2021年05月04日 09:01 弁護士ドットコム
「新潟県は何地方なのか?」。そんなテーマを記事で取り上げたところ、大きな反響がありました。その中に「どこの地方に属しているのかはっきりしないのは新潟県だけではない」との意見が複数寄せられていました。
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「地方がわからない」という声が目立っていたのは、「静岡県」「山梨県」「長野県」「三重県」の4県です。なかでも、静岡県と山梨県は「関東に含まれることがある」という意見が目を引きました。しかし、小学校では、どちらも「中部地方」と習います。
多くの人が「関東」と聞いて思い浮かべるのは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県の「1都6県」でしょう。一体、どこの「関東」に静岡県と山梨県が含まれているのでしょうか。
調べてみると、「関東」に「静岡県・山梨県」どちらも含まれているケースは意外とあるようです。
たとえば、全日本合唱連盟の関東支部は、6県と「静岡県・山梨県」、および新潟県を加えた9県で「関東合唱コンクール」を開催しています。
中学・高校ゴルフの関東大会については、さらに参加地域が増え、東京都・長野県も加わった1都10県で実施されています。なお、この1都10県は東京高裁の管轄地域と重なります。
省庁の出先機関も、名称に「関東」が含まれているところが複数あります。「静岡県・山梨県」にある経済産業局(経産省)・農政局(農水省)・地方環境事務所(環境省)はそれぞれ「関東」、地方防衛局(防衛省)は「南関東」で共通しています。
珍しい区分になっているのは、森林管理局(林野庁)です。「関東」森林管理局は、1都6県と「静岡県・山梨県」および新潟県に加え、福島県も含めた区域の国有林を管理しています。
静岡県最西端の「新所原駅」からもっとも離れた福島県の「新地駅」までの距離は、グーグルマップでのルート検索(徒歩)によれば、最短でも「581km」。これは「東京駅-姫路駅」間(同588km)とほぼ同じ距離ですから、森林管理局の「関東」は特に広いといえそうです。
もっとも、「静岡県・山梨県」のどちらかだけが「関東」に含まれているケースも少なくありません。
衆議院選挙における比例代表の選挙区について、静岡県は岐阜県・愛知県・三重県とともに「東海」、山梨県は神奈川県・千葉県とともに「南関東」に区分されています(公職選挙法13条、別表第2)。
気象庁は、気象情報で使用する地名について、静岡県を「東海地方」、山梨県を「関東甲信地方」としています。日本郵便も静岡県を「東海支社」、山梨県を「南関東支社」とするなど、山梨県だけを「関東」に含む扱いがなされています。
省庁の出先機関では、「静岡県・山梨県」のどちらも「関東」に含んでいるケースが複数ありましたが、「山梨県」だけを「関東」に含むケースも少なくありません。総合通信局(総務省)・運輸局(国土交通省)は静岡県を「中部」、山梨県を「関東」にしており、財務局(財務省)は静岡県を「東海」、山梨県を「関東」にしています。
全日本吹奏楽連盟の「関東」区分はユニークです。神奈川県・千葉県・茨城県・栃木県で構成される「東関東」と、新潟県・群馬県・埼玉県そして山梨県で構成される「西関東」に分かれています。なお、静岡県は「東海」です。
県内で「関東」に区分される地域とそうでない地域に分かれているケースもあります。
国土交通省の出先機関である地方整備局は、山梨県は「関東」、静岡県は基本的に「中部」としていますが、静岡県内の富士川流域については、「関東」地方整備局の富士川砂防事務所(山梨県甲府市)の管内です。
富士川は、電力の供給区域においても静岡県内の分かれ目となっており、富士川より東側の地域に電気を供給している大手事業者は1都6県と山梨県全域と同様に「東京電力」、富士川より西側の地域は「中部電力」です。
JRの区分も独特です。静岡県内にある熱海駅は、「関東」地方の路線をもつ「JR東日本」と「東海」地方の路線をもつ「JR東海」が共同で使用しており、東海道本線は東京駅から熱海駅までが「JR東日本」、熱海駅から米原駅(滋賀県米原市)までは「JR東海」の管轄です。
また、熱海駅から伊豆半島を南に下るように伊東駅まで走る伊東線は、その全域が静岡県内にありますが、「JR東日本」の路線です。熱海駅までの東海道本線および伊東線以外の静岡県内を走るJR線は、すべて「JR東海」の路線ですので、その違いが際立っています。
一方、山梨県内のJR線は、身延線を除き「JR東日本」の路線です。身延線も全長の約7割が山梨県にありますが(残りは静岡県内)、「JR東海」の路線となっています。
管轄が違う駅間では、JR各社の発行するICカードでエリアをまたごうとしても利用できず、清算が必要となる場合がありますので、JRの区分は日々の生活でも意識したことがある人も少なくないかもしれません。
小学校の教科書のように、「静岡県・山梨県」どちらも「中部地方」とする例もありますが、どちらの県にも「関東」の要素がちらほら見られることがわかりました。
特に山梨県については、その傾向が顕著です。東京圏だけでなく、名古屋圏にアクセスしやすい地域もある静岡県は「東海」に含まれることが少なくないこともありそうです。
では、当の静岡県と山梨県は、どのように考えているのでしょうか。
静岡県庁広報広聴課は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「『関東』に区分されたり、『東海』に区分されたりしているのが現状で、どこか決まった地方に属しているといった認識はありません」としたうえで、次のように回答しました。
「静岡県は東西に広く、県庁はほぼ中心に位置していますが、東部は関東に近いです。かつての駿河国、遠江国、伊豆国で構成されており、住んでいる場所によって文化や意識が異なるというのもあるかもしれません」
また、山梨県庁広報広聴課も、「法律で明確に定められていないので、どこの地方に属するのかはお答えできない」と回答しました。なお、課担当者個人の感覚としては、「『(関東)甲信越』が一番しっくりくるかな」とのことでした。