2021年04月13日 21:31 弁護士ドットコム
加藤勝信官房長官は4月12日、2月に福島、宮城両県で震度6強の地震が発生した時の記者会見の画像が改ざんされてツイッターに投稿されていたとして、ツイッター社に通報し削除されたことを明らかにした。
【関連記事:カーテンない家を「全裸」でうろつく女性、外から見えてしまっても「のぞき」になる?】
NHK(4月12日)によると、加藤官房長官は「画像を改ざんし、あたかも実際の会見のもようであるかのようにして拡散する行為は、国民に混乱と誤解を与えかねない。被災地域の皆さんに、大変不快な思いをさせているもので、許されず、看過できない」と話したという。
削除されたツイートはどのようなものだったか定かではないが、4月12日17時現在も、笑顔で記者会見する加藤官房長官の画像を添付し「嬉しそうに笑いが止まらないような表情で、記者会見」、「官房長官の資格が無い」と記したツイートが残っている。元画像はテレビの映像を切り取ったものとみられる。
このツイートは地震発生翌日に呟かれたものだが、これに対し、「この人いつもヘラヘラして…にしても何でこんなに嬉しそうなん!?」「久々に見たなニヤニヤ」「一刻を争う時に白い歯を見せている余裕なんてないと思います」と加藤官房長官を批判するコメントも寄せられていた。
有名人の写真を面白おかしく加工したコラ画像はネットで度々見かけるが、果たしてどのような法的問題があるのだろうか。小沢一仁弁護士に聞いた。
今回のように、加藤官房長官が会見中に笑っていないのに、笑ったかのように加工された写真をSNSに投稿することは、その写真の内容からすれば、加藤官房長官が会見中に笑ったとの事実を公然と摘示するといえると思われます。
大規模な地震が発生した際の記者会見で、写真のような笑みを見せることは不適切であり、非難に値するものなので、当該事実は加藤官房長官の社会的評価を低下させます。
そして、摘示された事実が虚偽であることは明らかなので、違法性阻却事由は存在しません。
そのため、加工写真をSNSに投稿する行為は、公的な立場であることを考慮しても、加藤官房長官に対する名誉権侵害に当たると思われます。
また、元の映像ないし写真が他人の著作物である場合は、著作権法上の問題も生じると思われますし、今回の投稿により抗議が殺到するなどして窓口部署等の業務に支障を生じさせる場合は、業務妨害も問題になると思われます。
ハッシュタグを見ると、自民党を批判する目的で事実をでっち上げたようにも思われます。政治的言論の自由は広く保障されるべきですが、今回のような行為は、言論として許される範囲を明らかに逸脱するものであり、不当だと思います。
【取材協力弁護士】
小沢 一仁(おざわ・かずひと)弁護士
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。
事務所名:インテグラル法律事務所
事務所URL:https://ozawa-lawyer.jp/