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『呪術廻戦』の「渋谷事変」はなぜ長期化した? 2つの理由を考察

2021年04月23日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「週刊少年ジャンプ」で1年以上も掲載された、『呪術廻戦』の「渋谷事変」編。現在は一旦戦いに幕を降ろし、次章へと物語が進んでいる。


※本稿にはネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。


 多くの犠牲が出た「渋谷事変」だが、この章こそ現在の『呪術廻戦』のメインストーリーと言っても過言ではない。というのも、渋谷事変はいわゆる総力戦だ。主人公の虎杖悠仁は脹相戦で死にかけるが、宿儺が目を覚ましたことで一命を取り留める。


 その後、目の前で仲間がやられたことで心が折れかけそうになりつつも、東堂葵のサポートもあって真人を追い詰めた。伏黒恵は、重面春太との戦いで八握剣異戒神将魔虚羅を召喚。仮死状態になっているところを宿儺に救われ、生きながらえた。


 釘崎野薔薇は真人の分身相手に善戦するも、本体からの無為転変で左顔面がふっ飛ばされてしまう。現状、はっきりした生死は不明の状態だ。五条悟は序盤で単身敵地に乗り込み、次々と敵にダメージを与えていった。


 あっという間に片付けるかと思いきや、不意をつかれて獄門彊に封印されてしまっている。さらに、七海健人と禪院直毘人は殺害、禪院真希も重症を負った。また、呪霊側も夏油の正体が明らかになったり、漏瑚、花御、陀艮が祓われたりと、見どころたっぷりのオールスター総出演であった。


 「渋谷事変」は1年以上に及ぶ長編であったがメリハリがあり、単行本で一気に読むと退屈しない。それは事態がコロコロと変わり、飽きを感じさせないからだろう。主な出来事を振り返っただけでも、五条の封印、降霊術による伏黒甚爾の復活・自害、虎杖・脹相戦、宿儺の復活、宿儺・漏瑚戦、宿儺・魔虚羅戦、七海の死亡、釘崎の負傷、虎杖・真人戦、明らかになる夏油の正体……と、かなりの出来事が起こっていることが分かる。さらに、伏線の回収なども盛り込まれているためテンポが良く、間延びしていない。


 とはいえ、ネット上などでは「長かった」という声も少なくない。では、同編はなぜこれだけの長編になったのだろうか。様々な理由が考えられるが、ここでは2つの理由に言及したい。


 まず1つ目は、人気キャラの多くが死亡・負傷しているためだ。死者は七海を始め、直毘人、甚爾、漏瑚、花御、陀艮、美々子・菜々子、重面、負傷者は伏黒、釘崎、真希、狗巻棘、パンダ、伊地知潔高、東堂と、かなりの人数だ。しかも、いずれも過去にも登場した人気キャラたちのため、それぞれの背景を描く必要がある。さらりと終わらせては読者も納得、共感しづらいだろう。故に自ずと長くなるというわけだ。


 2つ目は、呪術師側がしっかりと反撃するためだ。振り返れば、脹相を除き呪術師側にダメージを与えた呪霊はほぼ返り討ちにあっている。七海、直毘人、真希を攻撃した漏瑚は宿儺によって消されている。伊地知を襲撃した重面は七海に攻撃されるが、復活。だが、後に宿儺に斬殺されている。七海を殺害し、釘崎に重症を負わせた真人はもちろん虎杖に追い詰められる形となった(最後は夏油に取り込まれてしまったが……)。


 絶対的強さを持つ宿儺に依るところは大きいが、ダメージを与えられっぱなしではない、救いのあるストーリーになっている。呪霊側をやり込めて形勢逆転させる流れこそ、少年漫画の真骨頂なのだろう。


 「渋谷事変」編を読む時は、ぜひ一気読みすることをおすすめする。あのテンポとスピード感を味わってみてほしい。まずは漫画を味わいつつ、同作の骨子となりそうな「渋谷事変」がアニメ化されるのを待ちたい。