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「ヤンキー=ダサい」の価値観を覆す? 『東京卍リベンジャーズ』が描く、“かっこいい”の王道

2021年05月01日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 いつの時代も、不変の人気を得ている「ヤンキー漫画」。『湘南暴走族』、『魁!!男塾』、『ろくでなしBLUES』、『今日から俺は!!』、『カメレオン』、『クローズ』……人気ヤンキー漫画を挙げればきりがない。どちらかといえばヤンキー漫画は昭和、平成初期に多かった印象だが、令和3年にも人気を博している作品がある。『東京卍リベンジャーズ』(講談社)だ。


 同作は『新宿スワン』の和久井健氏による作品で、2017年から『週刊少年マガジン』にて連載されている。主人公は、底辺フリーターとして生活をしている花垣武道、26歳。そんな武道が、中学時代の彼女・橘日向と弟の直人が凶悪集団・東京卍會の抗争に巻き込まれ死亡してしまうのを阻止するため、12年前にタイムリープして奮闘していくというストーリーである。2021年4月からはアニメ化もされており、より幅広い層の注目を集めていきそうな作品だ。


 だが、『東京卍リベンジャーズ』が盛り上がっていくのに反比例して、現実世界では“ヤンキー”と呼ばれる若者たちはどんどん減ってきている。作中にも「今って不良がダセェって言われる時代だろ」というセリフも出てきている通り、リアルの世界では「不良=かっこいい」という価値観は少数派と言えるのではないだろうか。だが、一方で、ヤンキー漫画自体は根強い人気があるのはなぜなのだろうか。


ヤンキー漫画人気の理由

 人気の要素の1つとして挙げられるのは、「熱さ」だろう。ヤンキー漫画は基本、何かにつけてすぐに喧嘩をする。喧嘩シーンが大半を占める作品も少なくない。だが、その根底には「仲間」という存在があり、登場人物たちは友情のため、仲間を守るために拳を振るっているのだ。『東京卍リベンジャーズ』でも、武道が12年前の東京卍會に加わることになった根本的な理由は、中学時代の彼女とその弟を助けるためだ。タイムリープした12年前で数々の喧嘩をする時も、自分本位な理由ではなくほぼ全てが仲間のため。こうした熱さが読者の心を惹きつけ、「かっこいい」という感情に繋がっていくのではないだろうか。


 もう1つ、「ヒーローっぽさ」という要素も欠かせない。ヤンキー漫画の主人公は「弱い」か「最強」の二択だ。「弱い」主人公であれば、気持ちの強さと真っ直ぐさで成り上がっていき、「最強」であれば道理に反した相手を次々と倒していく。休む間もなく現れる敵や困難に立ち向かい、克服し、味方を増やしていく。構図は『ドラゴンボール』や『ワンピース』などのレジェンド少年漫画と同じである。そして、その作品の主人公は読者が憧れるヒーロー像そのものだ。もちろん、『東京卍リベンジャーズ』もそうだ。冴えないフリーターだった武道が12年前にタイムスリップし、己の信念だけで東京卍會の中で存在感を示していく。そして折れない心で敵を倒し、仲間にしていくという流れがある。しかも、1人ずつ敵を攻略していくというゲーム要素も感じられ、見ていて飽きることがないのも大きなポイントと言えるだろう。


『東京卍リベンジャーズ』3巻(講談社)

 さらに触れておきたいのが、「イイ女の存在」だ。主人公の彼女的ポジションで登場する女性キャラは、ヤンキー漫画に欠かせない。しかもその女性キャラは理解があり、勇敢な人物であることが多いのではないだろうか。まさに、女性から見ても憧れる人物像だ。『東京卍リベンジャーズ』で言えば、橘日向。武道を守るためなら東京卍會の総長・佐野万次郎に平手打ちをするなど、優しくも正義感がある強い女性として描かれている。そんな日向を守るために武道は試行錯誤しており、日向が魅力的だからこそ主人公の武道の心境にさらに強く共感できているのではないだろうか。


 また、『東京卍リベンジャーズ』は単なるヤンキー漫画なだけではなく「ヤンキー×タイムリープ」という新しいジャンルでもある。「今の記憶を持ったまま中学時代に戻れたら、無双できるのは……?」という誰しも一度は想像したことがあることが描かれていることで、没入感にも繋がっていると感じる。人気のヤンキー漫画が持つ要素、そして「×タイムリープ」という新しいセオリー、両方を併せ持つ『東京卍リベンジャーズ』がさらに盛り上がっていくことは間違いなさそうだ。