トップへ

コロナ禍で急成長の化粧品EC「ノイン」 若年層獲得の秘訣や次の一手は?

2021年04月03日 13:02  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

NOIN 渡部賢代表取締役CEO Image by: FASHIONSNAP.COM
  コロナが追い風となり、化粧品ECを運営するNOINが業績を伸ばしている。昨年3月以降のユーザー数が好調に推移し、今年2月のGMV(総流通総額)は前年同月比で9.6倍と過去最高を達成。ノインの成長を支える秘訣とは?そして化粧品ECの重要性が高まる中で次の一手とは?創業者で代表取締役CEOの渡部賢氏に話を聞いた。

◆ボリュームゾーンはZ世代 SNSでの密なコミュニケーションが鍵
 ノインのコアユーザーは10代後半~20代前半で、全体の7割をZ世代が占める。競合に挙げられるアットコスメが20代~40代を中心としているのと比較しても若年層が多いのが特徴だ。この背景にはオウンドメディアとして2017年に立ち上げたインスタグラムアカウント「NOIN.tv」が影響していると渡部氏は語る。
「Z世代にとってSNSでの情報収集はコミュニケーションの一部。そこでNOIN.tvでは、ユーザーコミュニケーションを充実させることで、ECサイトのロイヤリティ向上に繋げる仕組みを構築した。SNSコンテンツを起点に顧客と接点を持ち、そこから商品選びなどのコミュニケーションを生み、ノインの良さを体感してもらう。ECサイトをその延長線上に据えたことで、コミュニケーションから購入までの自然な導線を確立した」。
 NOIN.tvのコンテンツでは、「失敗しない眉毛の描き方」や「まつ毛のカープキープ術」など、社内の美容部員経験者や編集部が企画した「リアルにためになる」情報をほぼ毎日発信。コメントにも細く対応し、一日100人ほどから送られるDMでは商品選びの相談に親身になって対応する手厚さがポイントだ。
「若年層にとってより自然なコミュニケーションになるよう、返信の定型文は定めていない。口調はカジュアルだが、美容に精通するスタッフが個人に合わせて回答することで信頼を得ることができた」。
 アカウントの現在の月間アクティブユーザーは約600万人。週2回配信しているインスタライブでは成分や処方などマニアックな質問が飛び交い、コスメ好きが集まるメディアとして機能している。化粧品ECは目的買いが多く、複数買いで客単価を上げるのが難しいと言われているが、ノインではSNSを介したコミュニケーションがリピーターを生んでいるようだ。

◆手本は「セフォラ」 1000件より価値ある1件の口コミ投稿を目指す
 SNSを介してユーザーと繋がるノインが次に目指すのは、コスメ好きが集まるコミュニティの形成。手本はアメリカの化粧品専門店セフォラ(Sephora)だという。
「セフォラには『アイシャドウマニア』や『ラメフリーク』のようなユーザー参加型のコミュニティチャンネルがあり、ユーザーを交えて情報交換が行われている。セフォラにコスメが好きな人が集まり、信頼性が高い情報が飛び交う」と感度の高い情報が濃密に行き交う点を渡部氏は評価する。
 渡部氏が感度の高いユーザーの獲得およびコミュニティの形成を目指す背景には、化粧品ECサイトにおける現状のアルゴリズムが関わっている。
「他社を含めた化粧品ECの現在のアルゴリズムでは、レコメンド欄に表示される商品が『売れている=口コミが多い』ものに偏る。多人数によるおすすめも一つの購買指標ではあるが、コスメと出会う楽しさを創出するには限界がある」。
 そのため、ノインでは多数の商品を扱うECプラットフォームだからこそ、「ユーザーがまだ見ぬ商品と出会う」手助けをし、豊かな購買体験を提供することが企業価値の向上に繋がるというのを信条に掲げている。

◆伊藤忠との連携でアジアコスメを強化 ディスカバリーできるサイトへ
 ノインのMDでは「まだ見ぬブランドのディスカバリー」を掲げ、認知度は低くても良い商品であれば積極的に取り扱う方針。現在は現在872ブランド、1万7000SKU(カラーバリエーションを含めた商品数)を販売している。今後は業務提携している伊藤忠商事のノウハウを活かし、海外ブランドの誘致にも注力する考えだ。
「最近は特に若年層から人気の韓国や中国、台湾といったアジアブランドの誘致に力を入れている。日本の販路はまだ少なく、『ノインなら買える』と印象付けるチャンス」と勝機を窺う。韓国のヘアケアブランド「モレモ(moremo)」は日本上陸初期からノインで取り扱ったことで口コミが広がり、日本国内での人気が加速した事例もある。
 昨年は大丸松坂屋百貨店との協業で、かねてより取り扱いを目指していたラグジュアリーブランドの誘致に成功。販売開始後は若年層もラグジュアリーブランドを購入しており「着実に成果をあげている」という。
「複数のラグジュアリーブランドから若年層の獲得に苦戦していると聞くため、我々のユーザー層はブランドにとっても有益。ユーザーの閲覧変遷などを詳細にトラッキングしたデータを提供できることも強みだ」とし、今後もラグジュアリーブランドの拡充を狙う。

◆アフターコロナは「攻めの姿勢」を貫く
 コロナで化粧品ブランドのEC化は加速したものの臨時休業した店舗分の売上を補うことはできず、手放しには喜べない状況だ。そんな中、ノインの今期業績(2020年4月1日~2021年3月31日)は、売上高が前年比400%に着地予定と語りアフターコロナでは「攻めの姿勢を貫く」という。
 現在ノインには伊藤忠商事をはじめ、KDDIなどが出資しており、水面下でこうした企業のアセットを活用した施策も進行中。既にローンチ済みのファミリーマート専売コスメ「ソポ(sopo)」は累計販売数約30万本を突破するなど堅調に推移しており、直近では春の新作としてマスク着用のシーンを想定したメイクが崩れにくいクッションファンデーションなどを発売した。
「2021年は業界内でコロナショックから回復し、以前の売り場重視の状態に戻ろうとする力が働くだろう。ノインでは今期の実績を礎に各事業を加速させ、EC事業は年内に海外進出する計画を進行している。NOIN.tvを活用したユーザーコミュニケーションの発展や取り扱いブランドの拡充により、2024年までにGMV500億円達成を目指したい」。