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『進撃の巨人』『BEASTARS』『のんのんびより』……2021年に最終巻を迎えた名作漫画を振り返る

2021年05月04日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『進撃の巨人』『BEASTARS』『のんのんびより』それぞれの第1巻表紙

 今年も気づけば5月に突入。春といえば出会いと別れの季節。惜しまれつつもエンディングを迎えた素晴らしい漫画を3つ紹介しよう。


■『BEASTARS』


 まず1つ目はアニメ放映でも高い人気を博した『BEASTARS』(板垣巴留)。2016年に週刊少年チャンピオンにて連載が開始され、完結したのは去年。2021年1月に最終巻となる22巻が発売された。人気絶頂の中で終わりを迎え、完結を惜しむファンの声が相次いだ。


 この作品は漫画好きなら誰しもが好きな(?)動物の擬人化が何よりの特徴。『けものフレンズ』が大ブームを巻き起こしたように、動物×人間は人の心を惹きつけるのかもしれない。


 ただしケモ耳ふわふわほんのりコメディ……ではないのがこの『BEASTARS』。擬人化でありながら萌えを狙った作品ではなく、草食獣と肉食獣との関係性を学園を舞台に描いた物語だ。“動物擬人化の学園モノ”で草食と肉食が共存しているという、今までに見たことのないシチュエーション。草食と肉食が同じ学び舎にいるともあると、その間で対立や確執がゼロなわけではない。様々ないざこざの中、主人公のハイイロオオカミ・レゴシはドワーフウサギのハルに恋してしまう。肉食と草食という禁忌とも呼ぶべき恋なのか、これは“本能”なのか――。


 癒しだけを求めて読むと大ヤケドするが、生きていく上での在り方や、“認め合う”ことが難しくなった時こそこの作品に触れて欲しい。レゴシを始めとした登場キャラクターが、我々の心に足りない“何か”を教えてくれるはずだ。


関連:【画像】『のんのんびより』『進撃の巨人』第1巻の表紙画像


■『のんのんびより』


 2つ目に紹介するのは『のんのんびより』(あっと)。タイトルから推測できる通り、脱力系ゆるっとコメディだ。月間コミックアライブより2009年より連載され、アニメ化が3回、劇場版も制作された根強い人気作だ。


 舞台は全校生徒がたった5人のド田舎! 東京からやってきた蛍と田舎に住む仲間たちの日常を描く、ハートフルなストーリーである。「田舎あるある」も作中に盛り込まれ、田舎暮らし経験者なら共感してしまうことうけあいだ。また経験がなくとも本作に影響され、地方へ引っ越す読者も一定数いたらしい。


 『のんのんびより』は常に明るくほがらか、多くの緑に囲まれた生活の素晴らしさを上手く描いており、読み進めていれば自然と「こんなのんびりとした暮らしもいいな」とつい憧れを抱いてしまう。


 せわしない毎日に疲れた時、目まぐるしい日々から少しだけ解放されたい時、実家が恋しくなった時こそ、本作を読むべき。可愛らしい学生の愛らしい暮らしを目にするだけで、全身の緊張がスルッと抜けていく。


 「にゃんぱすー」や「○○なのん!」といった独特の言い回しもあり、ちょうど良く“オタク心”を刺激してくれるのも嬉しいポイントだ。最終16巻は2021年3月に発売されため、ぜひこの機会に全巻読んでみてほしい。


■『進撃の巨人』


 そして最後に紹介するのは、多くの人に愛された『進撃の巨人』(諫山創)。2009年から別冊少年マガジンにて連載され、2021年4月に堂々の完結。たくさんのファンが最終回を見届けるべく本誌を購入したため、別マガ5月号は予想を上回る売れ行きになり、漫画誌としては異例の重版をする運びとなったのである。


 人類を捕食する巨人、そしてその運命に抗っていく人間の様を描いたストーリー。簡単に言えば巨人VS人間、置かれている状況は冒頭から絶望的。巨人からの侵略から身を守るために、人類は非常に狭い土地で暮らしているのだ。


 しかも人間は捕食される側、常に不利な状況ということ。その中で犠牲や代償、恐怖と戦いながら生き抜いていくのだ。それぞれのキャラクターが抱える過去、想いが読んでいく度に胸に突き刺さる。ありがちなテイストの物語ではないので、様々な作品を読み飽きた人にもオススメできるだろう。


 ただのバトルものではなく、巨人と対峙し、謎を解き明かしていく細やかな伏線が多数存在しているのもまた魅力的。ややグロテスクな描写も多いが、少年誌に慣れていない人でもつい読み進めてしまう面白さがある。


 エレンやアルミンを始めとしたキャラクター人気も高い。物語重視でも良し、キャラクター重視でも良し、多くの人が楽しめる漫画であることは間違いないはずだ。最終34巻は2021年6月9日発売予定なので、読んだことがない人は今のうちに触れておこう。


■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。


■書籍情報
『BEASTARS(1)』
板垣巴留 著
定価:499 円(税込)
出版社:秋田書店


『のんのんびより(1)』
あっと 著
定価:576円(税込)
出版社:KADOKAWA


『進撃の巨人(1)』
諫山創 著
定価:495円(税込)
出版社:講談社