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あくにゃん × 劇団雌猫が語る、コロナ禍の“推しごと”事情 「健康あってのヲタ活」

2021年04月03日 14:31  リアルサウンド

リアルサウンド

あくにゃん×劇団雌猫 ヲタク対談

 “プロ”のヲタクYouTuber・あくにゃん。オタクを自認し、活動をSNSなどで報告する身近な存在でありながら、的確にオタクのツボをつく言葉と笑いのセンス、第一線の“現場”に足を運び続ける熱量が支持されている。そんなあくにゃんと、『浪費図鑑』『だから私はメイクする』などの編著書を持つオタク女性ユニット・劇団雌猫が揃って新刊を上梓した。


 あくにゃんにとって初となる書籍『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場(ここ)にいる』は楽しくて、でも「甘くない」ヲタクの現実を切り取った一冊。劇団雌猫の新刊『一生推したい!私たち、ゆる健康はじめてみた』(いずれも主婦の友社)は、平成元年うまれの雌猫メンバーたちが、リアルに感じる「体力低下」に注目し、内科医の指導のもと、推しを推し続けるための健康力を手に入れるための方法をまとめた健康読本。


 本記事では、あくにゃんと劇団雌猫(もぐもぐ&ユッケ)が、ヲタクのリアルを語り合う鼎談が実現した。初対面の3人に、それぞれの自己紹介として“推しごと遍歴”から語ってもらうと、同じヲタクでも、住む世界(界隈)によって全く異なるヲタ活の姿が見えてきた。そして、コロナ禍のヲタク事情あるあるも……。(編集部)


関連:【写真】あくにゃんアザーカット


■推しごと遍歴


ーーまずは皆さんのお仕事ならぬ、“推しごと”遍歴から教えてください。


もぐもぐ:私は実はヲタクになったのは大人になってからなんです。働き始めた頃、週5日働くのがつらすぎて、「だめだ! 何か楽しいことがないと心が死ぬ!」と思って。ちょうどAKB48が流行っていた頃で、ネットでミュージックビデオを見る程度で楽しんでいたのを、生で見たいなと思ったのが最初でした。せっかくならいろいろ楽しもう!と他の女子アイドルの現場にも通うようになり、アニメにもハマって同人誌を出し。“総本山”であるジャニーズもやっぱり行きたい!と友人の導きでタキツバ(タッキー&翼)の東京ドームにも社会科見学的に足を運びました。タキツバの東京ドームは「いろんな人がいっぱい見れてお得だよ」みたいな、福袋みたいな勧められ方をジャニヲタにされたんですよね(笑)。今は、宝塚を見てるのと、ジャニーズだとSexy Zone、女子アイドルだとNMB48が好きで推しています!


ユッケ:私はもともと小学生の頃からヲタク気質でアニメとか漫画を見ていたんですけど、人生初の推しは辻ちゃん(辻希美)です。モーニング娘。が「LOVEマシーン」とか出してた全盛期で、小学校中の同級生みんなモー娘。好きだった。


もぐもぐ:みんなモー娘。になりたかったよね。


ユッケ:そうそう。ハロプロ(ハロー!プロジェクト)と同時期にジャニーズや『デジモンアドベンチャー』にもハマって、ネット掲示板でヲタクと交流したり、二次創作のサイトを読み漁るようになったり、オタクとしての土台はその頃にできました。今は、ハロプロだと特にBEYOOOOONDS、ジャニーズはJr.、あと去年ぐらいから日向坂46にもハマって、バラエティ番組や歌番組、YouTubeなどのコンテンツをゆるっと追いかけています。


あくにゃん:僕は基本、全てのジャンルには一応行っていて……。


もぐもぐ&ユッケ:かっこいい!


あくにゃん:現場命で、推しがいる場所には行きます。モンテディオ山形のキーパーを応援しに行ったり、最近は好きなTikTokerやInstagrammerとご飯に行ったり、幅広く。ジャニーズにはキスマイ(Kis-My-Ft2)のデビューと同時にハマったので、実は遅かったりするんですけど、そこからJr.にハマって、井上瑞稀くん(HiHi Jets/ジャニーズJr.)をずっと応援しています。最近は新大久保ドル(シノクボドル)にハマりました。新大久保でアイドル活動して、3カ月したら韓国に帰って、また日本に来て3カ月っていうのを繰り返してるんですけど、その新大久保ドルの推しが4人連続辞めちゃって、ちょっと今瀕死状態です。もともと辞めそうな子が好きっていうのはあるんですけど(笑)。


もぐもぐ&ユッケ:好きになったキャラが必ず死ぬ運命にあるヲタクみたいな感じだ……。


あくにゃん:だから今推しはいないんですけど、僕は現場でお金を使うのが好きなので、お金をいっぱい使える推しを探しているところです。


■推しの現場には全部行かなくちゃいけない?


