WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)GR010ハイブリッドで参戦するトヨタGAZOO Racingのチーム・ディレクター、ロブ・ロイペンは、4月26~27日にベルギーのスパ・フランコルシャンで行なわれた開幕前の公式テスト“プロローグ”において露わとなったハイパーカーカテゴリーのLMP2クラスに対するラップタイムの不足について、今週末に予定される開幕戦の前に「見直されるべき」と述べている。
ハイパーカークラスよりもラップタイムが遅くなるよう新たに設けられたパフォーマンスの制限があるにも関わらず、LMP2クラスのマシンは4つのテストセッションのうち3つでトップタイムをマークし、ハイパーカークラスにエントリーするトヨタとアルピーヌ・エンデュランス・チームを上回るパフォーマンスを見せた。
トヨタのリザーブドライバーでもあるニック・デ・フリースがドライブしたLMP2のGドライブ・レーシング26号車オレカ07・ギブソンは、2日間総合でトヨタよりも0.5秒速いベストラップを1周7kmのコースでマークしている。
ロイペンは、トヨタがふたつのプロトタイプクラスの中で遅いと思われるクラスに抜かれたことに対して、「少し驚いた」と述べ、5月1日土曜日に決勝が予定されている2021年シーズンの最初のラウンドの前に、WECのオーガニゼーションが状況を「検討する」ことへの希望を繰り返し述べている。
「もちろん、LMP2の速度には少し驚いている」とロイペンはSportscar365に対し語った。
「我々の方が少し速くあるべきだが、ここでの1周のラップでは、彼らが我々よりも速いことが判明した」
「おそらく長いスティントにおいては我々が優位に立つかもしれないが、これは我々が予期していた状況ではない。(テストで)何かが起こったのなら、プロローグの後(=開幕戦)に何が起こるかについて見極める必要がある。それが学習曲線というものだ」
「現時点では、我々はおおまかな範囲には入っていると思う」
「LMP2とハイパーカーとの間のバランスをパフォーマンスによって取ることについては、オーガニゼーション側の方が重要だ。我々がこれについてできることは、あまりない」
「1日で、いきなり1周あたり4~5秒速くすることはできない。BoPを用いたとしても、それを管理することはできない。私からすれば、我々がすべきことをオーガナイザーは注視しなければならないと思う」
「我々は、テスト中に学んだことに対し、よいペースで取り組んでいる」
■LMP2総合優勝の「チャンスはある」
トヨタは、シーズン前のテストプログラムの一部において、LMP2のマシンとトラックをシェアして走行する機会があったことが知られているが、それらのテストでLMP2がどんな仕様で走行していたかは不明だ。
2021年のLMP2マシンはもともと560hpに出力が抑制される予定だったが、ハイパーカークラスとの間にさらなるギャップを作るための一環として、4月に入ってからさらなるパワーダウンと重量の増加が決定された。
「(プライベートテストで)彼らがどんなタイムで走っているかを見ていたのは、彼らが(性能調整によって)どう扱われるかを気にしていたからだ」とロイペン。
「その情報に基づいて、我々はいくつかのタイムを把握した。アラゴンでは、彼らは少なくとも我々と同じようなペースだった」
「我々がテストで訪れたすべてのトラックに、LMP2マシンもテストに訪れていた。我々はそれらの情報を入手している。現在のところ、彼らが我々よりも前にいるのを目にするのは、良いものではない。私は、それが見直されるべきだと思う。我々はそれについて調べるが、(性能調整の判断を下すのは)我々ではない」
ロイペンは今週末のスパ6時間レースにおいて、LMP2クラスが総合優勝を飾ることを想像できるか、と尋ねられると、次のように述べた。
「現状のクルマと天候をベースに考えると、チャンスはある」
「それが純粋なペースに基づくものであれば、何かが間違っている。もし我々に信頼性の問題やドライバー・チームのミスがあって、その結果LMP2が勝利するのであれば問題はない」
「だが、これがトップカテゴリーであるのなら、我々はもっと速くあるべきだ。過去数年間に(このカテゴリーで)見られたものに基づくなら、それはコンマ1~3秒というレベルではなく、少なくとも3~4秒というレベルのものだ」
「もし我々がタイヤマネージメントによってロングランのみが良い、ということになったら、それ(オーガナイザーがハイパーカーの性能を上げること)はなされない。だが、我々がWECの最高峰カテゴリーであるとしたら、1周のラップタイムで彼ら(LMP2)を上回ることができるべきだ」
「我々がポールポジションを目指して彼らと戦うのであれば、私の観点からすると何かバランスが取れていないと感じる」