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国内繊維産業のIT化を推進 瀧定出身者が手掛ける生地販売のプラットフォーム「ツナゲル」がオープン

2021年04月06日 13:22  Fashionsnap.com

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「ツナゲル」トップページより
アパレルメーカーとテキスタイルの工場をつなげるBtoBプラットフォーム「ツナゲル(tunageru)」が、4月6日にグランドオープンした。瀧定(現スタイレム瀧定大阪)で20年にわたり繊維業界に携わる堂前徹氏が立ち上げたディープラストレーディングが運営。堂前氏は「国内の繊維業界は新型コロナウイルスの影響で相当ダメージがあり、待ったなしの状況。撤退する事業者も少なくない」という切迫した現状をふまえ、IT化が遅れている繊維業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートすることで繊維産業の復活を目指す。

 日本の繊維業界は生地問屋・繊維商社といった川中企業を介して取引するのが通例だが、規模の小さな生地製造工場やアパレルメーカーなどは取引そのものが難しく、自社単独での販売や仕入れ業務のノウハウも少ないため苦戦しているのが現状だという。ツナゲルではこの課題に着目し、機屋やニッターなど生地製造工場のサプライヤーと、D2Cアパレルブランドやファッションデザイナーなどのバイヤーが直接つながることができるプラットフォームを開発した。
 サイトではテキスタイルを用途や価格別で検索できるほか、見積もり依頼やサンプル帳依頼、見本用のカットオーダー、量産の反発注といった一連のテキスタイル受発注業務に特化し、小ロットでの注文を可能にした。サプライヤーには福井や尾州、西脇といった日本を代表する生地産地のテキスタイル生産企業約50社が参加。今回のβ版では受発注システムを導入したほか、オリジナルの生地の別注加工ができるメイド・トゥ・オーダーサービスと日本の産地を紹介するコンテンツ「日本の生地産地特集」をスタートした。
 バイヤーは利用料無料。サプライヤーも固定費を無料とし、利用へのハードルを下げるためにサイトに掲載する商品の撮影や登録作業はディープラストレーディングがすべて代行する。クレジットカード決済のほか売掛決済サービスを導入しているため、販売側の企業にとっても与信のリスクを心配せずに取引できる。取引手数料を収益源とし、当面はベンチャーキャピタルからの出資金(金額は非公表)を利用しながら運用していく。
 サービスの開発期間は約1年半。堂前氏は瀧定在籍時代から独立を視野に入れ、独立後はコンサルティングを軸にしたクライアントワークをメインとしていたが、ひっ迫していく繊維業界に貢献したいという思いからツナゲルを考案した。昨年にサービスのプロトタイプを公開しており、サプライヤーからは新規のバイヤーとつながる点に期待が寄せられているという。
 ジェトロ(日本貿易振興機構)のバックアップを受け、来年から本格的に海外展開を目指す。日本のテキスタイルは海外でも評価が高いため、ラグジュアリーブランドやD2Cのコレクションブランドをターゲットに据える。「与信がないところでも工場から直接買えるという強みを活かし、商社や問屋が取り込めていない層に向けてどれだけ存在感を出せるかが課題。海外に生地を販売するプラットフォーマーでは登録者数ナンバーワンを目指したい」。サイトのシステムはすべて自社開発しているため、今後もスピード感をもってサイトの機能を充実させていきたいという。5年後までに黒字化を計画し、将来的にはIPOを実現させたい考えだ。
 同様のサービスでは豊島の「テキスタイルネット」などがあるが、堂前氏は「僕らのサービスはこれから成長していく段階なので、あくまでも新しい選択肢の一つとして提案したい。国内の工場がなくなるかもしれないという状況が続いているなか、事業者の皆さんには他社も含め、色々なサービスを使い比べてIT化を進めてほしい」と話す。
 日本の繊維産業は長い歴史のなかで発展を遂げてきた一方で、外部からの参入障壁が高い傾向にある。しかし新型コロナウイルス感染拡大を機に、その傾向は少しずつ和らいでいるという。「国内の工場をどうしたら残せるのか。潰れてもしょうがないと言う人もいるが、それだけで片付けられるものではない。IT化は繊維産業復活の大きなポイントになるはずだ。我々のサービスを踏み台にしてもらっていい。変化を恐れずにDXに取り組んでみてほしい」(堂前氏)。

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