4月18日にバーバー・モータースポーツパークで開幕戦を迎えるNTTインディカー・シリーズ。開幕直前となる4月8、9日にインディアナポリス・モータースピードウェイでオープンテストが開催された。
32台も集まったのは、5月のビッグイベントであるインディ500に向けての準備を行うことのできる大きなチャンスだからだ。
今シーズンに向けては空力のレギュレーションが大きく変更されているため、5月の本番より1カ月以上前のタイミングで開催されるテストには大きな意味がある。今回集めたデータを解析し、多くのチームがマシンを進歩させてくるだろう。
今回のテストを走らなかったが、エントリーが決まっているマシン/ドライバーの組み合わせがふたつある。いずれもAJ・フォイト・エンタープライゼスで、チャーリー・キンボールとJR・ヒルデブランドが、セバスチャン・ブルデーとダルトン・ケレットのふたりのチームメイトとしてダラーラ・シボレーに乗る。
この時点で34台。今年は予選落ち=バンプアウトのドラマを見ることとなりそうだ。
2日間のテストは1日目に雨による中断があったが、2日間で走行時間はトータル8時間ほどとなった。2日目の最高気温は摂氏26度以上にも達した。
そうしたコンディション下、最速ラップはチーのジョセフ・ニューガーデンが記録した。2日目に130周を走った彼は、226.819mphをマークしたのだった。
2度のシリーズチャンピオンを獲得するも、インディ500での勝利がまだないニューガーデンは、「この2日間でマシンは満足の行く仕上がりになった。いいテストとできた」と好感触を語っていた。
「もちろん、まだ進歩させるべき部分はある。新レギュレーションによって、前を走るマシンについていくのは簡単になっているけれど、トップから10台とか後方の順位だったら走るのは大変だと感じた」と続けている。
テストの2番時計はインディ500で2勝の佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が走行終了間際に出した226.396mphだった。しかし、走行を終えた琢磨の表情は険しかった。
「トラブルが続いて思うように走り込めませんでした。今日の午後走り出した時にマシンのセッティングがおかしくなっていて、走り続けるのは危ないからマシンをガレージに戻しました」
「するとセッティングの数字が違っていたので、その原因究明し、マシンをセットし直す作業が必要となりました。それで時間を取られ、次に走り出そうとすると、電気系がショートしての火事」
「最後の30分間を走れたのはよかったのですが、マシンのバランスはまだ満足の行くレベルではないし、トラフィックの中でのハンドリングもほとんど試せていません」と、厳しいテストになったことを語った。
「それでも、チームメイトのグラハム・レイホールが非常に速く、マシンに満足をしていました。インディ500にスポット参戦するサンティーノ・フェルッチも着々とスピードを上げていっていましたし、グラハムと一緒にコースを走ってトラフィックテストをこなしていました」
「彼らのテストによって得られたデータで、5月のためのより良いマシンセッティングを見出したいと思います」と琢磨は状況を語った。
■好調なアロウ・マクラーレンSP
3番手につけたのは、琢磨と同じくインディ500で2回勝っているファン・パブロ・モントーヤ(アロウ・マクラーレンSP)。久々にインディ500に挑戦する彼は、スピードは226.123mphを記録。
4番手はインディ1勝、昨年2位のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で225.906mph。
5番手は昨年のインディ500で3位だった琢磨のチームメイト、レイホールの225.644mph。レイホール二世はドラフティングなしの単独走行での最速=221.949mphもマークと好調な走りをみせる。
6番手はエド・カーペンター・レーシングのコナー・デイリーで225.639mph。インディ500優勝に情熱を燃やし続けている彼らのチームは今年も速そうだ。オーナー兼ドライバーのエド・カーペンターは14番手につけたが、昨年のルーキー・オブ・ザ・イヤーのリナス・ヴィーケイは初日の走行開始早々にクラッシュ。左手指を骨折してしまった。
7、8、9、10番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ジャック・ハーベイ(メイヤー・シャンク・レーシング)、パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)。
アンドレッティ・オートスポート系列は本家のドライバーが誰もトップ10に入れなかったが、技術提携しているメイヤー・シャンク・レーシングでハーベイとカストロネベスが揃ってトップ10入り。本家の面々はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)の12番手が最上位で、コルトン・ハータが13番手、アレクサンダー・ロッシが19番手、ジェイムズ・ヒンチクリフは22番手だった。そして、昨年のポールシッター=マルコ・アンドレッティは25番手と厳しい位置だった。
今年から4カーに体制拡大しているチップ・ガナッシ・レーシングも手放しで喜べる状況ではない。ディクソンは4番手だったが、次は今季からチーム入りしたアレックス・パロウの15番手で、インディ500で1勝しているトニー・カナーンは23番手、マーカス・エリクソンは28番手と下位に沈んだ。
各チームの状況をみるとモントーヤだけでなく、オーワードもトップ10入りさせているアロウ・マクラーレンSPのパフォーマンスはなかなか良いものだとわかる。
これでプレシーズンテストは終了。来週末にNTTインディカー・シリーズは開幕する。
バーバー・モータースポーツパークでのホンダ・グランプリ・オブ・アラバマは、昨年はCOVID-19パンデミックでキャンセルとなった。今年は開幕戦として、そして、観客を迎え入れてのレース開催を行う。
このレース、2年前に優勝したのは琢磨だが、路面改修でグリップが大幅アップし、以前とは別物の高速ロードコースになっているようだ。