優勝したセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組 2021年WRC第3戦クロアチア 4月25日、WRC世界ラリー選手権第3戦クロアチアの競技最終日となるデイ3が行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRTはSS17~20の戦いを経て、セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(トヨタ・ヤリスWRC)が2021年シーズン2度目の総合優勝を飾った。また、僚友のエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタ・ヤリスWRC)が総合2位となり、チームは開幕戦モンテカルロ以来、今季2度目のワン・ツー・フィニッシュを達成した。
SS17~20という4つのステージで争われた『クロアチア・ラリー』の最終日。トヨタはこのデイ3をオジエが総合首位、2番手エバンスのワン・ツーで迎えた。両ドライバー間のタイムギャップは6.9秒、総合3番手につけるライバルのティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)が10.4秒差で首位を追う展開だ。
逆転優勝を狙うエバンスは午前中に行われた、ふたつのステージでベストタイムを記録しSS18でチームメイトを逆転して総合首位に躍り出ることに成功する。
一方、首位を明け渡したオジエはSS17のスタート前に、リエゾン(移動区間)で一般車両と接触する事故に逢いクルマの右サイドと空力パーツにダメージを受けた“手負い”の状態でのラリーを強いられていた。
幸いにもロードセクションでの事故で怪我をした人がいなかったためオジエは競技を続行したが、ふたりのタイム差は最終ステージが始まる前の時点で3.9秒、オジエと総合3番手につけるライバルは4.1秒差という大接戦に。
迎えた14.09kmの最終SS20、ステージトップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられる“パワーステージ”となったこのSSで、エバンスよりも先にスタートしたオジエは、事故の影響を感じさせない懇親のアタックで暫定トップタイムをマーク。総合2位以上のポジションを確定させたうえで、チームメイトにプレッシャーをかける。
対するエバンスはオジエのタイムに対して若干遅れをとるものの、そのまま行けば逃げ切れるペースで走行する。しかし、フィニッシュ付近のコーナーでラインが膨らんだことでタイムを失い、オジエから4.5秒遅れのSS4番手タイムでのフィニッシュとなった。
この結果、エバンスはわずか0.6秒差で総合2位に後退。オジエが最終SSでの再逆転で開幕戦モンテカルロ以来となる今季2勝目を獲得した。なお、0.6秒というタイム差での決着はWRCの歴史において史上3番目の僅差となっている。
■「セブの最終ステージの走りは見事だった」とラトバラ代表
「まるでジェットコースターのように、感情が大きく揺れ動いた週末だった」と語るのは、劇的な勝利を収めたオジエ。
「今朝、あれだけのことが起きたので優勝できるとは思っていなかったが、皆さんが知っているように僕は決して諦めない男だし、最後まで戦い続けようとしたんだ」
敗れたエバンスは「総合2位で終わるというのは望んでいた結果ではない」とコメント。
「最後のステージでセブ(セバスチャン・オジエ)が本当に速かったのは事実だが、僕が最後のコーナーでミスをしてしまった。とても悔しいけど、決して悪くない結果だと思う」
チーム代表を務めるヤリ-マティ・ラトバラは優勝を争ったふたりと、彼らが持ち帰った結果を誇りに思うと語った。
「今日のように、選手たちが優勝をかけて戦っている状況で、ステージ上の出来事を追うのはとても緊張するし、興奮もする」とラトバラ。
「エルフィン(・エバンス)は最後のコーナーで少しだけはみ出し、結果的にそこで勝負が決まってしまったのはとても残念だが、彼もセブもプッシュしなくてはならなかったと思うし、セブの最終ステージの走りは見事だった」
「彼らの今週末の戦い、そして今回もワン・ツー・フィニッシュを飾りチームに素晴らしいリザルトをもたらしてくれたことを誇りに思う。とても満足しているよ」
シーズン第3戦を終えて、今戦の優勝に加えてパワーステージでのボーナス5ポイントを獲得したオジエは選手権リーダーへと返り咲いた。また、エバンスはランキング単独3位となった。
マニュファクチャラー選手権では、オジエとエバンスが2度目のワン・ツー・フィニッシュを果たしたことで、トヨタはランキング首位を守ることに成功。2位につけるヒュンダイとの差を27ポイントに広げている。
WRCの次戦第4戦は5月20~23日に行われる第4戦ポルトガルだ。ポルトガル北部のマトジニョスを中心に実施されるこのラリーは2年ぶりの開催となり、今季初のグラベル(未舗装路)ラリーとして行われる予定だ。