2021年05月05日 09:51 弁護士ドットコム
金銭を要求し、拒否すると暴力や嫌がらせを行う夫と離婚したいという相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。相談を寄せた女性は現在、妊娠中です。
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相談者によれば、夫は金銭を要求し、相談者に拒否されるとテレビのボリュームを大音量にして流すなど嫌がらせをしてくるそうです。女性は「暴れると物にあたるのでとても怖く、家をめちゃくちゃにされるかもと思うと怖い」と恐怖を感じています。
そこで、新しい鍵をつけて夫を締め出した上で離婚したいと考えているようです。自宅は相談者名義で、ローンの残債もありません。このような場合、離婚に向けて夫を追い出すことができるのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
・名義は妻でも追い出せば、夫から損害賠償請求される可能性も
・モラハラで慰謝料請求が可能なことも
「夫からの金銭要求や物に当たるなどの行為があるということで、早く離婚したいお気持ち分かります。ただ、そのために今後、何が問題になり得るのか対処法を考えてみましょう。
自宅がご相談者名義とのことですが、婚姻期間中に購入し、夫婦で残ローンを支払ってきたのであれば、法的には夫との共有となり、離婚における財産分与の対象となります。
よって、夫にも居住権がありますし、夫を締め出すことで夫の生活や仕事に支障をきたすのであれば、夫から損害賠償請求される可能性もあります。
その一方で、夫に預貯金があり、夫が一人でも生活できる状態であれば悪意の遺棄には当たリません。離婚に不利になるとまでもいえません。
次に、夫が(テレビなどの)ボリュームを上げて嫌がらせをしたり物に当たるとのことですが、これが長年続いており、ご相談者が心身に不調をきたすほどであれば、離婚理由に当たり、慰謝料請求が可能なこともあります。
しかし、現在の日本の裁判所はモラルハラスメントによる離婚に積極的ではありません。可能であれば夫の言動を録音録画し、第三者(専門家である弁護士)に、悪質なモラハラかどうか相談してみるのが良いでしょう」
【取材協力弁護士】
光安 理絵(みつやす・りえ)弁護士
大阪大学法学部、同大学院法学研究科修了後、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)入社、本社法務本部配属。2003年司法試験合格、司法研修所を経て、東京地方検察庁、横浜地方検察庁において検察官として捜査・公判活動を行う。2007年に検察庁を退官し、仙台弁護士会に弁護士登録。現在、弁護士4名を擁するソレイユ総合法律事務所代表弁護士を務め、離婚事件、交通事故事件、刑事事件等を多数扱っている。
事務所名:ソレイユ総合法律事務所
事務所URL:http://www.sendai-soleil.net/