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勝田貴元、WRC初開催のクロアチアで2度のステージウイン「走るごとに余裕を持てた」

2021年04月26日 18:51  AUTOSPORT web

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勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第3戦クロアチア
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加し、2021年シーズンのWRC世界ラリー選手権全戦にトヨタ・ヤリスWRCで参戦している勝田貴元は、4月22日から25日にかけて行われた第3戦『クロアチア・ラリー』を自己最高位タイの総合6位でフィニッシュした。開幕戦から3戦連続でポイントを獲得した勝田はドライバー選手権7位につけている。

 東欧クロアチアの首都ザグレブを中心に開催されたクロアチア・ラリーは、今季初のフルターマック(舗装路)ラリー。勝田にとってターマックラリーは、初めてヤリスWRCをドライブした2019年8月のドイツラウンド以来の挑戦となった。

 なお、今イベントはWRC初開催のイベントとあって、勝田のライバルとなる最高峰クラスを戦うドライバーの誰もが未経験のラリーだ。そんなクロアチア・ラリーでは、ステージ内でも舗装状態が大きく変化し、スムーズな路面もあれば、荒れて崩れかけているところも点在。また、先行車がコーナーの路肩部分を走る“インカット”を行うことによって、出走順が後方の選手は泥や砂利が多く散らばった非常に滑りやすい路面を走行することになった。

 そのような状況下で金曜の競技初日を迎えた勝田/ダニエル・バリット組は、今季から供給されているピレリタイヤのターマック用タイヤの経験が充分でなかったことや、SS4でのオーバーシュート、SS6ではスピンを喫するなどのミスが重なり、約1分タイムを失いデイ1を総合9位で終えた。

 しかし翌日、勝田の走りは劇的に改善する。その裏には彼のドライビングコーチであり、選手が走る前にステージを走行して路面の情報を伝える“グラベルクルー(=ルートノートクルー)”を務めるユホ・ハンニネンと、そのコドライバーであるクレイグ・パリーの的確なアドバイスがあり、ドライビングとペースノートを改善したのだ。

 これによりペースアップに成功した勝田はロングステージのSS10で、昨シーズン最終戦モンツァの最終パワーステージ以来、自身2度目となるベストタイムを記録。さらにその再走ステージとなるSS14でもふたたびステージウインを飾り、世界トップクラスのラリードライバーたちに引けを取らないスピードを証明してみせた。

 同時にポジションも上げていった勝田は、ラリー最終日は安定してステージ5番手前後のタイムを刻み総合6番手に浮上。開幕戦モンテカルロ、第2戦アークティック・ラリー・フィランドに続き3戦連続で自己最高位タイのリザルトを残している。

■「全体を通じてアップ&ダウンが激しかったのは事実」と勝田貴元

「今回のタカ(勝田貴元)の戦いにはとても満足している」と語るのは、勝田のインストラクターを務めるハンニネンだ。

「ラリー前に新しいタイヤを履いて、ドライコンディションのターマックを走った経験があまりなかったこともあり、それがステージのタイムにも現れていた」

「路面のグリップが少し低いところではまだ少し躊躇し、あまり自信が持てないようだ。しかし、土曜日に路面のグリップが良くなると同じステージで2回ベストタイムを記録した。2回目の走行では路面に砂利が多く出ていたので、さらに難しかったと思う」

「次のターマックイベントとなるベルギーのイープル・ラリーは路面のグリップが低いステージが多く、コーナーのインカットによって路面にグラベルが多く出ると思うので、今回のクロアチアでの経験がイープルで活かされるはずだ」

 ラリーを振り返った勝田は「いくつかのステージは良いタイムで走ることができましたが、それ以外のステージのパフォーマンスにはあまり満足できませんでした」とコメント。

「全体を通じてアップ&ダウンが激しかったのは事実ですが、それも、より良いドライバーになるための学習の一部だと考えています」

 土曜日のSS10とSS14の2度、ステージベストタイムを記録したことについては「とても良かったと思う」と述べた勝田。

「とくに再走ステージでのベストタイムは、他のドライバーと同じような路面コンディションで出したタイムなので、なおさらです」

「(デイ2は)初日の金曜日と比べれば大きく進歩したと思いますが、それは経験を積んだからです。今回のラリーよりも前に、あのような道を走ったことがあまりなかったので、何が起きるかも分からず、(序盤は)自信を持つことができませんでした」

「しかし、ステージを重ねるごとに多くを学び、それが自信につながり余裕を持って走れるようになりました。とても良い週末になりましたし、グラベルクルーを務めてくれたユホとクレイグ、そしてチームのみんなに感謝します」

 3戦連続でポイントを獲得しドライバー選手権で7位につける勝田が挑む次戦第4戦は、5月20~23日に開催される『ラリー・ポルトガル』だ。ポルトガル北部で行われるこのイベントは今季最初に行われるグラベル(未舗装路)ラリーで、勝田は過去3度出場している。だが、いずれも下位クラスでのエントリーとなっており、ヤリスWRCでの参戦は初めてのチャレンジとなる。