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「夫婦別姓議論、次のステップに」 米国で別姓婚「日本でも有効」 地裁判決の意義

2021年04月24日 10:01  弁護士ドットコム

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アメリカで別姓のまま法律婚した日本人夫婦が、日本の戸籍に婚姻が記載されないのは、立法の不備があるなどとして、国を訴えていた裁判の判決。東京地裁は、夫婦の訴えを退けたものの、国内でも2人が別姓のまま婚姻関係にあることを認めた。この判決をどう読み解けばいいのだろうか。


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●サイボウズ・青野社長の代理人に聞いた

訴えていたのは、映画監督の想田和弘さんと舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子さん夫妻。訴状などによると、想田さんと柏木さんは、米ニューヨーク州で1997年、夫婦別姓のまま法律婚した。



しかし、国内では、民法750条が同姓を義務付けており、別姓では夫婦の戸籍が作成されないため、2人は法律婚した夫婦であるにも関わらず、戸籍上で婚姻関係を公証できない状態にあった。そのため、2人は婚姻関係の証明が受けられる地位にあることの確認などを求めていた。



この訴訟は、選択的夫婦別姓訴訟を求める複数の裁判の一つ。婚姻時に夫婦が別姓を選べない戸籍法は憲法に反するとして、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久さんらが国を相手に訴えている裁判の代理人である作花知志弁護士に、この判決をどう読んだかを聞いた。



●東京地裁はどう判断したか?

この訴訟について、作花弁護士はこう解説する。



「想田さん夫婦の訴訟は、判決前からとても注目を集めていました。おそらく今まであまり問題にされていなかった、国家間の法律制度の相違と欠缺(法令などで要件が欠けていること)が問題となっていたからです」



アメリカをはじめ、海外では別姓婚が認められているが、日本ではいまだ同姓が義務付けられている。今回の判決では、外国で現地の方式にしたがって、夫婦が同じ氏を定めないまま、結婚を挙行することは「当然に想定されている」とし、そのような場合でも、通則法24条2項に定められている以上、「2人の婚姻自体は、有効に成立しているものと認められる」とした。



「通則法24条2項では、婚姻の方式は、『婚姻挙行地の法による』と規定していますので、別姓での結婚を認めているアメリカで結婚したら、それは通則法により日本でも有効になる、という地裁判決でした。



国は、日本では、夫婦氏を決めて婚姻届を提出しないと婚姻が有効にならないのだから、別姓の外国での婚姻は日本では無効だと主張したのだと思います。しかし、裁判所は、日本の民法750条の夫婦同氏規定は『婚姻の効力』として規定されているので、氏を決めて婚姻届を提出することは、『婚姻の要件』そのものとは異なる、という判断を出したわけです」



●民法や戸籍法上の別姓訴訟が解決への道

一方、作花弁護士は判決の意義と課題を次のように指摘した。



「判決で、想田さんたちが別姓のまま婚姻が成立していると認められましたが、日本で今問題になっている別姓問題がすぐに解決するわけではありません。ただ、外国で別姓婚で有効なのに、なぜ日本の法律上は同性を義務付けるのか、という議論の次のステップに進みやすくなる、という意味があると思っています。



また、現在、外国人と婚姻した日本人の戸籍には、外国人の名前が配偶者として記載されています(外国人は戸籍が作られないので、外国人の戸籍はないままです)。いわば戸籍に参考事項として外国人配偶者の名前が書かれる、ということです。



仮に今後、想田さんたちが求めていたように、別姓のまま戸籍への記載が認められたとしたら、戸籍に外国で別姓結婚がされていることがそれぞれの戸籍に参考事項として書かれるようになるのだと思います。



その意味では、やはり民法が違憲であるとする別姓訴訟や、私が代理人をつとめている青野さんたちの戸籍法上の別姓訴訟の主張が認められることが、本当の意味での別姓問題の解決になるのだと思います」




【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/