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BTS、新曲「Film out」が『劇場版シグナル』に与えるスパイス ドラマ版主題歌「Don’t Leave Me」から続く関係性

2021年04月06日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BTS「Film out」

 4月2日に全国ロードショーとなった『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』。同日に配信され話題となったのは、この映画の主題歌でもあるBTSの新曲「Film out」だ。


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 2018年に放送された連続ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)は、韓国で人気を博したヒューマンサスペンスドラマのリメイク版。BTSは「Don’t Leave Me」でこのドラマの主題歌を務め、ここから“シグナル×BTS”の関係性は始まった。


 ドラマ『シグナル』では、無線機をキーに“現在”と“過去”がつながる。坂口健太郎が演じる刑事・三枝健人が、北村一輝演じる過去を生きる刑事・大山剛志と共に未解決事件を解決していく。無線機でつながっている時間だけ、三枝と大山は時空を超えて助け合いながら事件の真実に迫っていくのである。無線がつながらない間は、互いの安否も確認できない。危険と隣り合わせの捜査の中、違う時間を生きる2人は相手の無事を願うしかないのだ。大山の安否を願うのは三枝だけはない。大山は、三枝と共に捜査を行う刑事・桜井美咲(吉瀬美智子)の新人時代の指導係だった。彼女は、過去に突然失踪した大山の行方を捜し続けているのだ。


 捜査班はもちろん、未解決事件の真相究明を願いながら日々被害者のことを想う遺族の姿も描かれている。スリリングな展開の中で描かれるこうした“切なる想い”が、このドラマの展開を引き締めていた。


 主題歌「Don’t Leave Me」は、このドラマのために書き下ろされた1曲だった。どこか冷たく寒い雨の日を思わせるVの声に始まり、内に熱を秘めつつも落ち着いているような94’sのRMとJ-HOPEのラップが続く。サビ前にはJUNG KOOKの透き通った高音ボイス。そして力強く訴えかけるようなJIMINの声で始まったサビに、切なさと芯の強さを兼ね備えたJINの声が加わる。サビが終わると、曲の転換にぴったりなVの落ち着いた声が再び。そこに続くのはラップラインのパートだ。SUGAの熱のこもった、しかし吐き捨てるような一言ひとことが刺さる。曲としては全体的に切なさや冷たさの中に、“届くことを願い続けている切なる想い”を感じるようなものに仕上がっている。このドラマと主題歌「Don’t Leave Me」の親和性が作品をさらに仕上げていったと言えるだろう。


 4月2日に公開になった映画『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』では、つながるはずのない無線機が再びつながる。ドラマ版よりもスケールアップした内容で、違う時間を生きながらも供に大きな事件に立ち向かっていく三枝と大山の姿が描かれていく。


 映画の公開日に合わせてリリースされた主題歌、BTSの新曲「Film out」。back numberの清水依与吏が提供し、作曲にはメンバーのJUNG KOOKも参加している。


 スケールアップしアクションシーンもある劇場版には「Don’t Leave Me」の方が合うのではないかと一瞬思ってしまいそうになる。それほどに彼らの声は柔らかく、どこか切なさも増している。


 しかしこれが映画のスパイスになるのだろう。慌ただしくスリリングなストーリーの中で描かれる人々の心。誰かを想う切ない気持ち。その切ない気持ちの中には、相手に向けた愛情や信頼、恋しさなど温かいものがたくさん凝縮されている。この曲には、ドラマでも描かれている、それぞれの持つ“相手への想い”の温かさがうまく抽出され入れ込まれているのだ。これがうまく曲に混ざり合い、切なさはあるのに冷たさを感じない、ちょうど風に吹かれて桜が散っていくのを見ているときのような印象を作り上げている。


 歌詞にも、会うことが出来ない人を想う気持ち、その人の姿をどうしても求めてしまう姿がたくさんの比喩を用いながら表現されている。抽象的なこの描き方は、多くの人の共感を呼び起こすことができるのではないだろうか。誰もが抱いたことのある大切な何かに対する恋しさ、触れたくても触れられないもどかしさをBTSの優しい声が代弁してくれる。ボーカルラインの柔らかく透き通った声、ラップラインの落ち着いた包み込むような声。映画の主題歌としても、曲単体としても聞き応えのある1曲だ。


 BTSは併せて「Film out」のMVも公開。暖色の世界で描かれる切なさに魅了される作品に仕上がっている。どこか不思議な時空のこのMVにも、『シグナル』とのリンクを感じる。(フルヤトモコ)