ーーお互いの本を読んでみてどうでしたか?


もぐもぐ:私は今、コロナもあって、そんなガンガン現場に行く感じではなく、できる範囲でゆるく楽しんでいるんですよね。だから、今のお話でもそうですが、あくにゃんさんの本読んでとにかく「バイタリティがすげえ!」って(笑)。あと、K-POPや新大久保の接触系は全然文化を通ってきてないので異文化として知らないことが多くて面白かった。嫌いなヲタクの話も赤裸々すぎて面白かったし、「クセ強ヲタク図鑑」もみんなクセ強くてウケました。過激なエピソードと見せかけて、その裏に色々考えてることとか、それぞれのポリシーみたいなのが伺えて、なるほどなって思うこともいっぱいありました。


ユッケ:私はあくにゃんさんと界隈が微妙に近いところもあって、「わかるわかる!」って読んだところがすごく多かった。特に「だよね!」って思ったのは、ヲタク同士のしがらみ、いざこざが書かれたところ。最近SNS上のマウント合戦に疲れ果てしまっていて。推しの現場には全部行かなくちゃいけないとか、ジャニーズJr.だったら「Jr.大賞」には何票入れなきゃいけないとか、そういうことを全部やってるヲタクが偉い、やってないヲタクはダメだ、みたいにディスる風潮が、ここ数年あるじゃないですか。でも全然そんなことはなくて、自分が摂取したいものだけすればいいみたいに書いてくれていて、励まされました。自分のペースでヲタクしていこうって改めて思って、心か穏やかになりました(笑)。


あくにゃん:僕「ジャニーズJr.チャンネル」をほぼ見ていないんですけど、そのことを本に入れるのも実は悩んでて、「こいつ全然ヲタクじゃないじゃん」みたいに言われちゃうかなと思ってたんですけど、でもそこまで追えていないのは事実なので書きました。それが巡り巡って、ユッケさんにそういう風に伝わってるのは嬉しいです。


ーーあくにゃんさんは雌猫さんの本を読んでどうでしたか?


あくにゃん:雌猫さんとの出会いは『浪費図鑑』(小学館)だったんですが、今回の本は健康についてで、結構衝撃を受けました。やっぱり1作目や2作目じゃ取り扱えないテーマで、雌猫さんにしか出せない書籍だなと思いました。超重要な内容だし。先駆者だなって感じます。


ユッケ:そんな偉大な存在じゃないんですけど……。


もぐもぐ:褒めていただいて……ありがとうございます。あくにゃんさんは、今おいくつでしたっけ?


あくにゃん:25歳です!


もぐもぐ:じゃあまだギリギリ健康ですよ! 私たち、28歳くらいからやばいって思い始めたんで、まだこの本がいまいちピンとこなくても普通だと思います。


あくにゃん:でもすごい参考になりました。葛根湯飲んで、お風呂入って、腹巻した方がいいんだとか(笑)。


ユッケ:葛根湯とか腹巻って良いものだって聞いたことあるけど、自分で常備したりはしないですよね。でも、あるとき気付くんですよ。高級なユンケル飲むと体の調子がいいとか、なんだかんだ熱い風呂に入って体を温めるのはいいぞみたいな……。


もぐもぐ:おじいちゃんみたいな(笑)。


ユッケ:そうそう。早寝早起きはいい、みたいな当たり前のことに気付き始めました。


■コロナ禍は「自分の心だけでヲタ活やってる感じ」


ーーいまの皆さんの健康状況&ヲタ活近況はいかがですか?


ユッケ:去年この本を作ってたくらいの時は、ステイホームで“自宅ハイ”になってて、自炊とか筋トレとか、家の中でできることをがんばろうみたいな感じで、割と楽しく過ごしていました。でも、先月くらいからテンションが下がっていますね。自分でも理由がわからないので、「そういう時期なんだろうな、春だし」って気持ちではいるんですけど……。ヲタ活も、オンラインライブやテレビ番組は欠かさず見るものの、現場もないし、コロナ前ほどヲタクやってるなっていう実感がないんですよ。


あくにゃん:僕もライブ配信とか電話特典会とかオンラインサイン会とか、一応与えられたものには一通り参加してはいるんですけど、あまり面白くなくて……。


もぐもぐ:うんうん。自宅で気軽に参加できて便利な面もあるけど、いまいち(テンション)あげるのが難しいのも正直なところですよね。


あくにゃん:ファンサ(ファンサービス)もらいに現場に行っていたようなものだし、そのあとの飲み会でヲタク同士キャッキャするのが楽しいっていうのもあったんですよね。電話特典会が終わった瞬間、広い部屋に一人……みたいな感じが嫌で。あとは、大手事務所のアイドルでも電話特典会ができたり、頑張れば推しに覚えてもらえるってなった時に、地下の良さがわからなくなってしまったと思っていて……。だから大手にも手を出してみたけど、結局特典会が当たらなくて、大人しくなったところです。


