2021年04月16日 18:21 弁護士ドットコム
自分で作詞・作曲した楽曲の利用が認められず、ライブ中止を余儀なくされたとして、シンガー・ソングライター、のぶよしじゅんこさんら3人が、楽曲を管理していたJASRAC(日本音楽著作権協会)を相手取り、慰謝料など損害賠償をもとめた訴訟の判決が4月16日、東京地裁であった。佐藤達文裁判長は、原告の請求を棄却する判決を下した。
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判決などによると、のぶよしさんは2016年5月、東京・八王子市にあったライブハウス「X.Y.Z.→A」でライブを開催するため、自分で作詞・作曲したオリジナル曲を含む12の楽曲の利用をJASRACに申し込んだ。
しかし、「X.Y.Z.→A」と間で、著作物の使用料相当額の清算ができていないとして、JASRACに利用申し込みの受付を拒否された。のぶよしさんは2018年、ライブが開催できず、精神的苦痛を受けたとして、約220万円の支払いをもとめて提訴した。
主な争点になったのは、JASRACの許諾拒否に「正当な理由」があるかどうか。著作権管理事業法では、JASRACなどの著作権管理事業者は、「正当な理由」がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならないとされている。
佐藤裁判長はまず、次のような判断枠組みを示した。
「『正当な理由』があるかどうかは、演奏者と店舗経営者の関係、その店舗における使用料相当額の清算状況、演奏者が演奏利用申し込みをした経緯、演奏の目的・営利性、その店舗が使用料相当額を支払っていないことについての演奏者の有無、代替する演奏機会の確保の困難性などを総合的に考慮して決すべきである」
つまり、のぶよしさんたちが、使用料を支払っていないライブハウス「X.Y.Z.→A」と関わりが深いかどうかが、ポイントになった。
「X.Y.Z.→A」は当時、著作権使用料の支払いをめぐって、JASRACと裁判で争っており、その経営に関わっていた1人が、ロックバンド「爆風スランプ」のドラムで、ミュージシャンのファンキー末吉さんだった。
佐藤裁判長は、のぶよしさんが、(1)「X.Y.Z.→A」のライブに20回以上出演していたこと、(2)夫が末吉さんと30回以上共演していたこと、(3)末吉さんとフェイスブック上の友人関係にあること、(4)「X.Y.Z.→A」が使用料相当額を支払っていないことを認識していたこと――を認定して、「正当な理由」があったといえると判断した。
この日の判決を受けて、のぶよしさんら原告3人は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。判決に不服として、控訴する方向で検討していると明らかにした。
のぶよしさんは、判決について「ファンキー末吉さんは尊敬すべき大先輩の1人だ。お顔も存じている。あいさつくらいしたこともある。しかし、親しい間柄ではまったくない。そう散々説明したが、まったく認められなかった。非常に怒りを感じている」と批判した。
JASRACは、弁護士ドットコムニュースの取材に「今回の請求棄却の判決については、JASRACの主張が認められたものと受け止めています」とコメントした。