現在のF1は、予選からすでにレースに向けた戦いは始まっている、という典型的なレースだった。
日曜日のアルガルベ・サーキットは、爽やかな青空が広がり、路面は完全なドライコンディション。しかも、路面のミューが低いため、ピットストップ戦略は1ストップが最有力。さらにスタート時に装着するタイヤはメルセデス同様、ミディアムとなれば、スタートでメルセデスがミスしない限り、フロントロウからスタートする2台をパスするのは難しい状況だった。
果たして、スタートで2列目からスタートしたレッドブル・ホンダの2台はポジションを上げることはできなかった。逆に4番手からスタートしたセルジオ・ペレスがひとつポジションを落とし、レッドブル・ホンダがメルセデスと1対2の戦いになった時点で、勝負はほぼ決していたと言っていいだろう。
ただし、チャンスがなかったわけではない。レース序盤、先頭を走っていたのは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)と1点差でチャンピオンシップ争いをしているルイス・ハミルトン(メルセデス)ではなく、バルテリ・ボッタス(メルセデス)だったからだ。つまり、ふたつポジションを上げて優勝できなくても、ハミルトンを抜いて2位でフィニッシュすれば、フェルスタッペンはこのレースで選手権トップに立つ。
セーフティーカーラン明けの再スタートでフェルスタッペンがハミルトンをオーバーテイクしたまでは良かった。しかし、11周目に犯したわずかなミスで抜き返され、3番手へ後退。その後、ハミルトンがボッタスをかわして、トップにたったところで、フェルスタッペンがこのレースにおいて選手権でハミルトンを逆転する芽はなくなった。
それでも、接戦が予想されるタイトル争いで少しでも加点しておきたいフェルスタッペンとレッドブル・ホンダは、レース終盤にファステストラップを狙い、1点を獲りにいく決断を下す。チェッカーフラッグを受けた時点では成功したかに見えたフェルスタッペンだが、ターン14でのトラックリミット違反でチェッカーフラッグ後に取り消されてしまった。
今週末のフェルスタッペンは、予選とレースの最速タイムをトラックリミットで失った。またターン14では、予選でセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)にアタックを妨害され(審議にはならず)、レースでは自らのミスでハミルトンに逆転を許すきっかけを作った。
トラックリミットとターン14に泣いたフェルスタッペン。ただし、史上最強の王者と言われるハミルトンを倒してタイトルを獲得するためには、こうした小さなミスをいかになくすかが今後の課題となるということも忘れてはならない。