25日にセント・ピーターズバーグで行われたNTTインディカー・シリーズ第2戦決勝レースは、ポールポジションからスタートしたコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)が勝利を挙げた。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、予選15番手からポジションをアップし、6位でレースを終えている。
フロリダ州セント・ピーターズバーグの小さな空港の滑走路、一般道、野球場などのある公園内道路を利用したストリートコースで開催された2021年NTTインディーカー・シリーズの第2戦ファイアストン・グランプリ・オブ・セント・ピーターズバーグ。
ポールポジションからスタートしたコルトン・ハータが、ほぼ完璧な戦いぶりでトップを明け渡す不安を一切見せず、100周のレースの97周をリードして優勝した。先月末に21歳になったばかりのハータ二世は、父ブライアンがピットで作戦担当を行う今年からの体制となって2戦目で勝利を挙げた。
気温28度、路面50度という暑いコンディション。湿度は高く、ドライバーにもクルーにも(屋外で取材するメディアにも)過酷なレースとなった。
3月初旬の開催を4月後半にスケジュール変更することで、このイベントはセント・ピーターズバーグ市から観客をスタンドに入れる許可を与えられた。その数は1日あたり2万人(出場レース、イベント関係者を除く)。決勝日のチケットは完売し、大勢のファンが今年最初のストリートレースを堪能した。
熱中症になっても不思議はないほどのコンディションの下、ハータはかなりの疲労をしながらもゴールまで体力を保たせた。
「フィットネスプログラムを頑張ってきたが、それが正しかったことの証拠だ」と彼は語った。昨年からセントピーターズバーグの近所に住んでいることで、蒸し暑さに慣れていた……ということかもしれない。
「レース終盤、イエローが出て、このレースを得意としているニューガーデンが僕のすぐ後ろにきた。しかし、ナーバスなったりはしなかった。アドレナリンが出た戦闘モードだったし、自分が何をすればいいのかはわかっていたから、それをやり遂げることだけ考えていた」
「ソフトなレッドを彼が履いていたのは少し気になった。しかし、自分はスタート直後にレッドに力を発揮させるまでに時間がかかっていて、ハードなブラックでも温まり具合は同じぐらいだったから、ニューガーデンを封じ込めることができた」とハータは語った。
彼が今日見せた戦いぶりによって自信をつけたのは間違いない。
「これでチャンピオン争いを行う勢いは手に入った。僕はチャンピオンになりたい。インディ500で勝ちたい。自分のやりたいことはわかっている。そのために何をするべきかもわかっているつもり。これらの目標実現のために毎日努力をし続けている」」とも彼はコメントした。
2位でゴールしたのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。セント・ピーターズバーグ2連勝中の彼は金曜、土曜のプラクティスで最速ラップをマーク。
しかし、予選でコルトン・ハータとジャック・ハーベイ(メイヤー・シャンク・レーシング)に先行されて予選3番手。そこからハーベイは攻略したものの、ハータにはほとんど対抗できなかった。
2ストップでのレース、2回目のピットに入る時点でハータは10秒以上の差をニューガーデンにつけていた。終盤に重ねて出されたフルコースコーションによってふたりの差は縮まり、リスタート後の温まりが早いレッドを履くニューガーデンが有利になる可能性もあったが、ハータは2度のシリーズチャンピオンに並びかけるようなアタックをさせるチャンスをとうとう最後まで与えなかった。
「ハータはとても速かった。イエローのおかげでチャンスが巡ってきたけれど、それを活かして勝利することはできなかった。しかし、開幕戦が0周リタイアだった自分としては、今日のレースで2位に入れたことの持つ意味は大きい」とニューガーデンは語った。
2度のチャンピオンらしい落ち着いた口ぶりだったが、内心ではまだ21歳のハータに完敗を喫してショックを受けていただろう。
昨年は1勝しかできなかったハータだが、終盤の4戦はすべてで表彰台に上った。予選も4戦ともトップ3。その前のデビューイヤーに2勝した実力は本物で、今季はもうアンドレッティ・オートスポートのエースとなった感すらある。
チームメイトたちは今日のレースで苦戦を強いられていた。ハータがインディカーに来てからチーム内最速の存在ではなくなってしまったアレクサンダー・ロッシは、開幕戦でこそチームの作戦ミスによって上位フィニッシュを逃したが、今回は苛立ちからつまらないアクシデントを起こし、結果は21位。精神的安定を欠いているのでは?と心配されるくらいだ。
ライアン・ハンター-レイとジェイムズ・ヒンチクリフは、ハータに遠く及ばないペースでの走行。彼らはロッシにも差をつけられている。
3位は予選4番手だったシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)。彼もまたハーベイをパスし、今季初の表彰台に上ったが、戦いはそこまで……。チームメイトのニューガーデンにレース終盤に戦いを挑むことはできなかった。
自分たちが最速ではないレース。ニューガーデンとパジェノーは2、3位で満足していた。しかし、今後のレースで同じようにハータの独走を許すことになる心配はしないのだろうか?
ペンスキーの2台を従えて悠々とゴールしたハータ。キャリア5回目のPPからキャリア4勝目。まだフルシーズンは3シーズン目だが、今日の彼は父ブライアンにインディカーでの勝利数で並んだ。今後どれだけ勝ち星を重ねて行くのだろうか楽しみだ。
ホンダが開幕2連勝。常設ロードコース、ストリートコースでのレースを制した。しかし、第2戦は2、3位がシボレー・エンジンを使うペンスキー勢だった。
ハータは彼らを寄せ付けないほどの速さを見せつけたが、他のユーザーたちはペンスキー勢に歯が立たなかった。予選に失敗して20番手スタートだったウィル・パワーは8位でゴールしている。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は得意とするセント・ピーターズバーグで苦戦をしていた。
予選になってもマシンのセッティングは悪いままで、Q1で敗退の15番手。しかし、決勝日の朝のウォームアップでマシンを一挙に向上。レースではエキサイティングなオーバーテイクシーンを幾つも見せた。コース上でハンター-レイを含む6台をパスしたのだった。
レース終盤はブラックタイヤをチョイス。ディクソンの後ろを追ったが届かず。6位でのゴールとなった。
「6位フィニッシュは嬉しい。作戦が的確で、レース中のタイヤチョイスが自分たちのマシンに合っていた。マシンのバランスはブラックでもレッドでも良かった。ゴールまで思い切りプッシュし続けた」
「ディクソンには届かなかったけれど、今週末は全体的に見て、予選後にチームが見せてくれた働きがファンタスティックだった。クルーたちのピット作業は今回も最高だったし、次のテキサスが今から楽しみだ」と琢磨はコメントしている。
連続開催が続くNTTインディカー・シリーズ。次戦は、5月1、2日にテキサス・モータースピードウェイでのダブルヘッダー戦が予定されている。