もぐもぐ:生で観劇するのも、楽しいんだけど以前のようなストレス発散感はないなって思いますね。行くだけでちょっと緊張するし、ずっとマスクしてなきゃいけないし、誰とも喋らないし、100%全力で楽しめない感があるまま1年過ぎた気がします。


ユッケ:緊張感あるよね。以前は幕間にヲタク仲間と今日の推しの様子について喋ることも楽しくて、心が満たされてたんですけど、今はキャッキャすると他の人の迷惑になっちゃうからできないし。Twitterに感想を書き込もうと思っても、さっきも言ったようにマウント合戦で殺伐としているし(笑)、自分の心だけでヲタ活やってる感じがすごいしんどい。


あくにゃん:僕も何回か舞台には行ったんですけど、お手紙が渡せなくて。事務所に送ったものの、それもコロナで受け取りやってないらしくて……。


もぐもぐ:直接だけじゃなくて、郵送でもダメなんだ。


あくにゃん:最近はもう受け取ってもらえるようになったらしいんですけど。舞台見て、感想を伝えて褒め称えたいのに受け取ってもらえないので、それがきつかったですね。伝える手段がないっていう。


■健康維持のモチベーションも“推し”!


ーー私自身、推しに会えず美意識が落ち、筋トレのモチベーションも保てなくて体重が増えたり……不健康のスパイラルに陥りました。皆さんは全力でヲタ活できない今、どうやってモチベーションを保っていますか?


もぐもぐ:1月末に久しぶりに、オーケストラの生演奏付きの公演を観たんですが、めちゃくちゃテンション上がって自分でもびっくりしました! オーケストラの音があるだけで全然違った! 急に生きる気力が沸いて、その足で有楽町のルミネに行って、めっちゃ服を買いました(笑)。今の質問も、「現場の空気感こそ楽しい」っていうさっきのあくにゃんさんの話もそうだと思うんですけど、推しを見られれば“なんでも”いいってわけじゃないんですよね~。


ユッケ:私はこの一年でYouTubeをすごく見るようになって、韓国や中国の美容系YouTuberさんを見るのにハマりました。言葉はわからないから映像を見てるだけなんですけど、そういう人たちを見てると、「私もちゃんと化粧落としてから寝よう!」みたいな気持ちにはなります。だから自分の推してるアイドルグループアイドルの動画の他に、その人たちもチャンネル登録して、新作がアップされたら見るようにしています。


もぐもぐ:美容系の動画は、見るだけでテンション上がるもんね。


ユッケ:でもそれを見て、じゃあ今から腹筋100回やろうとか、洋服買いに行こうみたいな、そこまで気持ちが高まるかっていうとそういうわけでもないので。地に落ちそうな美意識をその人たちでギリ食い止めてる、維持してるような感じです(笑)。


あくにゃん:僕は、推しの井上瑞稀君が今度『DIVE!!』っていうドラマに出るんですけど、体を鍛えて3キロ増やしたらしくて、自分も真似しようとジムに通ったりしています。推しの頑張りに合わせて、自分も頑張るという方法が昔から存在することは知っていたんですけど、今回初めてやってみて、案外一番モチベーションになるかもなと思いました。


■推しのために「マイナス17度の中で2時間半」……


ーー劇団雌猫のおふたりは書籍の中で自分たちでチョイスした「ゆる健康法」を1週間チャレンジしていましたが、今も続けてやっていることはありますか?


もぐもぐ:私は本の中で、なるべく発酵食品をとる、特に“味噌汁”が体もあったまるし良いと言うので“なるべく味噌汁”チャレンジしていたのですが、あれから結構作るようになりました。最初は正直めんどくさいと思ってたんですけど(笑)、顆粒だしと味噌を入れたお椀にお湯を注ぐだけでできるし、味噌汁とごはんがあればそれっぽくなるので、今まで適当にカップラーメンだったところを、味噌汁飲もうかなって思えるくらいになった! 自炊は自分のためにやってるって感じで自尊心も上がるので、それもいいかも。


あくにゃん:もぐもぐさんのミニトマトとウインナーの味噌汁の写真が衝撃的でした(笑)。


もぐもぐ:たまたま『マツコの知らない世界』で味噌汁の特集やってたんですよ(笑)。私も「え?ウインナー? ありなの?」と思ってたんだけど、予想以上に美味しかったしこれだけでおかずにもなるからおすすめです。具ってなんでもいいんだ~って思えて気も楽!


