とか窮地を脱した2人。しかしこの戦いは2人に待ち受ける、怪奇との交わりの序章に過ぎない。


 『チェンソーマン』作者の藤本タツキや、『地獄楽』作者の賀来ゆうじのもとで、メインアシスタントとして筆を執っていた龍幸伸。そんな彼が満を辞して連載に踏み切ったのが、『ダンダダン』だ。本作の魅力を語るうえでまず特筆すべきは、“爆発力とスピード感”だろう。読者に強烈なインパクトを残す爆発力、目まぐるしく展開が進むスピード感。


 そしてこの2つの魅力を生む原動力となっているのが、強烈な要素の連続だ。作中に登場する「心霊」「宇宙人」「超能力」というパワーワード。これらは1つ1つが単体でも充分に物語の核となり得るものである。特に「霊」と「宇宙人」の共演は珍しいうえに、本作では霊vs宇宙人の構図となる、ワクワクせずにはいられない場面も描かれている。


 また作中では上記した3つの超常的な設定に加え、主要人物2人の恋愛模様まで追っている。「霊に呪われた少年が超能力を扱う少女と共に宇宙人と戦い、恋をする」。このヘビーな要素をてんこ盛りにした設定が、驚異的な爆発力とスピード感を生んでいるのだ。


 設定のインパクト&ストーリーのスピード感は漫画において重要なファクターだが、これだけ強い要素が一緒くたになって展開されると、読者としては少々胃もたれしてしまう感も否めない。ではこの『ダンダダン』はなぜ胃もたれを感じさせず、最高のスタートダッシュを切れたのか。それは“作中の随所に散りばめられた軽さ”と“画力”によるところが大きいだろう。


 本作の魅力、それはすなわち“軽妙さ”だ。ターボババアと出会い、逃げながら「ただのエロいお婆ちゃんに遭遇しただけでした!」と口にする高倉。宇宙人を蹴り飛ばし自身の現在地を確認して「UFOだったんかい!!」と普通に驚く綾瀬。極め付けに綾瀬は超非常事態に陥ったにも関わらず、高倉が自身の好きな俳優と同姓同名だと知りトキめいている始末だ。


 この異様で絶望的な状況にもコミカルな反応を見せる2人の独特な雰囲気。それが重厚な作品に絶妙な軽妙さを加え、作品自体を読みやすくしている。


 そして一見詰め込み過ぎにも感じる内容にも関わらず、無理なくスッと読める仕上がりになっているのは、龍幸伸の画力の高さによるものだろう。賀来ゆうじは、彼を「僕の知りうる限り、総合的な画力が最も高い人」と評している。細かいタッチで微妙な遠近感まで再現し、迫力満点の情景を描き出す龍の画。この画力が本作の魅力をさらに底上げしているのは間違いないだろう。


 「少年ジャンプ+」に新しい風を巻き起こした『ダンダダン』。様々な工夫を凝らしたその攻撃的な作風は、漫画界に新たな可能性を提示しているようにも感じる。各所で話題となり、最高のスタートダッシュを決めた本作。物語はどのような方向に向かうのか、今後の展開に目が離せない。