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教員が悲鳴「土曜授業で、振替休日がとれない」 休みは形だけ設定、コロナ禍で始まった学校も

2021年04月24日 09:51  弁護士ドットコム

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「土曜も学校独自で半日授業になり、振替を取ることになっていますが、そもそも授業があり取れません。形だけ振替を設定して勤務している日々が続いていますが、もう教員の勤務について管理職や県なども考える気はないのだろうとむなしくなります」


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東海地方の高校教員(40代女性)から弁護士ドットコムニュースのLINEにこんなメッセージが寄せられた。



女性の勤務校では、数年前から月2回の土曜授業が始まった。平日の放課後を部活動などにあてるためで、土曜は公開授業とし学校独自の教育成果を地域に示すという目的もある。



周囲の小中学校が土曜休みの中、当初女性は職員会議で「保護者として困る教員がいるはずだ」と訴えたが、聞き入れられなかった。今では土曜授業が当たり前となり、誰も何も言わない状況だという。



●振替日も職員室にいるのは普通の光景

女性の勤務校では、土曜授業の振替日は4月と10月にまとめて半年分を申請する。前日まで変更は可能だが、予定通りいかないという場合などは、ただ仕事することもある。



「テストがある日の午後に振替を取ったが職員室にいる、というのは普通の光景です。みんな半日取得だけど、15時半に上がれれば振替取得したくらいの認識でしょう」



さらに、子どもたちに悪影響も出ているという。



「年々生徒も疲れ気味です。こんなに何もかも詰め込んだ学校の被害者は子どもです。時間を減らす勇気がなく、子どもの生活時間をどう考えていくのかという視点がガクッと抜け落ちています」



●コロナで土曜授業始まった学校も

新型コロナの影響で土曜授業が始まった学校もある。文部科学省の調査によると、コロナのために2020年6~8月に土曜授業をおこなったのは、小学校12%、中学校13%、高校30%だった。



コロナで土曜授業が始まったという東海地方の別の高校教員は「週5日が週6日になるだけでかなりの負担増です。代休でも実質休めていない先生は3割くらいいる」と話す。



「土曜授業があると振替申請書が配られ、管理職に振替日を提出することになっています。ただ、職員室のボードには代休と書いてあるのに、その先生が職員室にいることはままあります。教員としては『一応申請はするけど仕事があるのでまさか休めるはずがない』という認識だと思います」



代休だったはずの教員に対し、誰かが「今日休みじゃなかったの?」と声をかけることもないという。



「当たり前に来ているから、誰かが何か言うこともないですね。書類上代休を消化してくれれば、来ても来なくてもどっちでもいい。タイムカードと見比べると確認はできますが、好きで来ている扱いになるのだと思います」



●振替なき土曜授業「コロナ以前から問題だった」

「土曜授業はコロナだから起きた問題ではなく、コロナ以前から問題だった」と話すのは、教育研究家の妹尾昌俊さんだ。



2020年6月、自身のSNSで公立教員を対象に「2019年度の土曜授業の振替取得」について呼びかけたところ、全て振替を取得したと答えたのは、小学校教員で約65%、中学校教員で約37%、高校教員で約29%だった(回答者数は小学校133、中学校51、高校17)。



妹尾さんは「本来振替が取れないとおかしい話。SNSで呼びかけたためサンプリングも少なくバイアスがかかっている可能性があるが、こうした実態があるならもともと土曜授業には無理があったことを問い直さないといけない」と指摘する。




「土曜授業の狙いは自治体によって違うと思いますが、進学実績の向上や学力テスト対策をアピールする目的もあると思います。一概に良い悪いは言えませんが、教員のワークライフバランスや子どもたちへの負担も考えないといけません。教育上の効果があるのかないのか、生産性度外視で安易に授業時間増に頼るのは見直すべきでしょう」




●土曜授業の法的問題は?

では、振替がなされない土曜授業は、どのような法的問題があるのか。



埼玉大学教育学部の髙橋哲准教授は「労基法では週40時間を上限としているのに対して、月曜日から金曜日まで通常勤務を経た上でさらに土曜に出勤をしている。通常授業としての土曜授業は超勤4項目に該当しないため、労働基準法32条違反になる」と指摘する。





本来、時間内や休日労働をすれば、労基法37条に基づき割増賃金が支払われるはずだが、公立教員に適用される「給特法」に基づき37条は適用除外され、4%の「教職調整額」のほかには時間外勤務手当を支給しないとされている。



●自主的だったという言い逃れ

しかし、過去には、振替ができなかった日について給与相当額の支給が認められた裁判例もある(広島地裁平成17年06月30日判決)。



この裁判は、学校週5日制になる前の第1・3・5土曜日の勤務について休日指定を受けられなかったなどとして、広島県の県立高教員4人が休日勤務手当などを支払うよう求めた事件だ。



A教員は小規模校で教員の数が少なかったため、休日指定の申告をせず、校長から休日指定を申告するよう指導されることもなかった。また、別の学校に勤務していたB教員も、授業や校務のため、休日指定がされても実際には勤務をすることが多く、校長が休日指定をせずに放置していることも多々あった。



判決は、A教員とB教員の勤務について、「休日指定を受けられなかったことにより、時間分の給与に相当する額の損害を被ったと言える」とし、当時の1時間あたりの給与額を基準として計約24万2千円の支払いを命じた。



高橋准教授は「休日労働で振替させていない部分について給与が不払いになっているのは、給特法のもとでも違法性が高い」と話す。




「振替日の出勤は教員側としてはやむを得ないことになっていると思うが、使用者側としてはそこに乗っかり自主的だったという言い逃れをしてきた。教員はまず40時間を超えた土曜授業をさせられていること自体が、違法状況にあるということを知ることが大事だと思います」