ユッケ:私も“アイマスクで眼精疲労対策”は続けてます。毎日ではないですけど、今日は目が疲れたな~っていう時に。もう一つの“ウォーキング1日30分”は、正直「毎日欠かさずやろう!」というほど意識を保てていないです。でも最近、友達と遊ぶ時の選択肢に「散歩」が増えました。飲食店で対面で話すよりも、外の空気を吸いながらぷらぷら横並びで歩いて喋った方が、健康にも感染予防にもいいかなと。


ーーあくにゃんさんは、試してみたい健康法や、今すでに実践している健康法はありますか?


あくにゃん:僕、お風呂は湯船に毎日入ります! あと腹巻も一時期してました、ヒートテックのやつ。


もぐもぐ:偉い!! あくにゃんさんは、仕事もされてて、YouTubeもされいてるから、かなり忙しいですよね。


あくにゃん:そうですね。4時くらいに寝てます、いつも。


もぐもぐ&ユッケ:ええー!!


あくにゃん:でも、会社の出勤時間が自由だから、自由の意味を履き違えて、朝は12時くらいに起きる時もあります(笑)。


もぐもぐ:じゃあそんな睡眠時間が短いわけじゃないんですね。現場によく行ってた頃は、昼間は仕事して、夜は現場に行って、夜中はYouTubeの編集してっていう感じだったんですか?


あくにゃん:ちょっとでも睡眠時間確保するために、現場の近くにホテル取って、そのホテルから通うこともあります。


ユッケ:すごい。推しよりも、あくにゃんさんの方が忙しいスケジュールを送っているのでは……。


あくにゃん:自分が忙しすぎて、体がヤバくなったことはあんまりないですけど、マイナス17度の中2時間半待たされたときは凍死しかけました。


もぐもぐ:それは韓国の番協(音楽番組の番組協力)ですか?


あくにゃん:そうです、韓国の番協で、しかも結局入れなかったんです。


ユッケ:えーつら! 無情だ……。


もぐもぐ:残酷! 私も昔は往復夜行バス日帰りとかしてたけど、もうだんだん無理になってきたな。


■自分を犠牲にするのが楽しかったりもするけど……


ーーあくにゃんさんよりほんの少しだけ先輩の雌猫のおふたりは、あくにゃんさんの年齢の時にこうしておけば……と後悔したことはありますか?


ユッケ:自分のことを振り返ると、20代の時は全力でヲタ活して全力で仕事して、ヤバい生活を送ってたんです。でも、それはそれで楽しかったから、後悔はしてないんですよ。あんまり先のことを見すぎて遠慮して、自分が「今」やりたいことができないってなったら、私みたいなタイプの人間は逆に心が不健全になっちゃうと思う。だから、本を監修してくださった内科医の石原新菜先生が、要所要所で「(30代からでも)まだ遅くない」って言ってくださったのが、すごく心強かったです。自分はまだできるって思っても、体より先に心が限界くることもあるし、信頼できる人のアドバイスには耳を傾けつつ、“ギリギリ健康”の中で、後悔しない生き方をして、いよいよやばいかも? って思った時に、私たちの本を思い出してくれたら嬉しいです。


もぐもぐ:そうだね。必要ないうちは読んでも響かないからね。いつか思い出してくれればいいね。


ーーあくにゃんさんから同年代のヲタクたちに伝えたいことはありますか?


あくにゃん:僕の本と雌猫さんの本で言ってることが近いなと思ったところがあって、それは僕、「おわりに」で〈自分のこと“も”大切に。何があっても、生きてくださいね〉って書いてるんです。


もぐもぐ:その言葉すごく好きでした! あくにゃんさんの立場でそれを言ってくれるのって、すごくいいことだと思った。自分をすり減らして推しても、誰も幸せにならないから……。


あくにゃん:健康/不健康とは別かもしれないですけど、やっぱり中には人に言えない仕事をやってる子もいるし、何かを犠牲にしてまで推しを応援してる子って本当に多くて。それで満たされてる部分があるんですよね。確かに時には自分を犠牲にするのが楽しかったりもするけど、それって短期的なものだから、長期的に見てほしいって思ってたので、雌猫さんの本、響きました。改めて、健康あってのヲタ活だって。


もぐもぐ:マジで体が資本だから、無理せずに、現場があってもヤバかったら病院にいってね……って親戚みたいになっちゃった(笑)。やっぱりね、毎日忙しいヲタクだと、病院に行ってる暇ないわ! ってなるけど、ある程度は自分のことも推してあげないとね。あくにゃんさんの本で老後になってもメンカラ(メンバーカラー)の杖をついて現場に行こうって書いてるヲタクの子がいて、メンカラの杖、めっちゃ売れそう!って思いました(笑)。みんなで元気にメンカラの杖で現場にいきましょう!